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72話 『過去』


眼を使ってフィリシアの瞳を視た。

すると、俺がフィリシアの瞳に吸い込まれる様な想像をしたら本当に吸い込まれていく。


吸い込まれながら俺は思う。

前とは違う感覚だ。前回、ブレイド隊のエバンに使用したときは鑑定の様な画面が出てきたのだが。瞳を見ることで情報では無く体感的に過去を見ることができるのかもしれない。


正直、出来るかも知れない程度に思っていたが、本当に出来るとはな。


「まぁ、これも想像力の問題かもな。」


そう言えば、こっちに来た時に「想像」と言うスキルが合ったし、その効果で想像力が上がっているのか?

まぁ、そのスキルは「創造」に変わったから違うか?

それとも効果は残ってるのか?

まぁ、今となっては分からんな...


そうこうしていたら吸い込まれ終わったのか、一瞬にして景色が変わっていた。


「ふむ、夜か。しかも満月?いやあれは月じゃないしな。でもまぁ、似たようなものか。」


こちらの月は地球で言うブルームーンって言う奴で、青みがかっている。いや、むしろ地球の奴が水色程度ならこっちは藍色と青の中間くらいはあるか?


まぁ何にせよ。俺好みなのは間違いない。


さて、そんな事はどうでもいいんだ。

それよりも犯人の顔を拝ませてもらおうか。


────────────────────────────


とりあえず俺はフィリシアを探し、その後ろを着いて行った。


「ふむ、俺はやっぱり見ているだけの幽霊みたいな状態なんだな。」


フィリシアや他のメイド達を何度か見たが、何のリアクションも無かった事から間違いないだろう。


と、考えていた所で、何やら怪しい人物が歩いてきた。


「おや、姫様。こんな時間に何処へ行かれるのですか?

....ふむ、もしかして勇者様にお会いになるのですかな?」


と、怪しい男が問うた。

しかしフィリシアは動じることも無く


「それが何か?貴方に何か不都合でもあるのですか?」


「いえいえ、とんでも御座いません。ただ1つ、忠告をと思いまして。」


「忠告ですか?」


「えぇ、恐れながら。姫様はこのままだと勇者様の伴侶になる事は難しいでしょう。」


「...続けて?」


「はい、勇者様の心は別の所にあるようなのです。今日の昼頃、姫様との歓談中、勇者様の視線は何処か遠くにあるようでした。」


「と言うとやはり勇者様が居られた世界の事ですか?」


「えぇ、勇者様はもしかしたら大切な女性を残して来ているのかも知れません。」


「.........」


「姫様。彼をこの世界に来たのは偶然。いや、運命的なものです。そして、彼が魔王を倒せたとしても...」


「戻ることは出来ない。」


「はい。その通り御座います。ですが彼の力は伝説の空間魔法にまで届かせるかも知れません。そしたら彼はすぐにでも...」


「帰るでしょうね。」


「はい、その通りで御座います。」


「.........」


「そこで、1つ提案が御座います。」


「聞きましょう。」


「勇者様を貴方のモノにすればいいのですよ。

貴方だけのモノに...ね。」


怪しい男はニヤリと笑ってそう答える。

心底楽しそうな顔で。


そこから、フィリシアは少しだけ悩み、そして、それを承諾した。してしまった。


それからの展開は凡そ俺の想像通りだった。


フィリシアに隷属スキルを教える為と言い、男はフィリシアに隷属化を施した。


そして、松尾が寝ている所にフィリシアを使って隷属化をした。


俺は、その男の目的を知るために後を付けた。

すると、しばらく歩き出し。誰も居ない玉座の間で男が笑いだした。


「くふっ、っははははははははは!!!

どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ!こんなに簡単に騙されやがって!!!あっはははははは!!!」


そして男は一頻り笑い終えると。


「おい、魔王。見ているんだろう?」


と、こちらを見て言ってきた。


「は?」


コイツ俺の事が分かって。


「僕は、君に感謝しないといけないね。

君のお陰で僕の悲願を果たせそうだ!」


と言うと、男の顔が変わっていく。いや、顔だけでは無い。体格から色から何もかも変わっていく。


身体中から骨が折れる音、関節の外れる音。

バキッゴキッバキッ!!

と言う何とも痛そうな音が聞こえた。


そして、最後には全身漂白剤で染めたような程色白な12歳の少年のような姿になった。


コイツ...変化スキル持ちか。


「さぁ魔王。僕を止めてみせろ。

──そして、僕の願いを叶えておくれ。」


奴は...酷く狂った顔でそう言った。


俺はその瞬間奴を鑑定しようとして...


────────────────────────────


「は!?」


クソっ!一番大事な所で現実に引き戻された!


もう一度、俺はフィリシアの過去を見ようとしたが...


バチッ!と言う音と共に神眼が弾かれた。


チッ!アイツ、なにかしやがったな。


エル曰くオリジナルスキルはスキルの中でも最上級のスキル。それを弾くとなると、アイツもオリジナルスキル持ちなのはまず間違いないか...


はぁ...何か疲れた。


これ、多分フィリシアに聞いたとしてもアイツの名前、分からないよな。偽名だろうしな。


と言うか、結局アイツの目的が分からなかったな...


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