タイトル未定2026/03/02 11:02
_____決闘当日
「俺が言ったこと覚えてるか?」
「『冒険者は舐められたら終わり』だろ?」
「よし」
リインカは親指を立てて首を切る動作をして見せた。
「殺れ」
「言われなくても殺ってやるさ」
ゼインが待つ村の中央の広場に木製ナイフ片手にズカズカ入場して対戦相手を睨みつけた。
まるで輩の様なミリアに対しまるで子供を宥めるようにゼインは優しい笑みで返す。
不良と生徒会長のような構図だ。
それを囲う野次馬達がビール片手にワイワイ騒いでいて、まるで祭ごとのように盛り上がっていた。
そんな中シーナによる決闘のルール説明が始まる。
「一つ。武器を使用する場合はギルドが認めた非殺傷用の物を使用すること。二つ、指定されたエリアから出た者は失格とする。三つ。相手を殺さないこと。四つ、外部からの支援は受けないこと━━」
一通りのルールを説明した後に両者が一定の距離を取りルール通り木製の武器を構える。
「まだ引き返せるよ?」
「黙れ。しばき倒すぞ?」
シーナは右手を大きく上げ、勢いよく振り下ろし「開始」の合図を出した。
一瞬だった。
ゼインは自身の身の丈ほどある木剣を持ちながら、たったの0.2〜3秒でミリアの懐に入り込み木剣を振り上げた。
「グッ?!」
あまりの速さにミリアは木製ナイフで受け止めるのが精一杯で、直撃は防いだもののそのまま空高く吹き飛ばされた。
勝利を確信したゼインは地面に落ちて行くミリアに背を向けて、不敵な笑みを浮かべながら仲間の元へ歩いて帰っていく。
今起きたことを遅れて理解した野次馬達が大きな歓声を上げた。
「そんな…あんなに頑張ってたのに」
絶望してその場に崩れおちたシワックとは真逆に師匠は珍しく笑っていた。
「ミリアが負けたんですよ?なぜ笑ってるんです?」
「負け?んなわけねぇだろ?俺はミリアに人間の潰し方を教えたんだ。今、勝ち誇ってガッツポーズしてる奴が知らない世界をミリアは知っている」
「ゼインが知らない世界?」
「見ていればわかる」
もう終わったと思い込んだゼインの背中をシーナが呼び止めた。
「まだ終わっていませんよ。場外で負けたくなければ元の位置に戻りなさい」
「え?彼女はとっくに虫の息……?!」
そこには無傷のミリアが平然と立っていた。
その顔にはニヤニヤとした笑みを浮かんでいる。
「再開しようぜ?」
「……」
再びゼインが木剣を構える。
対してミリアは先程とは打って変わって素手だ。
何も持たず何も構えていない。
「舐めているのか?」
「そう思うなら試してみろよ」
不気味に感じながらも再びゼインは高速で距離をつめて木剣を振りかざした。___だが、当たらない。
「なにっ?!」
その場の誰もが再び天へと吹き飛ばされたと思ったミリアは、まるですり抜けたかのようにゼインの背後に立っていた。
「どういうことだ?」
目の前の異常な光景に対し混乱しているシワックにリインカは答えた。
「勝負ってのは、開始の合図を待たずして始まってるんだよ」
「まさか!この一週間でゼインの技を丸暗記したんですか?!」
「そんなに驚くほど難しいことじゃない。なにせ連中はミリアの未熟な尾行にもきずけない間抜けだからな。情報収集は簡単だった。あとはそれに対策するだけで簡単にぶちのめせる」
ゼインは並の戦士では目で追えないほどの早い刃を何度も繰り出したが、ミリアにはかすりもしなかった。
最低限の動きで交わして、おまけに一定の距離をたもちつづけているからか、その場から1歩も移動していないようにすら見える。
「ブレイズ」のパーティーメンバーは皆焦りを見せ始めた。
そしてイケメン嫌いの野次馬が「ざまぁ見やがれイケメン野郎が!!」「今晩は美味い酒が飲めそうだぜ!!」と歓声をあげてこの場を盛り上げる。
最初の一撃が嘘だったかのように攻撃が当たらない事にゼインが焦り、大きく木剣を振り上げてしまった。
その一瞬の隙をミリアは見逃さなかった。
剣が振り下ろされるよりも先にゼインの足を蹴りあげ、姿勢が崩れたところで、顔面を鷲掴みにして地面に叩きつけたのである。
「グッアッ?!」
想定外の反撃に反応出来なかったようで、まともな受身を取れていない。もろに良い一撃が入った。
その瞬間、青ざめて悲鳴をあげた「ブレイズ」の女性陣を嘲笑うかのようにさらに「イケメンがボコられる様ほど酒に合うツマミはねぇ!!」「良いぞ!とどめさしちまえ!!」と歓声が上がる。
ふらつきながらも立ち上がろうとするゼインの頭をミリアは助走をつけて思いっきり蹴り飛ばした。
サッカーボールのように転がって行ったゼインは打ち上げられた魚のようにピクピクと痙攣している。
「待て」とミリアを静止させたシーナがゼインの容態を確認した。そしてミリアの右手を掴む。
「勝者は━━」
シーナはミリアの手を掴むと天へ向けて挙げた。
「ミリア!!!」
その瞬間元から騒がしかった野次馬がさらに騒がしくなり、もはや誰が賭けに勝ったのか負けたのか判別が付けられないほどにその場は盛り上がった。




