第12話 ゴギ……ゴギガ……ガガギゴ……
エミリ達三人組は意気消沈。
あとはマドカちゃんに服を着てもらって、過激派タカシファンの三人の処遇に関しては、マドカちゃんに委ねよう。
俺たちがことを荒立てることもない。
それで一件落着……。
そう思っていたんだがな。
……。
マドカちゃんが俺から離れようとしない。
抱きしめる腕の力を緩めたが、マドカちゃんの顎は俺の右肩に乗っかったまま動かない。
俺はいつまでこうしていれば良いのだろうか。
マドカちゃんは早く服を着た方がいい。
体育倉庫は室内とはいえ、二月だ。シンプルに寒いし、このままでは風邪をひいてしまう。
「マドカちゃん。そろそろ服を着た方がいい。風邪をひいちゃうよ」
「もうちょっと……」
もう一度マドカちゃんが強く抱きついてきた。
マドカちゃんに押し倒される形で、俺たちはマットの上に倒れ込んだ。
これがよくなかったんだ。
勢い余ってマドカちゃんの太ももに刺激された俺の『タカシ』は、いとも簡単に白い涙を流してしまった。
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
反響。
静寂に包まれていた体育倉庫に俺の断末魔が響き渡った。
「ア……アア……ゴギ……ゴギガ……ガガギゴ……ッ!」
「タカシくん!?」
二年ぶりの本物の『射爆』に命の危険を覚えるほどの頭痛。
半裸のマドカちゃんに気を使う余裕は俺にはなかった。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!」
ガンギマリの目を開き、半狂乱で涎を垂らす俺を見て、泣き出す三人とマドカちゃん。
「おいスグル! これってまさか!」
「ああ……。タカシの言ってた『射爆』だ!」
「あれはマジだったのか!?」
「これはマジのやつだ!」
「とにかく救急車だ! 救急車を呼ぶぞ!」
「わかった! マドカちゃんは任せろ!」
「おう!」
「ガ……ガ……ガガギ……ゴ……ッ!」
マサハルとスグルは驚きながらも、俺よりは冷静だった。
多分、『ハーレムの呪い』と『射爆』については雑談ベースで話していたからだと思う。
『射爆とかあるわけねーじゃん!』
『盛ってるだろ?』
なんて笑いながら言ってたから、その時の二人は俺が大袈裟な話をしていると思っていたんだと思う。
それでも、スグルはとにかくマドカちゃんに服を着させてくれて、マサハルは救急車を呼んでくれた。
涙と涎でぐちゃぐちゃになった俺の顔は見れたものではなかったと思う。
後から聞いた話だと、俺はおしっこも漏らしていたらしい。
俺のおしっこで汚した体育倉庫は、エミリ達が掃除させられたとのこと。
いい気味だ。
とにかく、俺は病院に運び込まれた。
そこにいたメンバーは、俺のそんな情けない姿を言いふらしたりはしなかった。
次の日の学校は何も変わらない。
マサハルは相変わらず老け顔だし、スグルは俺のおかずを強奪して、弁当交換会が始まる。
一週間の停学から帰ってきたエミリ達は、狂信者から少しだけ過激なタカシファンにランクダウンしたくらいで、あとは変わらない。
俺が発狂して救急車で運ばれたが故に、あの事件は学校側に知られてしまった。
あの日、マドカちゃんとエミリ達の間で何が起こっていたのか、詳しいことを俺は知らない。
余計な情報が入るとまた興奮してしまうかもしれないから、特に聞かなかった。
先ほども伝えたが、俺の日常は事件の前とさほど変わらなかった。
マドカちゃんとの関係を除けばな。
……。




