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第八話 〜世界の真実〜

あれから、出来る限り遺体を埋葬した。


全てが焼け落ち、骨すら残らなかった人の方が多かった。


バルギアスの宣戦布告からの一週間、勇者達が帰ってくるという希望が溢れていた。


その希望を崩すように、六日目の朝、バルギアスは訪れた。


ゼノスたちは尋常ではない速さで走った。

エレンの身体強化を使い、馬にもバフをかけた。


五日目の夜にサラマンダーの襲撃が無ければ、六日目の朝には間に合ったはずだった。


全てがバルギアスの計画だった。


希望から絶望に変わる人の姿が何より好物だった。

だからセレディアを襲う前にゼノスたちに会った。


だから期限を設けたにも関わらず、勇者到着の希望をもたせた。


元より、誰も逃がす気など無かったのだ。

それが、残虐で破壊の権化と呼ばれ、後に烈火の支配者の二つ名で称されるバルギアスであった。


ーーーーーー


「みんな、ごめんな。僕はこの事は絶対忘れない!二度と無闇に命が奪われない世界を取り戻すと誓うよ。」


「そうだな」


「アタシもこんなのは嫌だよ」


「私達が止めましょう。平和な世界にしましょう」


それぞれが誓いを胸にセレディアを後にした。


それからの道程はこれまでの比ではない程にスムーズに進んだ。


ーーーーーー


2年後、ゼノスたちは忘却の花園にたどり着いていた。


「…ここが忘却の花園……死せる魂が集いし場所……」


淡い光に包まれ、一面に広がる花園。


所々に水晶が光っている。


「ここは、魂のした安息の地なんですね」


「……そうだね…穏やかな色に包まれてるよ」


その時、目の前が強く光り輝いた。


その光から人の姿が現れる。


「!!?……お父さん……」


『エレン……良かった、生きていたんだね。イシュトたちも良く無事で……もうお前たちにパンを焼いてやれないのは悲しいけど、お前たちが生きててくれて本当に良かった』


「親父さん…俺達がもっと早く帰っていれば……」


『いいや……私達は勇者が旅立った時から覚悟はできていたんだ。君たちのせいじゃない。それに……奴は指定した日より早く来た』


「そんな……」


『心残りがあるとすれば………エレン、イシュト……君たちの結婚式が見れなかったことだ。私の願いは一つだ。幸せにおなり』


そしてパン屋の主人、エレンの父は姿を消した。


「……お父さん!……」


「ここでは亡くなった人と出会えるみたいね。時間は短いし、深い関わりがあって共鳴した人限定みたいだけど…」


『…ゼノス?』


「!!!? ルナ!!」


ふいに後からかけられた聞き覚えのある言葉。

あの日以来、聞きたくてしょうがなかった声。


「あぁ!ゼノス!無事だったのね……良かった……」


大津日の涙を流しながらゼノスに抱きつくルナ。


ルナの魂からは淡い緑色のオーラがゼノスには見えていた。

慈愛に満ちた心。


ルナの感情が五感全てから伝わる感覚がゼノスを満たした。


「…ゴメン……ゴメンよ…ルナ……僕は君を助けられなかった」


涙はあの日、セレディアに置いてきたつもりだった。しかし、間違いなく、その目からはルナの事を思い涙となって雫を落としていた。


「ルナ、僕はもう一度誓うよ!もうあんな悲劇は起こさせない。平和な世界にしてみせるよ」


「ゼノス…私は貴方が幸せならそれで良い。でも、それが貴方の望みなら………忘れないで……私はいつでも貴方のそばにいるわ。だから大丈夫…一人じゃないよ」


そうして、ルナの姿は消えていった。


キイィィィィン


高い金属音がゼノスの聖剣から鳴り響く。


「な、なんだ!?」


全員が耳と目をを塞いだ。


音が静まり、目を開けると、そこには見慣れない騎士が立っていた。


銀色の髪を後ろで束ね、ゼノスと同じ蒼と翠の虹彩異色の瞳。

長身で体格が良く、歳の頃は四十歳くらいの騎士風の男だった。


「誰?」


セイリンの言葉に振り向く男。


「…知ってる……気がする」


「もう二年以上一緒にいるのだ。お前ならわかるだろう」


「も、もしかしてあんた、この聖剣か?」


「「「えぇ!!?」」」


「そうだ。私はエヴァン。勇者の聖剣であり、内在する意識のようなものだ。」


「なかなかイケオジね」


自身の感想を述べるセイリン。


「様々な勇者と旅をしてきたが、ここまで一度も顕現せずにいたのは初めてだ。お前は強いな、ゼノスよ」


「聖剣自身ってどういうことなんだ?」


イシュトぎ身を乗り出しながら聞いてくる。


「何時も旅とともに成長する勇者が多いが、お前は幼いときから鍛錬を積んでいた為か、私の出番もなかった」


「あ、あの……」


「だが、ここまで来たならばそうも言ってられん。お前は知らなければならない。」


エレンの言葉を遮りながら話を続けるエヴァン。


「お前の聖剣は人の話も聞かんのか?」


「さ、さぁ?」


「お前に魔王を討つ覚悟があるか、真実を知って尚、魔王に挑めるのか……運命にお前が乗り越えられるのかをな」


「それって……魔王が元勇者ってことか?」


「気付いていたか」


「あぁ。あの本……魔王隷属のすすめに魔王レインと名があった。そして、蒼と翠の瞳を持つことも。250年前の勇者の名前もレインで虹彩異色とだったと教わった。なんとなく、そうなんじゃないかなって」


「その通りだ。勇者が持つ聖剣のみが魔王を倒せる唯一の武器。それは、不老不死の鎖を断ち切れるのが聖剣だけだからだ」


「不老不死ですって」


「そうだ。魔王を倒した勇者は不老不死となる。そして魔王に落ちるのだ」


「!!!?」


「これまでの勇者もそうであった。レインもな」


「不老不死だからってなんで魔王になるのよ?」


「前の魔王の魔力も引き継がれるのだ。その暗黒の魔力に囚われ、勇者たちは魔王になって行ったのだ………それでもお前は魔王を討つのか?」


「あぁ!僕は魔王を討つ!世界が平和を取り戻す方法はこれだけだ!」


「…本当にいいのね?」


ゼノスの言葉にエレンが返してきた。


「僕は「正義の勇者」だ!呪いなんかに負けないさ!」


「私はお前を信じている!」


イシュトの力強い言葉がゼノスの背中を押す。


「まぁ、何かあればあたしがあんたを止めてあげるわ」


セイリンの言葉にゼノスは笑った。


「あぁ!!……いこう!!」


「分かった。その覚悟があるなら私も全力で貴様の力となろう」


「あぁ!頼むよ、エヴァン!」

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