第九話 〜救済〜
「ありがとう……そして、ごめんなさい」
「何故?……なぜ、わざと斬られたんだ?」
「私は、魔王をするには役不足だったのよ………これから先、貴方もきっと同じ道を選ぶ。でも、私はもう耐えられなかった……」
「僕は、魔王にはならない」
魔王レインはイシュト、エレン、セイリンに視線を向けた。
そして少し、ほんの少しだけ笑ったのだった。
「………先輩からの忠告……仲間を大切にしなさい。私は一人だったから………」
ドサッ
そして魔王レインは勇者によって討たれたのだった。
ーーーーーー
忘却の花園から、サンクチュアリに抜けた。
ルミナス教の総本山でゼノスたちは魔王討伐の報告をしていた。
魔王レイン討伐の報を直ぐに世界へと発信するため、サンクチュアリの騎士団が伝令へと向かった。
その日、勇者一行の勝利を祝う祭りが行われ、国全体が祝福していた。
しかし、ゼノスたちの気持ちはあまり晴れなかった。
それは魔王レインの最後。
彼女は勇者に倒されることを望んでいた。
護衛も付けず、あのバルギアスも魔王城にはいなかった。
それなのに、勇者たちの故郷セレディア王国を滅ぼした。
「……ありがとう、ごめんなさい……か…」
ゼノスがポツリとつぶやいた。
「私達には想像することもできません……250年という長い年月をあの人がどう生きてきたのか……何があの人を魔王にしてしまったのか………でも……」
エレンは言葉を一度飲み込んだ。
「でも?」
セイリンが答えを促す。
「……彼女は救われた……」
「ああ……きっと心は勇者のままだった……色は濁っていなかったんだ……ただ悲しみに覆われていた」
「……そうですね。彼女は平和を望んでいました………自分を犠牲にして……」
「貴方達、なんでそんな事がわかるのよ?」
「………僕達は…」
「心が見えるんです。このエメラルドの瞳は魔王と同じ、人の心を映すんです」
「「………」」
「はは…まぁ、唖然とするよね」
「す……すごいじゃない!!心が見えるなんて!!ちょっとゼノス!アンタこれから一緒にアルフェンに行きましょう!!研究させて!!」
「い。いや……生き残る自信がないよ」
「俺の気持ちはお見通しってことか……」
そんな事を言っているなか、イシュトは小さく呟いた。
ーーーーーー
「ねぇ、アンタたちこれからどうするの?」
「私はここに残ろうと思います。ルミナス教をより学んでみたいです」
「俺も残るかな…元セレディアの騎士団長だ。ここでも雇ってくれるだろ」
「僕は……世界を見てみようと思う。レインが魔王になってしまったきっかけがあるなら……僕はそれを無くしたい」
「ねぇ…アンタはさ、アタシのとこに来ない?」
「え?」
「その、不老不死になっちゃったんでしょ?これからの人生も長いじゃない?あ、アタシならまだ35歳だし、千年くらいなら一緒にいられるかなって……」
頬を赤らめながらそんな事を言うセイリン。
ゼノスもセイリンの心の色が見えて、頬が熱くなった。
「35歳!?と、歳上だったのかお前!?」
素っ頓狂な声でイシュトが叫ぶ。
「な、何よ!エルフは長命種なの!!まだまだピチピチなんだから!!」
「い、いや、てっきり13、4歳位かと思ってたんだよ……」
そう言ってセイリンの体の一部に目をやるイシュト。
「アンタ…今失礼な事考えてたでしょ?」
「い、いや、別に」
「心が見えなくったってそんくらい分かるわよ!!これは慎ましいって言うのよ!エレンが羨ましいなんてこれっぽっちもないんだから!!」
「…はは……」
そっと目線をそらし、乾いた笑いをするイシュトとワナワナと顔を赤くしながら震えだすセイリン。
「氷漬けにしてやる!!!」
なんとも他愛ない鬼ごっこが繰り広げられていた。
「セイリン」
「え?」
ゼノスの声にイシュトの襟首を掴みながら振り向くセイリン。
「ありがとう。旅の合間に時々、寄らせてもらってもいいかな?」
「………………えぇ!もちろんよ!!」
少し悲しい顔をした後、満面の笑みに変えてそう答えた。
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「ゼノス、良かったの?」
「あぁ」
「貴方だってセイリンの事……」
そう、ゼノスもセイリンに好意を抱いた。
明け抜けで周りを笑顔にできるそんな彼女に惹かれていた。
「長い人生だ、僕に縛られるべきじゃない。それに……僕は死ねないからね。失うのは……怖いよ」
ゼノスの脳裏にルナの姿が浮かんだのだった。




