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『転生したらコウモリでした。キャピしか言えないけど異世界で生きます。』  作者: AsaHiruYugataYoru
第3章 キャピ! 異世界が思ったより広すぎます!

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第89話 「家を持っていきたいと言ったら、スゥが地面ごと消しました!?」

第89話 家を持っていきたいと言ったら、スゥが地面ごと消しました!?


 次の目的地は――ドワーフの国。

 ……なんだけど。


唯:「その前に、一回ノストに帰ろっか!」

エマ:「賛成。旅の準備もしたいしね」


クロエ:「……補給も必要」

唯:「それに、スゥに家見せたい!」


スゥ:「イエ?」

唯:「そう! 私たちの家!」

スゥ:「スゥ!」


 決まり。ドワーフの国へ向かう前に、一度ノストへ帰る。


唯:「じゃ、飛んで帰ろっか!」


 《人化》を解除する。

 身体が大きくなり、翼が広がる。


唯:「キャピ!」

スゥ:「…………」


 私を見上げたスゥが固まった。


スゥ:「ユイ?」

唯:「キャピ!」

スゥ:「オオキイ!」


 そういえば、スゥにこの姿を見せるの初めてだった。

 エマとクロエが背中に乗る。スゥはエマに抱えられて――。


唯:「キャピ!」

 飛ぶ!


スゥ:「スゥゥゥゥゥ!?」

 一気に森が遠ざかる。

 最初こそエマにくっついていたスゥだったけど。

 しばらくすると、恐る恐る下を覗き始めた。


スゥ:「……オオ」


 森。川。山。全部が足元にある。


スゥ:「トブ!」

唯:「キャピ!」


スゥ:「トブ! トブ!」

クロエ:「……楽しそう」


エマ:「どっちが?」

クロエ:「……両方」


 その日のうちに、ノストへ到着した。

 街から離れた場所へ降りて、人化。


 門をくぐって。見慣れた道を歩いて。


唯:「帰ってきたー!」

スゥ:「キタ!」


エマ:「早速真似してる」

クロエ:「……唯二号」

唯:「変なこと教えてないよ!?」


 そして。久しぶりの――我が家。


唯:「ただいまー!」

 ガチャッ!扉を開ける。

 少し空気はこもっているけど、何も変わっていない。


 テーブル。ソファ。キッチン。


唯:「家だぁ……」

エマ:「荷物置いてから寝転んでね」


 先回りされた。


スゥ:「イエ?」

 スゥが入り口で止まっている。


唯:「うん」

 抱き上げる。


唯:「ここが私たちの家」

スゥ:「ユイ?」


唯:「私とエマとクロエ。それから――」

 スゥを軽く持ち上げる。


唯:「今日からスゥも!」

スゥ:「……スゥノ?」


唯:「うん。スゥの家」

スゥ:「…………」


 ぷるっ。


スゥ:「スゥノ、イエ!」

唯:「そう!」

スゥ:「イエ!」


 ぽよん!腕から飛び出した。

 ソファ。テーブルの下。キッチン。

 部屋中を跳ね回る。


スゥ:「イエ! イエ!」

エマ:「気に入ったみたい」

クロエ:「……よかった」


 うん。これでスゥにも、帰る場所ができた。


 ――数時間後。


唯:「着替えよし!」

エマ:「保存食も大丈夫」

クロエ:「……薬、少ない」

唯:「じゃあ明日買い足そう」


 テーブルの上には、ドワーフ国へ持っていく荷物。

 着替え。保存食。薬。野営道具。その他いろいろ。


唯:「…………多くない?」

エマ:「長旅だから仕方ないよ」


 せっかく家に帰ってきたのに。

 また全部詰め込んで旅に出る。


唯:「家ごと持っていけたら楽なのに」

エマ:「無茶言わないの」


唯:「だよねー」

 …………。


 ん?私はスゥを見る。


スゥ:「スゥ?」


 スゥ。亜空間。広い。

 入口を好きな場所に出せる。


 私は家を見る。もう一度スゥを見る。


唯:「…………」

クロエ:「……唯」


唯:「なに?」

クロエ:「……悪い顔してる」


唯:「してないよ!」

エマ:「何思いついたの?」


唯:「いや、その……」

 私は床を指差した。


唯:「家ごと亜空間に入れたら、荷造りいらなくない?」

エマ:「…………」

クロエ:「…………」


 クロエが家を見る。スゥを見る。床を見る。


クロエ:「……あり」

エマ:「なし!」


唯:「まだ何も試してないよ!?」

エマ:「試そうとしてるから言ってるの!」

クロエ:「……入口を家より大きくする」


唯:「それ!」

エマ:「家をどうやって動かすの!?」


唯:「…………」

クロエ:「…………」


 そこだった。


唯:「持ち上げる?」

エマ:「誰が!?」


クロエ:「……分解」

エマ:「絶対ダメ!」


唯:「じゃあ地面ごと――」

エマ:「もっとダメ!」


スゥ:「…………」


 三人で家を囲んで。ああでもない。

 こうでもない。入口を広げる。

 家を分解する。土台から動かす。

 魔法で浮かせる。段々、声も大きくなっていく。


スゥ:「…………ケンカ?」

 三人の声が止まった。


唯:「え?」

スゥ:「ケンカ……?」


エマ:「違うよ、スゥ。これは――」

唯:「作戦会議!」


クロエ:「……議論」

エマ:「二人とも余計分かりにくい!」


スゥ:「…………」


 ぷる。スゥが家を見る。

 私たちを見る。

 もう一度、家を見る。


スゥ:「イエ……」

唯:「スゥ?」


 淡い緑色の光が。

 スゥの身体から漏れ始めた。


クロエ:「……魔力」

エマ:「スゥ?」


スゥ:「ケンカ……ダメ」

唯:「あ、いや、本当に喧嘩じゃ――」


スゥ:「スゥ!」


 ブワッ!!


唯:「え?」

 家の外まで光が走った。


 そして――。ズズズズズズズズ……!


唯:「…………」

エマ:「…………」

クロエ:「…………」


 窓の外。私たちの家を丸ごと囲むほど巨大な光の輪が、地面に広がっていく。


唯:「ちょっと待って」

クロエ:「……大きい」

エマ:「スゥ!? 何してるの!?」


スゥ:「スゥゥゥゥゥ!」


 次の瞬間。――ドゴンッ!!


唯:「キャピィィィィィ!?」


 家が。庭が。そして、その下の地面まで。

 まとめて――沈んだ。


第89話 家を持っていきたいと言ったら、スゥが地面ごと消しました!? 完

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