第六話 〜バルギアス〜
ゼノス一行はカナート山脈を越える為に活火山を登っていた。
「おい、セイリン!ここは活火山だ。さっさと先に進んだ方がいい!」
「ここの溶岩石は魔力が豊富なのよ!研究材料にもってこいなの!もうちょっとだけ」
イシュトの言葉も何のその。
セイリンは目を輝かせながら溶岩石を拾っていた。
「よう、アンタたちが勇者様御一行かい?」
「!!!?」
一帯に響く声に一行が慄いていると、ゆっくりと魔族が火山口から出てきた。
赤い髪に赤い瞳。黒いコウモリの羽を背中から生やした、悪魔然とした魔族だった。
「魔族!?この魔力…そんじょそこらの魔族とは大違いだわ」
セイリンの言葉に従って戦闘体勢をとるゼノス一行。
「俺様はバルギアス。魔王レイン様の忠実な下僕ってヤツだ」
「魔王レイン!?」
あの本を書いた魔王だ。
250年前に世界を救った勇者と同じ名前の魔王。
「先ずは小手調べだ!」
バルギアスが掌から炎を何発も打ち出す。
「散れ!!」
油断も慢心もないゼノスたちは、全員がバルギアスの攻撃をしっかり見定め、躱していく。
切りかかるゼノスとイシュト。
ビューーン
セイリンの杖が小さく振動しながら、魔力を増幅していく。
「アイス・コフィン!」
走って炎弾を躱しながら、氷のドリルを放つ。
「ぐあ!!」
死角から放たれたアイスコフィンはバルギアスの脇腹を抉った。
傷口が凍りつき、出血は少ない。
脇腹を抉られたバルギアスが苦悶の表情でセイリンを睨む。
「てめぇ!!くそっ!エルフかよ!森ン中に隠れるのが大好きな連中が珍しいじゃねえか!」
「人間を舐めてるからよ!」
更に増幅率を高めてアイス・コフィンを放つ。
脇腹を抉られているにも関わらず、残像を残すほどのスピードで攻撃を躱す。
「ケケケ!魔王様からはお前たちの殲滅は命令されてねぇからな!また遊んでやるよ!!」
そう言って羽を広げて高く飛び上がる。
「さ〜て、ここで問題で〜す!俺様はこれからどこに行くでしょう?」
「なに?」
「セレディア王国……」
ニヤリと醜悪な笑みを浮かべながら言うバルギアス。
セレディア王国はゼノスたちの生まれ育った国で、聖剣の神託を受けた街だ。
「なっ!!?」
「歴代最強の剣士の騎士団長と」
イシュトを指差すバルギアス。
「魔法も操る副団長がいるって噂だ」
ゼノスを指差し、更に嗤う。
「どれほど持ちこたえられるか楽しみだ。なぁ?勇者様よ」
ザワっ!
首筋から髪を掻き揚げられるような感覚がゼノスたちを襲った。
「ヒャーッハッハッハ!!」
高笑いしながらバルギアスはセレディア王国の方へ飛んでいった。
「ルナ!!」
「お父さん!!」
ゼノスとエレンの声が火山口に反響して響いた。
「行こう!!」
イシュトの声にゼノスたちは走り出した。




