第8話 マイハーレム No.2 竹之内 マドカ
竹之内 円はそうだな。
いわゆる幼馴染ってやつだな。
うちの親父は地元じゃデカい会社に勤めていて、俺はガキの頃その社宅に住んでいたんだ。
マドカちゃんの親も同じ会社で働いていた。当然社宅に住んでいる。
社宅には結構な人が住んでいてな……何世帯だろうか。
六階建てのマンションで、一フロアに十部屋。それが三棟建ってたわけだからな。
結構なファミリーの数だったと思う。
今もあるのかは知らんが、俺がガキの頃は、登校班ってのがあってな。
大体六、七人かな。小学校に行くときは、年長者が先頭を歩く班長、その次が副班長として隊列を組んで歩くんだ。
小学校の低学年から高学年まで登校班が一緒で、俺が六年生で班長をやっていた時にマドカちゃんは五年生で副班長をやっていたんだ。二人で生意気なガキどもを制しながら約半里の道を毎日歩いていて、仲良くならないわけがない。
「マドカのケツデカおばばー!」
「待て! クソガキ!」
「ウキョキョローン!」
「フギャフギャ!」
「走り回るなー! ちゃんと並びなさーい!」
低学年の悪ガキが囃し立て、お転婆なマドカちゃんが叱る。毎日飽きもせずによくやるよ。
「コラ! ナツオ! マドカちゃんに無礼なことを言うな! 謝りなさい!」
「タカシガカッコツケテルー! カッコツケダー! カッコツケー!」
「クソガキガァ! 逃さんぞ! そこになおれぇい!」
「ヘンナ喋リカタのバカガ追イカケテキタゾ! 逃ゲロー!」
まったく。田舎の悪ガキってのは体力が有り余っているのか、年上を舐めているのか、かまえば構うほど暴れ回ってしまう。
「タカシくん……」
「気にするなマドカちゃん。あいつらはマドカちゃんが好きなんだ」
「ハハハ! 困ったヤツらだね!」
「困ったもんだな!」
「ふふふ」
こんなふうに狭い世界で毎日顔を合わせていたら、そりゃあお互いを意識するようにもなるだろう。
多分、マドカちゃんは俺のことが好きだったんだと思う。
俺もそうだった。
俺はガキの頃から好きな女の子がたくさんいたんだ。
マドカちゃんもそうだし、それこそサトミもその中の一人だ。
お前らだってそうだったんじゃないか?
ガキの頃の同級生との可愛い内緒話で「三番目に好きな子だったら教えるけど、一番はダメ」なんて言いながら、可愛い女子の名前を羅列していったことくらい誰にでもあるはずだ。
少なくとも、俺の地元ではそうだった。
まぁ、中学校に入ってからはたまに廊下ですれ違って挨拶する程度になっちまったんだが、それも普通だろう。
小学校までは一緒にバカやってた奴が、中学校に上がった途端に先輩後輩として敬語を使わなくてはいけなくなる。
田舎の公立中学校なんてそんなもんだ。
俺とマドカちゃんの二人がお互いに「ヨシ」と言ったとて、先輩と馴れ馴れしくしている後輩なんてのは目をつけられちまう。
最悪の場合、怖い先輩に拉致されてお陀仏は言い過ぎだが……まぁ、ろくなことにはならない。
それこそ、タカシと無駄に仲の良い後輩の女子なんてのがいたら、俺の学年の女子に便所に連れ込まれて何されるかわかったもんじゃない。
別に意識していたわけではないが、お互いの安全のために、中学では幼馴染の距離感は封印していた。
だがまぁ、中学を卒業しちまえば話は別だ。
ヤンキーや勉強ができないやつは大体、大津北高校という一帯のバカが集まる高校に進学するし、勉強も素行も普通のやつは華園高校だ。ここは地元から近いのが売りだな。
俺が通った常陸第一高校は、その辺の公立では一番賢いところで、この一帯では唯一私服が許されている学校だった。まぁ、俺は私服があまり好きじゃなかったから、一応存在している学ランで学校に通っていたんだが。
学ランで学校に行ってるヤツってのは、稀有な存在でな。俺と野球部と……あとは応援団の奴らくらいだった。イガグリ坊主の集団と、バンカラのゴリラたちに紛れて俺がいるわけだから、そりゃあ目立つ。
悔しいことに、学ランが似合っちまったんだ。俺を見て意外と学ランも悪くないってことにみんな気がついたのか、俺が二年になる頃には、私服が許されているにもかかわらず、学ランを着ている奴が増え始めて、卒業する頃には半分くらいの男子が学ランだった。
ファッションリーダーってやつだな。
すまん。
マドカちゃんの話の最中だったな。
話を戻そう。




