第11話 早く脱げよっ!
俺とマサハルとスグルは体育館裏まで全力疾走だ。
周りの女子達は「先生呼びに行った方がいいかな?」なんて呑気なことを言っていたが、「大人しく飯でも食っとけ!」と言って座らせておいた。
先生なんかが絡むと面倒なことになる。
相手はガタイが良いとはいえ、所詮は女子だ。
流石に俺が負けることはないだろうし、そもそも荒事になっていない可能性の方が高い。
偏差値60を超える高校で、後輩女子に物理的な加害をする女子がいるわけない。
そう思いながら体育館裏へ向かったんだが。
……。
いない。
体育館裏には誰もいなかった。
「おいマサハル」
「はい」
「誰もいないように見えるんだが?」
「はい」
「とりあえずケツを出せ」
「はい」
俺はマサハルのケツを蹴り上げた。
「ぐはっ!」
マサハルの老け顔が歪む。
「まぁ、とにかくマサハルの勘違いで良かったな」
「あぁ。さすがに偏差値60を超える我が校に、後輩を拉致して危害を加えるような愚か者はいないか」
「教室に戻ろうぜ」
「そうだな。行くぞ! マサハル! お前まだ飯を食ってないだろ」
「いてて。ああ」
勘違いのマサハルは成敗したし、大人しく教室に戻って飯の続きだなんて思っていたんだけどな。
「早く脱げよっ!」
!?
体育館裏の奥の方から不穏な声が聞こえた。
体育館裏……ではなく、そこから出入りできる体育館の準備室からだ。
準備室は、体育館の中から入る扉と、外から入る扉がある。
普段、中の扉は鍵が閉まっていて、体育の授業のたびに係が鍵を取りに行くことになっているので盲点だったが、裏側の扉は意外とチェックが緩い。
最初から計画していたなら、裏側の鍵を開けておくことも可能だったんだろう。
くそ。
賢さをここで使ったか!
……。
「やばい! マジのやつだ!」
俺たちは勢いよく扉を開けた。
三人の女子が誰かを囲っている後ろ姿が見える。
左にアカネ、右にサキ。いずれも俺の狂信者だ。
そして中央にはエミリの巨大な背中があり、その向こうには。
……。
上半身が下着姿のマドカちゃんがいた。
「何やってんだ!」
普段クールな俺もこの時ばかりは声を荒げちまった。
荒事の現場を押さえられ、焦りを隠せない三人。
「いや、これは……」
「どけ」
「ちが、ちがうのぉぉぉぉ!」
いつもヘラヘラしている俺が本気で怒っている様子を見て、エミリ達は泣き出してしまった。
泣きたいのは俺のほうだ。
マドカちゃんも泣いている。
「大丈夫?」
俺は紳士的にマドカちゃんに学ランをかけたんだ。
俺は怒っていた。
だが、俺の下半身はもっと怒っていたんだ……。
それもそのはずだ。
普段の俺は『射爆』を避けるため、昼休みが終わる前に一度、空撃ちしている。
起きて一回。
家を出る前に一回。
昼休みに一回。
夜に一回。
これが俺のルーティーンだ。
だが、とんだハプニングに巻き込まれた上に、目の前には半裸の美少女。
しかも爆乳ときたもんだ。
そりゃあ俺のタカシも優等生じゃいられない。
「ごめん。ごめんね」
「なんでマドカちゃんが謝るんだよ!」
なぜか俺に謝りながら泣いているマドカちゃん。
「ふえええ、タカシくん」
マドカちゃんが抱きついてきた。
「落ち着いて。マドカちゃん」
俺も学ランの上からマドカちゃんを抱きしめた。
誰もが颯爽と現れたヒーローに心を奪われていた。
マドカちゃんはもちろん。
マサハル、スグル、悪巧みをした三人組でさえも、俺をかっこいいと思ってしまったであろう。
涙ぐましい光景だ。
マドカちゃん次第ではことをこれ以上荒立てずに終わりにすることもできたんだが。
そうは問屋が下さなかったみたいだ。




