↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生したらコウモリでした。キャピしか言えないけど異世界で生きます。』  作者: AsaHiruYugataYoru
第1章 キャピしか言えないけど、洞窟で生き残ります。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/99

第20話 「人間が来た!」

# 第20話 人間が来た!


 ――コツ。

唯:「…………キャピ?」


 天井にぶら下がったまま、耳を澄ませる。

 《振動感知》に複数の反応。


 一定の間隔で、こちらへ近づいてくる。

(魔物……?)


 いや、違う。

 二本足で歩いている。


 しかも五つ。

 そして――。


ガルド:「――この先も調べる。リン、何かあったらすぐ知らせろ」

唯:「…………キャピ?」


 今、聞こえた。

 意味のある言葉。


リン:「了解。この辺りから魔物の痕跡も増えてる。気をつけた方がいいね」

 聞き間違いじゃない。


 人の言葉だ。


唯:「キャピ!?」

(人間!?)


     ◇


 胸が一気に高鳴った。

 転生してから、ずっと洞窟。


 聞こえるのは魔物の鳴き声、水の音、岩が崩れる音。

 そして自分の――。


唯:「キャピ」

 これだけ。

(人間……!)


 会いたい。

 話したい。


 でも、私は自分の身体を見る。

 大きな翼。黒い身体。牙。


(……いきなり出ていったら、まずいよね)


 私は人間のつもりでも、見た目は完全に魔物だ。

 まずは様子を見よう。


《隠密》


 気配を消して、声の方へ向かった。


     ◇


 岩陰から、そっと覗く。

唯:「…………!」

(いた!)


 本当に五人いる。

 大盾を背負った男。

 軽装の女性。

 弓を持った女性。

 杖を持った青年。


 そして最後尾には、大きな荷物を背負った僧侶らしい少女。


(人だ……! 本物の人間だ!)

 それだけで泣きそうになる。


 そのとき。

リン:「――止まって」


 全員の足が止まった。


ガルド:「どうした?」

リン:「前。三体来る」


 ガルドが大盾を構える。

ガルド:「エマは後ろへ。リューク、魔力は温存しろ」


エマ:「はい!」

 ――ガサッ!


 三つの影が飛び出した。

(《鑑定》!)


《洞窟牙狼》

魔物ランク:E


 一体目がガルドへ飛びかかる。

 ――ガァン!


 大盾が牙を受け止めた。

ガルド:「リン!」

リン:「任せて!」


 リンが横へ滑り込み、短剣で後脚を斬る。

 体勢が崩れた瞬間――。


ミレイ:「そこ!」

 矢が首筋へ突き刺さった。

 二体目が横から迫る。


リューク:「《火球》!」

 炎が洞窟を照らし、怯んだ狼をガルドの盾が弾き飛ばす。


唯:「キャピ……!」

(すっご……!)


 私の戦い方とは全然違う。

 私は一人で隠れて、狙って、噛みついて、危なくなったら逃げる。


 でも、この人たちは。

(一人が止めて、別の人が攻撃して、後ろから弓と魔法!)


 全部がつながっている。


唯:「キャピ!」

(パーティ戦だ!!)


 ゲームでもアニメでもない。

 本物の異世界冒険者が、目の前で戦っている。


(かっこいいぃぃぃ!!)


 私は最後の一体が倒れるまで、夢中で見ていた。


     ◇


ミレイ:「この数日だけでも、やっぱり変ね」

リン:「本来なら、もっと奥にいる魔物の痕跡もあった」


ガルド:「何かが魔物を浅い方へ押し出してるのかもしれん」

(この洞窟を調べに来たんだ)


 異変なら、私にも心当たりがある。

 グランガとアビスラが死んでから、魔物の動きは明らかに変わった。


(…………まさかね)

 それより。


(話したい)


 街のこと。

 この世界のこと。


 聞きたいことは山ほどある。

 それに――。


(私も冒険者になれるかな)

 さっきの戦いが頭から離れない。


 誰かと一緒に旅をして、知らない場所へ行ってみたい。


唯:「…………キャピ」

(よし!)


 せっかく会えたんだ。

 私は《隠密》を解除した。


     ◇


 バサッ。

ガルド:「――止まれ!」


唯:「キャピ!?」

(はやっ!)


 全員がこちらを向く。

 私は慌てて近くの岩へ降りた。


ミレイ:「……コウモリドラ?」

ガルド:「いや、待て」


 ガルドが私をじっと見る。


ガルド:「……でかい。こんな大きなコウモリドラ、見たことねえぞ」

リン:「普通の個体じゃないね」

ミレイ:「特殊個体……?」


ガルド:「……やはり、このダンジョンで何か起きてるのか」


唯:「…………キャピ」

(私、異変扱いされてる!?)


ガルド:「全員、警戒。ただし手は出すな」


(話し合える!)


唯:「キャピ!」

(こんにちは!)


 翼をぱたぱた。


唯:「キャピキャピ!」

(私、敵じゃないよ!)


ガルド:「…………」


唯:「キャピ!」


ガルド:「……何をしてる?」


(通じてない!)

 知ってたけど!


唯:「キャピ! キャピキャピ!」

(中身は人間だから!)


 一歩近づく。


ガルド:「来るぞ! 構えろ!」


唯:「キャピィ!?」

(違う違う違う!)


 盾、短剣、弓、杖。


 一斉にこっちを向く。


(無理!)


唯:「キャピィィィ!!」

 私は反転して、全力で逃げた。


     ◇


エマ:「……逃げた?」

リン:「追う?」

ガルド:「いや。追わなくていい」


 ガルドが大盾を下ろす。


ガルド:「目的は異変の調査だ。あんな特殊個体、何を持ってるか分からん。下手に刺激するな」

ミレイ:「でも、あんなコウモリドラ聞いたことないわ」

ガルド:「記録しておけ。異変と関係している可能性もある」


エマ:「…………」

 エマは、唯が消えた暗闇を見つめていた。


エマ:「でも……さっきの魔物、ほかの魔物とは何か違ってた気がします」

ガルド:「ん?」

エマ:「……敵意がなかったのかも」


ガルド:「…………」


 ガルドも暗闇の奥を見る。

ガルド:「……だとしても、油断はするな」


エマ:「はい」


ガルド:「進むぞ」


     ◇


唯:「…………キャピ」

(怖かったぁ……)


 十分に距離を取って、岩陰に隠れる。

 やっと人間に会えた。


 言葉も分かった。

 なのに、私の言葉は何一つ伝わらなかった。


(そりゃそうか……)


 私は人間のつもりでも。

 向こうから見れば、ただの魔物だ。


唯:「…………キャピィ」

(せっかく会えたのになぁ……)


 遠くから、かすかに人の声が聞こえる。

 …………。


唯:「キャピ」

(ちょっとだけ)


 帰るとは言ってない。

 近づかなければいい。


 見るだけ。

 話を聞くだけ。


《隠密》


(だって、人間だよ!?)

 気になるに決まってる!


 私は再び、こっそり五人の後を追い始めた。

 そのとき――。


 ――ザッ。


唯:「…………キャピ?」

 《振動感知》に新しい反応。


 前方。

 複数。


 しかも、速い。


(また……何か来る?)

 私は暗闇の奥へ耳を向けた。


**――第20話 人間が来た! 完**

最後までお読みいただきありがとうございます!感想もお気軽にいただけると嬉しいです。

面白かったら、評価★・ブックマーク・フォローで応援していただけると!

次の展開を書く原動力・励みになります。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。