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八十三話 吉野の物語

昔昔、閻魔大王がいた。

閻魔大王はこの世でたった一人で生まれ変わりながら時を歩んでいる。

そんな時、ふと閻魔大王は「人間の世界」を訪ねることに決める。

ただの興味が湧いただけで深い意味は無い。

閻魔大王は人間の世界では「吉野」と名乗ることにした。

初めて村に入った時にある少女と出会ったのだ。

「あら?初めて見るお顔ね!あなたお名前は?」

少女は年老いた閻魔大王に対しても恐れることもなく、明るい笑顔を見せる。

「私は……吉野と申します。今夜泊まる宿を探しているのですが…」

「なら私が案内するわ!私は篠原楓っていうの!よろしくね。」

その日をきっかけに閻魔大王と楓は仲良くなっていったが、妖怪は人間とは違う。楓には重い病があり、どの医者にも治せなかった。

だが、運がいいのか妖怪の世界では治す薬は存在していたがその薬を人間が飲めば不老不死になってしまう代物だった。

閻魔大王はいつしか楓を愛するようになった。楓を助けたいとの気持ちが強くなり遂に禁忌を犯してしまった。

「ゴホッゴホッ!こんにちは吉野さん。ごめんなさい、今日は調子が良くないの。」

「楓さん。私ね、実は医者なんですよ。あなたの病を治してあげます。」

「ありがとう。でも色んなお医者様は治せなかったの、気持ちだけ頂くわ。」

楓は弱りながらも笑顔で閻魔大王に返したが、閻魔大王はその姿を見ていられなかった。

「大丈夫です、治せます。この薬を飲んで安静にしていれば時期に良くなりますよ。」

閻魔大王が必死に言うもので楓は彼を信じたいと思ったのか薬を手にした。

「わかった。これを飲めばいいのね?」

「はい、苦いかもしれませんがご辛抱を。」

楓は意を決し薬を飲み干し、数日安静にした。そしたらどうか、5日後には楓は外を走り回れるように回復した。

楓はその恩があるからか閻魔大王により懐くようになった。

しかしある日、ふと不思議に感じた楓は閻魔大王をある場所に誘った。

「ねぇ、吉野さん。今日時間ある?」

「今日ですか?もちろんありますよ?」

「じゃあ、出掛けよう!」

「構いませんが、私でよろしいのですか?こんなおじいさんで。」

「吉野さんだからいいの!」

「ははっ、嬉しいですねぇ。で、どちらに行かれますか?」

「内緒だよ!さぁ、行こ?」

「……分かりました。この吉野、お供致しましょう。」

惚れた弱みなのか危険と分かっていても彼女となら…と吉野は彼女の手を取った。

着いた先は森、しかし中は不気味で閻魔大王の背筋が凍った。何故ならここはあの森だからだ。

「ここは危ないですよ?あそこの花園に行きましょう。綺麗な花がたくさん咲いていますよ?」

「…やっぱりダメかぁ。ねぇ、吉野さんってもしかして妖怪さん?」

「…どうしてそう思うのですか?」

「冷や汗が出てる。この森苦手でしょ。だってここは閻魔大王の森だから。」

その言葉に閻魔大王は怯んだ。いや恐れた。彼女は一体何をしたいのだろうか。吉野が呆然としていると少女が口を開いた。

「吉野さん帰ろ?もう用事は済んだから。」

「用事?済んだとは?」

「…私ね、この村を出ることになったの。」

「…。」

「でも…もし叶うなら吉野さんとずっと一緒にいたいな。」

少女の思わぬ告白に吉野は驚きを隠せなかった。

「それは…本当ですか?」

「うん、本当。」

「…嬉しいですねぇ。楓さんに選んでもらえるなんて私は幸せ者です。では、逃げませんか?一緒に。」

吉野はしゃがみ、少女の手を優しく包む。

「逃げてくれるの?」

「えぇ、もちろん。あなたが望むように。」

吉野はフゥと息を吹きかけると眠るように少女は倒れ、優しく受け止めた。

「ありがとうございます。閻魔大王としてではなく吉野としての私を選んでくれて。ずうっと一緒ですよ?楓さん。」

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