タイトル未定2026/04/03 07:13
「精神攻撃?」
「そうだ。それが一番厄介な攻撃と言える。物理攻撃なら避けるなり、防御するなりどうとでもなる。だが精神攻撃は五感を通して仕掛けてくるため対策が難しい」
「ならどうすりゃいんだよ?」
「強い刺激を与えるんだ。なんとかして死なない程度に強い痛みを感じれば解くことが可能だ」
*
気合いで首に向かって来る刃を歯で噛み締めてなんとか止める。
さらに気合いを重ねがけして、ポケットに隠しておいた「引き金」を引いた。
その瞬間辺りに破裂音が鳴り響く。
爆弾と言うには小さいその音が鼓膜を揺した後、一瞬遅れて激痛が襲ってきた。
今まで味わってきた痛みが全て、甘噛みだったんじゃないかと思えるぐらいの強い痛みだ。
だがそれでいい。おかげで体の自由を奪い返すことができた。
「シワック!」
「了解!!」
名を呼ばれただけでミリアの意図を察したシワックは魔法陣を展開しつつ、回復薬が入った瓶を取り出した。
今回ミリアが支持したのは回復とドーピングだ。
頭から回復薬を浴びせるのと同時に、身体強化魔法を付与する。回復薬には、傷を癒す効果だけでなく、痛みを和らげる効果もある。
そこに強化魔法を重ねればアドレナリンの効果が跳ね上がる。
今のミリアは目の前の死に全力で争う獣。
世界がスローに見えて、体の感度が跳ね上がっている事だろう。
体への負担は計り知れないが数秒間の負担なら後からの治療でどうとでもなる。
「貴様!」
咄嗟に振り返った老人が再び剣を振り翳した。
それに対してミリアは銃口を向けて不敵な笑みを浮かべた。
「テメーがどんな方法で高速移動してるかしらねぇがよ!指一本で音速を超える『銃弾』を避けれるもんなら避けて見やがれ!」
発砲音が鳴りら響くのと同時に、姿を消した老人がミリアの目の前に倒れ込んだ状態で再出現した。
結果だけがその場に残り、その過程を肉眼で確認する事はできなかった。
しかし、結果だけを見ればおのずとわかってくる。おそらく老人は撃つよりも先に斬ろうとしたのだろう。
そしてあとすんでのところで、間に合わなかった。それがこの戦いの決着だ。
老人は胸から流れる血を震える手で押さえたが、至近距離で撃たれたのもあり、傷は深く出血が止まっていない様子だ。
「この裏切り者が!」
「うっせ!バーカ!!」
「バカは貴様だ愚か者。貴様が今守ったその男はなぁ…我々魔族の宿敵の_____」
*
無事に勝利したミリアは、生き絶えた老人の前で立ち尽くして放心状態になってしまっていた。
無理もない。強化魔法とは本来不可能な動きを可能とする魔法だ。
故に身体への負担は大きい。あれだけ多くの血を流した上に本来不可能な動きを無理やり行ったのだ。
立っているだけでもマシだろう。
「ミリア!大丈夫?」
リインカを背負いながら話しかけると、らしくなく「お、おう。悪い…」と気の抜けたような返事を返した。
こうして、魔物の大群とそれを引き連れていた謎の老人との戦いは幕を下ろした。
守れたものは多いが、失ったものは大きい。
なんとも言えない結果がこの戦いの結末だった。




