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グラスヘイム奪還作戦前日、ギルド・・・


「彼らが、貴方達の兵よ。」


「「「「うおおおお!!イリス様ぁ!!リーンベルちゃぁぁん!!!・・・・(カイムきゅ~ん・・・)」」」」


うん、やりすぎ・・・熱気ありすぎて吐き気がしてきた・・・


良かったな、カイム、ファンがいるぞ。見渡す限り女の傭兵は見当たらないが。


「総勢350名、思ったより集まったわね。・・・何をしたの?」


女神達による、ちょっとした客寄せでございます。


「悪くない数ですわね。・・・静粛に!私達は今日より、エルロンド最強の部隊となるのです!」


「厳しい戦いですが、みなさん!どうか、私達に力を貸してください!」


ウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!


イリスの鼓舞と、リーンベルの微笑みが炸裂!効果は抜群だ!


「天運の兄ちゃんに、弓鬼の坊主だな!イリスちゃん達から話は聞いてるぜ!よろしく頼むわ!!」


「は、はい!よろしくお願いします!」


おおう、意外と俺達も好感触なのか?


「ガハハ!天運持ちの大将たぁ、もう勝ったようなもんだぜ!!」


バラしたのか、まぁ、別にいいけど・・・


「はは、不安定な称号なんで、あんまり当てにしないでくださいよ。」


「はぁん?あんなべっぴんな嫁さんと妹がいて運がないわけねぇだろうよ!」


ですよね~、もう何よりそれが一番ラッキーだもの。いやホント。


たまにラッキースケベが発生するのは黙っていよう。


「噂じゃウィルヘルムのじっさま、の弟子なんだって?」


「ええ、指導を受けていますよ。」


「はっはぁ、そんな奴らがいるんじゃ、正規の兵隊より俺達の隊のが強ぇかもなぁ!」


「・・・冗談でもそんな事言わないで欲しいわ。・・・」


テレーズ様、お気を確かに。


「さて、では皆さん!若輩ながら俺が大将を務めます!我が隊は必ず生きて帰る事を第一の目標とします!よろしくお願いします!!」


「かてえぞ兄ちゃん!もっと大将らしくしろやぁ!!」


この、荒くれ者ども・・・


「だったら・・・いいか!野郎ども!ウチの嫁と妹に怪我させんじゃねぇぞ!!魔族共から死ぬ気で守りやがれ!わかったかぁ!!!!」


「「「「「おおおおォォォ!!!」」」」


は、マジで親衛隊じゃねぇか。二人共、一体何したんだよ。


「ねぇ・・・ちょっと兵を分けてくれない?」


ダメです。

「すごかったね・・・。」


「そうだな・・・。」


うん、でも一番すごかったのはリーンベルだ。


部隊の内訳、俺の本隊10、カイムの弓隊が40、リーンベルの守護隊300だからね。


もうマジでリーンベルが大将でいいんじゃない?

俺とカイムの方、くじ引きの外れで決めてたからね、アイツ等。


「イリスは分隊いらなかったの?」


「ええ、私はあなたのおそばを離れる気はありませんわ。」


本隊が10人で済むのはイリスのおかげだ。しかも護衛というより全員伝令要員っていうね。


本隊とか名前だけだろ・・・小隊じゃん・・・


「やれやれ、ついに明日から行軍かぁ・・・実感沸かねぇわ。」


前世は普通の一般人だったのに・・・軍人の真似事をする事になるとはねぇ。


「そこそこの規模の軍となるでしょうし、いきなり最前線という事もないでしょう、少し肩の力を抜いて構いませんわよ。」


「ありがと。まぁ、イリスが隣にいてくれれば安心だよ。」


君が強すぎて、激戦区に進軍させられないかだけ心配だけど。


しかし結局・・・違和感の正体は掴めなかったな・・・


イリス並みに強いヤツが敵側にいるとか?

いや~・・・だとしたらソイツを筆頭に攻めてくるよなぁ。


ん~・・・・


「どうかしましたか?お兄様?」


「ああいや、ちょっと考えごと・・・。」


まぁとにかく、俺は家族を守る事だけを考えてればいっか。


元Aランク掃除人のしごきにも耐えたしな!

テレーズ邸にて・・・


「お呼びでしょうか!テレーズ様!」


若き門兵、ジャック。領主のパシリに今日も日夜奮闘中である。


「ええ、話していた通り、「カプリコス」へ応援依頼に行ってちょうだい。文を預けるわ。」


はぁ・・・ホントにテレーズ様は人遣いが荒いです・・・


「かしこまりました!!では、行って参ります!」


「ふ~・・・これで、手筈は整えたわ。エルカ、ドワーフ、そして女神一行・・・これで負けたら、もう打つ手無いわよ・・・。」


エルカの未来のため、負けるわけにはいかない。

「皆様、いってらっしゃいませ、ご武運をお祈りしております。」


明朝、ウィルヘルムさんに旅の支度を万全に整えてもらい、いざ出発。


「「「「いってきます!」」」」


「旦那様・・・こちらをお持ちください。」


「え?」


これは・・・さすがに使わないっすよ・・・精力剤・・・・

「今回は楽ですね~。ちゃんと良い馬車を用意してもらえるなんて。」


一応、傭兵部隊長ご一行だからな。規模は中隊レベルだが・・・ケツが痛くならないのはいいな!


「しかし、こんなに人いたのか、エルロンド・・・」


聞けば総数は9万にものぼるそうだ、防衛に残した兵もいるらしいから、全軍だと10万超えるのか・・・


広い街だと思ってたけど、普通に一般市民も兵隊やってんだな。


「僕等は基本的に後方部隊だよね、強いヤツが現れたらイリス姉ちゃんの出番だけど。」


「そうですわね、姿勢としては迎撃に務めましょう。攻勢に出る時はテレーズ様から伝令があるはずですわ。」


敵の勢力がどれくらいか知らないけど、無茶な突撃命令出すなよ、ツンデレ領主。


「っていうか山攻めだろ?結構不利だよなぁ。」


「恐らく、時間をかけて除々に攻めていくのではないかしら。」


「う~、夜の山って怖いです。まだ悪夢の森のがマシです。」


じゃあ、夜はお兄ちゃんと一緒に寝ようか。


「夜間に岩石等落とされてはたまりませんわね。明りには気をつけましょう。」


この前の防衛戦と違って、敵が不明瞭なのが嫌だね、三魔神将に下手すりゃ魔王もいるかもしれないし・・・みんなが怪我とかしませんように!

「ここが、グラスヘイム山脈・・・」


ルルーイエの軍と合流し、兵数20万を超える大軍となったわけだが・・・


道らしき道はあるものの、進軍できるのかよコレ・・・


「魔王軍は完全に籠城の構えの様ですわね、これでは、こちらの数を活かしきれませんわ。」


ここまで全く、妨害や開戦の気配は無かった。


向こうからすれば、みすみす軍の合流を許した形だぞ?


ドワーフの寝返りが予想外だったのか、イリスの奮戦に思ったよりダメージがあったのか・・・


バタバタバタ・・・・


ん?なんだ?


「で、伝令!!テレーズ様より急伝です!全軍、即刻、エルロンドへ撤退との事!!またイリス様とご家族の皆様は大至急テレーズ様の元へお急ぎください!」


・・・・・・・は?


テレーズからの急報より少し前・・・・


ルルーイエ合流の後に設立された、領主用の大天幕へ駆け込む若者の姿があった。


「テレーズ様!はぁはぁ・・・・大変でございます!!」


息を切らせて駆けつけたのは、「カプリコス」へ応援要請に向かったジャックである。


「ジャック!何事なの!?」


「そ、それが・・・カプリコスが、魔王に侵略されました!」


「・・・・・・嘘でしょ・・・・。」


カプリコスが?そんな・・・


「私がカプリコス領付近へ到着した時、既に・・・領主シーザー様は・・・処刑されておりました・・・」


「・・・本当なのね・・・?」


「逃げのびた領民の話です、間違いないかと・・・。」


シーザー・カプリコス・・・・いけ好かない男だったけど・・・


「至急各所に伝令を放ちなさい!ルルーイエにも!全軍、今すぐ退却するわ!」


カプリコスが落ちた今、エルロンドやルルーイエまで失うわけにはいかない!!


「それとジャック!あの傭兵一家を呼んできなさい!今すぐ!!」


「は、はい!!」


お願い・・・間に合って・・・

「テレーズ様!何があったんですか!!」


傭兵達に撤退命令を出した後、俺達はすぐさまテレーズ様の元へ駆けてきたんだが・・・


「後で説明するわ!貴方達もはやく私の馬車に乗って!」


いきなり退却って、一体なんだってんだよ・・・

ガタガタガタ・・・・


うお~・・・めっさ揺れる・・・もっとゆっくり走れないのかよ・・・


「カプリコスが・・・陥落?」


ん?やべ、聞いてなかった・・・


「ええ、魔王が・・・現れたらしいの。カプリコスは壊滅、領主は処刑され、領民は・・・ほぼ全滅したそうよ・・・・。」


へぇ、カプリコス落ちたんだぁ・・・・・・・はぁ!?


「ほぼ・・・ですか・・・。」


「逃げのびた人もいたみたいなの・・・。応援要請に出したジャックとその人達がたまたま会わなかったら・・・考えたくもないわね。」


気付かずグラスヘイム攻めてたら、領地無くなってましたじゃ、洒落にならんな・・・


あぁ・・・もしかしてこれか?ずっとあった違和感。


悪夢の森の侵略は阻止出来た。じゃあ、東に魔王軍はもういないのか、だわ。


大軍で攻めてきたグラスヘイム侵攻に、三魔神将「しか」いなかった話で気づくべきだった。


考えてみれば当たり前だ・・・ここはゲームの世界じゃない、魔王が王座に座って延々と勇者を待ち構えている、なんてそんなバカな話があるか・・・


こっちだってイリスを出してる・・・魔王という最強の戦力を、この戦争に投入しないわけがなかったんだ・・・


「とにかく!一刻も早くエルロンドに戻って防備を固めないと・・・。」


「テレーズ様?今のお話ですと、魔王がこの国におりますのね?」


己の浅はかさを嘆いていると、イリスは、さも妙案を思い付いた顔でそう問いかけた。


・・・・・おや~おやおやぁ?妻よ、まさかとは思うけど・・・


「え、ええ。今は恐らくカプリコスにいるはずよ?下手すれば、エルロンドまで来てるかもだけど。」


「では討ち取りましょう。」


で、出たー!イリスさん必殺「めんどうだから、とりあえずブッ○しましょう(素敵な笑顔で)」大・作・戦!


魔王だよ!?ラスボスだよ!?そんなサクッとケリつけていいの!?


「「「・・・・・・。」」」


ほら~、さすがに皆ひいてますよ?

負ける気がせん!みたいなお顔をしていらっしゃいますけれど。


「あ~・・・イリス?さすがに夫として、そんな危険すぎる提案は受け入れられません。」


「そうよ!いくらなんでも無茶だわ!相手は魔王なのよ!?」


「お姉様・・・いくらなんでもそれは・・・」


「もう姉ちゃんに任せちゃえば良くない?」


おい!カイム!無責任な事言うな!ちょっっっとだけ、それも良いかも、とか思っちゃうだろ!


「ダメかしら・・・?」


ダメです。そんな上目遣いでこっち見てもダメです。・・・コラ、乳を寄せるな。ハニートラップの使い所間違ってるから!


「・・・・では、いっその事、このまま全軍で「カプリコス」へ進軍してはどうかしら?」


だから、そんな無茶を・・・・


「それは、私も考えていたわ。」


考えてたの!?どの道、最終決戦なの!?


「でもすぐには無理ね・・・先の行軍からとんぼ帰りで兵も疲弊してるだろうし、グラスヘイムから侵攻があるかもしれない。再度準備が必要だわ。」


まぁ確かに「フォームハウト」に引きこもってた魔王を討つ大チャンスなんだろうけどさ・・・


「・・・ならば、我が傭兵部隊を斥候がてら先行させてくださいません事?魔王軍が進軍してくるようであれば、エルロンドまで引き返します。カプリコス内にいるのであれば、状況を確認して参りますわ。」


あわよくば、討ち取るつもりですね。わかりません。


「・・・ん~・・・・絶ッ対に戻って来るの?魔王と戦ったりしない?」


「しませんわ。」


嘘つき・・・


「・・・・(ジャックは街へ侵入してはいないから、詳細は誰も知らない。情報は必要だけど・・・ッッ)。」


「はぁ・・・テレーズ様、部隊の指揮権は俺にあります。俺だって・・・いえ、俺だからこそ、何がなんでもイリスを失うわけにはいきません。絶対に無茶な行動はさせませんから、お許しいただけませんか?」


「あなた・・・。」


妻の我儘を通すのも、夫の役目・・・だと言い聞かせるしかないかね・・・まったく・・・


「・・・・わかったわよ。でも本当に!この前のドラゴンの1件とはわけが違うのよ!本気で危機感を持って臨みなさい!わかった!?」


「「はい!」」


「・・・ねぇ、リーンベル。僕達、頼る人、間違えたかな?」


「・・・かもしれません・・・。」


ごめんね!ホント無茶苦茶な兄姉でごめんね!


水業都市カプリコス没落の直後、魔王の圧倒的な力を前に、小さな家族は無謀にも闘いを決意する。


持てる武器は、武力と天運、その神がかり的な力を持ってして、果たしてこの強大な敵に抗う事が出来るのか・・・

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