第56話 「七人なら、Aランクだって…...」
今回はクロエのイメージ画像付きです。
第56話 七人なら、Aランクだって…...
ド・モビー・ベヒモスが地面を蹴った。
巨体からは想像できない速度で、一直線にガルドへ突っ込む。
ガルド:「来い!」
ガルドが大盾を地面へ突き立てた。
直後――。
ドゴォン!!
ガルド:「ぐっ……!」
ガルドの足が地面を削る。それでも止めた!
リン:「右前脚、動きが遅い!」
ミレイ:「了解!」
リンの声に、ミレイが弓を引く。
精霊の光をまとった矢が右前脚へ突き刺さった。
リューク:「続けるぞ!」
火球が横腹で炸裂する。
その爆炎を突っ切って――。
唯:「私も!」
私は一気に懐へ飛び込んだ。
拳を叩き込む。
硬い!でも、効いてる!
クロエ:「……そこ」
いつの間にか背後へ回っていたクロエの短剣が、後ろ脚を斬り裂いた。
ド・モビー・ベヒモス:「グオオッ!」
唯:「いける!」
ガルドが受ける。リンが動きを読む。
ミレイとリュークが遠距離から削る。
エマの《魔力布結界》が動きを阻害し、その隙を私とクロエが狙う。
七人で戦えば――Aランクとも戦える!
ガルド:「押せるぞ!」
唯:「このまま――!」
リュークの周囲に大量の魔力が集まった。
リューク:「吹き飛べ!」
巨大な炎がド・モビー・ベヒモスを飲み込む。
直撃!そう思った。
でも。炎が――消えていく。
リューク:「……は?」
燃え盛る炎が、ド・モビー・ベヒモスの口へ吸い込まれていく。
そして、全部消えた。
唯:「魔法を……食べた?」
《鑑定》で見た能力が頭をよぎる。
《魔力喰らい》。
ド・モビー・ベヒモス:「グルルル……!」
巨体から魔力が膨れ上がった。
エマ:「まずい!」
エマが《魔力布結界》を広げる。
だけど――。
エマ:「えっ……!?」
結界を構成していた魔力まで吸われていく。
次の瞬間。
ド・モビー・ベヒモスが前脚を振り下ろした。
ズドォォォン!!
唯:「キャピ!?」
地面が爆発した。
違う。《震撃》だ!
衝撃が地面を走り、全員の足元を吹き飛ばす。
身体が宙に浮く。
着地したときには、さっきまでの陣形が完全に崩れていた。
ガルド:「散らばるな!」
ド・モビー・ベヒモスが動く。
狙ったのは――。
唯:「ミレイ!」
後衛にいたミレイ。
さっきの《震撃》で体勢を崩し、まだ立てていない。
ミレイ:「っ……!」
巨体が迫る。
その間に飛び込んだのは――ガルドだった。
ガルド:「ミレイ!!」
大盾を構える。
激突。
ドゴォォン!!
ガルド:「ぐおっ!」
ミレイ:「きゃっ!」
二人まとめて吹き飛ばされた。
その先には岩壁。
ガルドが空中で身体を捻る。
ミレイを抱き寄せ――自分の背中を岩壁へ向けた。
ドガッ!
ガルド:「ぐっ……!」
ミレイ:「ガルド!?」
ガルド:「……大丈夫か?」
ミレイ:「私は……大丈夫。でも、ガルドが……」
ガルド:「ならいい」
ガルドはミレイを下ろすと、痛みに顔をしかめながら大盾を構え直した。
ミレイ:「…………ありがと」
小さな声。でも、もうガルドは敵を見ていた。
◇
まずい。さっきまでとは完全に違う。
魔法は《魔力喰らい》で吸収される。
近づけば《震撃》。
しかも《硬質化》まである。
力押しじゃ勝てない。
(考えろ)ガリアとの修行を思い出す。
能力を持っているだけじゃダメ。
相手を見ろ。能力を繋げろ。
私は《弱点感知》を使いながら、ド・モビー・ベヒモスを見る。
ガルドへ突進。クロエが横から斬る。
硬質化した皮膚に弾かれる。
ミレイの矢も浅い。
リュークは魔法を撃てない。
でも――。
唯:「……ん?」
さっき、リュークの魔法を食べたとき。
一瞬だけ。喉の下が光った。
唯:「リューク! 小さい魔法、一発だけ撃って!」
リューク:「食われるぞ!」
唯:「いいから!」
リューク:「……分かった!」
小さな火球が飛ぶ。
ド・モビー・ベヒモスが口を開く。
炎が吸い込まれる。
その瞬間。魔力が喉から腹へ流れ――。
首の付け根。
岩みたいだった皮膚が、一瞬だけ柔らかくなった。
《弱点感知》が反応する。
唯:「そこだ!」見つけた。
唯:「魔力を食べてる間だけ、首の下の《硬質化》が弱くなる!」
リン:「本当!?」
クロエ:「……なら、隙を作る」
クロエが短剣を握り直した。
ガルド:「よし。全員聞け!」
そこからは早かった。
リンがド・モビー・ベヒモスの注意を横へ逸らす。
ミレイの矢が目元へ飛ぶ。
ガルドが正面から突っ込んだ。
ガルド:「こっちだ、デカブツ!」
大盾と前脚がぶつかる。ガルドが耐えた。
唯:「リューク!」
リューク:「食いたきゃ食え!」
今度は大きい。炎の塊が飛ぶ。
ド・モビー・ベヒモスが口を開いた。
食べる。魔力が喉を通る。
唯:「今!」
エマ:「《魔力布結界》!」
月色の布が首へ巻きついた。
一瞬で魔力を食われ始める。
でも、一瞬あればいい。
クロエ:「……見えた」
姿が消える。
《隠密》。
次にクロエが現れたのは、首の真横。
短剣が柔らかくなった一点へ突き刺さった。
ド・モビー・ベヒモス:「グオオオオッ!!」
クロエ:「唯!」
唯:「うん!」
走る。《突進》。
さらに《魔力制御》。
全身の力を一点へ。
そして《弱点感知》が示す場所は――クロエが開いた傷口。
(能力を、一つずつ使わない)
繋げる。今の私ならできる!
唯:「これで――終わりっ!!」
拳を叩き込んだ。
ドゴォン!!
巨体が大きく揺れる。
ド・モビー・ベヒモスが数歩よろめき――。
ズズン……!地面へ倒れた。
静寂。
唯:「…………」
クロエ:「…………」
ガルド:「……倒した、か?」
動かない。
唯:「勝った……?」
エマ:「唯!」
唯:「勝ったぁぁぁぁ!!」
七人の歓声が洞窟に響いた。
◇
唯:「いただきます!」
クロエ:「……いただきます」
エマ:「もう慣れてきた自分が怖い……」
私とクロエは並んで、ド・モビー・ベヒモスから血をもらう。
ちゅー。ちゅー。そして。
《個体情報を登録しました》
《個体Lv:12 → 15》
《能力《震撃》を獲得しました》
《月因子:20% → 22%》
《龍因子:40%》
《夢魔因子:6%》
唯:「きた!」
すぐクロエも《鑑定》。
《クロエ》
種族:《ヴァンパイア(月系統)》
個体Lv:15 → 18
能力:《隠密》《硬質化》《魔力喰らい》
唯:「クロエも三つ上がってる! しかも《魔力喰らい》!」
クロエ:「……どやぁ」
唯:「今回は言った!」
クロエ:「……言った」
認めた!さらにエマを見る。
《エマ》
種族:《人族》
個体Lv:29 → 31
職業:《月龍巫女》
唯:「エマも二つ上がってる!」
エマ:「本当?」
唯:「三人ともレベルアップ!」
しかも、これだけじゃない。
Aランク討伐。
素材。魔石。
そして、成長途中とはいえ新しい主候補を倒したとなれば、
ギルドから臨時報酬が出る可能性も高い。
唯:「……ムフフ」
エマ:「唯、その顔やめよう?」
でも!家!家が近づいてる!
ガルド:「おーい! 腹の中も確認するぞ!」
唯:「あっ!」
そうだった!みんなで解体を始める。
そして腹部を開いた、その奥。
ぬめっとした体液の中に――。
淡い青色の光。
唯:「あったぁぁぁ!!」
《静青の■■■■■》の魔石。
取り出した瞬間。
腰の《深紅の■■■■■》の魔石が――。
ぷるっ。ぷるっ。
ぷるぷるぷるっ!
クロエ:「……すごい震えてる」
エマ:「やっぱり、この二つ……何か関係があるのかな?」
分からない。
《鑑定》しても、相変わらず詳細は見えない。
だけど。Aランクの魔石。
大量の素材。
臨時報酬。そして、この正体不明の青い魔石。
私は青い球体を両手で持ち上げた。
唯:「……これ、家買えるんじゃない?」
ガルド:「気が早ぇよ」
唯:「キャピ!」
このときの私はまだ知らなかった。
この正体不明の魔石が――。
**家どころではない、とんでもない金額になることを。**
第56話 七人なら、Aランクだって…... 完




