八十一話 お礼と和解の物語
カン、カンとなにか音が聞こえてくる。皆が頭上を見上げると、大きい牛と馬が二本足の妖怪が雲らしきものを乗って降りてきた。
「あれは……?」
「あの妖怪は!?」
「知ってるの?」
「牛頭丸様と馬頭丸様だ。閻魔大王様の側近だ。」
カマイタチが驚いている隣で怪しい妖怪は相変わらずゆづるを見ず答える。牛頭丸と呼ばれた妖怪は地面に降り再びカン、カンと打ち鳴らすと声を上げた。
「控えおろう!閻魔大王様の御成だ!頭が高いぞ!!」
その言葉にカマイタチ、怪しい妖怪、一つ目たちはすぐに片膝をついた。ゆづるとアキヒロも訳も分からず片膝をつくと、牛頭丸と馬頭丸の後ろから閻魔大王と思われる人物が現れた。
「ありがとうございます。牛頭丸さん、馬頭丸さん。あぁ皆さん、そんなに畏まらなくて結構ですよ。」
出てきたのは何やら閻魔大王とのイメージがかけ離れた優しそうなおじいさんだった。
「あ、あれが…閻魔大王様?」
「なんか思ってたのと違う…」
「そこ!!聞こえているぞ!」
馬頭丸は一つ目たちを怒鳴るとフンと鼻を鳴らした。
「全く礼儀がない奴らだ。」
「まぁまぁ、皆さんがそう思うのも無理はありませんから。今回ここに来たのはお礼を申しあげに参りました。」
閻魔大王は牛頭丸と馬頭丸より前に出ると頭を下げる
「この度は妖刀を封じていただきありがとうございました。今回こうなってしまったのは私の管理不足が原因です。本当にありがとうございます。」
「い、いえ…そんな…..。」
ゆづるを含め恐縮していると後ろからまた別の声が聞こえてきた。
「おーい!!」
「影がいなくなったんだが、封印できたのか!?」
「やっと終わったんか!」
影たちを相手にしてくれていたネコや酒呑童子、雪女に烏天狗たちだ。
向こうで夜行を抑えていた犬神たちも出てきたが何やら鬼女の様子がおかしく、怪しげな妖怪に急に掴み掛った。
「貴様!!!」
「おい!何している!?閻魔大王様の前だぞ!争いはやめろ!!」
「お前のせいで!お前のせいで!!」
「おい鬼女!?どうしたんだ!」
犬神たちはすぐさま鬼女を妖怪から引き離した。そして怪しげな妖怪の正体が明らかになる。
「こいつは牛鬼だ!!アキヒロを…毒で殺した張本人だ!!」
「こいつが…!」
「お前は地獄に行ったはずだ!何故ここにいる!?」
「私がお願いしたからです。」
鬼女の問に閻魔大王が申し訳なさそうに答える。
「あなたは…?」
「私のことを皆、閻魔大王と呼びます。」
「なら聞こう!こいつの罪をご存知で野放しにしたのですか!?」
「閻魔大王様になんて口の聞き方…恥を知れ!!」
「良いんですよ馬頭丸さん。私が牛鬼さんたちに提案しました。妖刀を封じる手伝いが出来れば解放すると。」
その答えに鬼女の顔がみるみる怒りで赤くなっていく。
「閻魔大王というお方がそんな甘い考えでよろしいのですか?」
「貴様!」
牛頭丸がなにか言いたそうにしていたがすぐに閻魔大王は止め、返事をした。
「確かに貴方の言うように甘いかもしれません。ですが、本当に反省していない妖怪を解放するほど義務を放棄はしていません。」
「……...!!」
アキヒロは閻魔大王の答えに納得していない鬼女の肩をポンと手を置いた。
「鬼女、ありがとう。ワシのために怒ってくれて。」
「アキヒロ…」
「ワシに思い残しといえばおばあさんを残してあの世に行ってしまったことぐらいじゃ。ゆづるや再びお前たちに会えて嬉しかった、全く恨みはないよ。」
アキヒロは牛鬼の方に歩いていくと、恐れながら牛鬼はアキヒロの目を見た。
「牛鬼、ワシはもうお前を恨んだり妬んだりしておらん。逆にお前が招いたお陰で犬神たちに出逢えた。じゃから、もう気にする事はない。罪を許そう。」
「……ありがとう…ございます。
ゆづるもすまなかった。君のおじい様を死なせてしまって…」
牛鬼は初めてゆづるの顔を見た。そのゆづるは複雑な気持ちになったがアキヒロ本人の気持ちを否定したくなかった。それに…
「まだ僕は気持ちの整理はついていなくて、上手く納得はできないけど…貴方が僕を助けてくれたのは事実です!ありがとうございました!」
牛鬼はゆづるとアキヒロの言葉に涙を流し、それを茶化すように羽衣と土蜘蛛がよってくる。
「良かったですね。牛鬼様?」
「優しい人間で良かったのう。」
「アキヒロが許すなら私はもう何も言わない。だが牛鬼、もし今度はゆづるに何かしたらタダじゃ済まないからな!」
「肝に銘じよう。」
鬼女も複雑ながら納得し何とか話は終わった。
閻魔大王は場が収まったのをみると再び口を開いた。
「ゆづるくんと…椿さんはいらっしゃいますか?」
「はい。僕がゆづるです。」
「椿は私です。」
「まずは椿さん、貴方には大変申し訳ないことをした。人間として生きる道を断たせてしまったことお詫びします。」
「いえ、最初は戸惑いましたがもう覚悟はできています。私は大丈夫です。」
「ありがとうございます。
それとゆづるくん、少し私に着いてきてくれませんか?」
「え!?」
「待つでありんす!ゆうちゃんを連れていくならアチキも…!」
ネコは皆をかき分け閻魔大王の前に立った。
「閻魔大王様がこの人間と言ったんだ!部外者はそこで待っていろ!!」
「にゃ!!部外者じゃないでありんすよ!!ゆうちゃんはアチキの大事な弟子でありんすよ!」
「ごちゃごちゃうるさい!!おい!人間!さっさと行くぞ!」
「ネコさん僕なら大丈夫!行ってきます。」
ゆづるは牛頭丸と馬頭丸、閻魔大王と共に天空山の上にある別邸に向かった。




