第三話 〜旅立ち〜
「結局この三人で行くんだね」
町外れの道を歩く三人の姿があった。
真ん中を歩くゼノス。その右にイシュト、左にはエレンの姿があった。
「見知った仲間だ!喜べよ」
「それは、もちろん嬉しいけどさ、僕とイシュトの二人ともいなくなったら騎士団はどうするのさ?」
「小隊分隊長たちもいるんだ。魔物たち何かは大丈夫さ」
「そうですよ!第一優先は打倒魔王です!」
「エレンも、危険な旅なんだよ?」
「はい!神託の巫女としてしっかりサポートしますから安心してください!」
「いや、そうじゃなくて………」
斜め上の回答にため息をつくゼノス。
「ゼノス、エレンに何言っても無駄だぞ」
「…はぁ、まぁ来ちゃったものはしょうが無いか……僕のパーティは天然巫女さんと巫女さんの為に騎士団ほっぽり出しちゃった団長さんか…」
「!!?ばっ!な、何言ってんだよ!」
「??」
小首を傾げるエレン。
ーーーーーー
時をは少し遡る
「勇者ゼノスよ、仲間を集め、魔王討伐に向かうが良い。志願する者は連れて行って構わぬ」
王の言葉を受け、ゼノスは立ち上がり、聖堂を後にした。
旅支度のため騎士団宿舎へ戻っていた。
街の中はお祭りのようだった。
勇者の神託が降ったのは、教わった歴史でも250年も前の事だ。
今まで魔王討伐に出た国も、軍団も、騎士たちも誰一人帰ってこなかった。
聖剣の勇者だけが希望だった。
「ゼノスお兄ちゃん!」
宿舎を出ると、一人の少女がいた。
「ルナ!」
ゼノスをお兄ちゃんと呼ぶ、このルナと言う少女はスラム街でゼノスが騎士団に入ってから支援している身寄りのない孤児たちの一人だった。
住まう家と食事の支援、仕事の斡旋など。
苦境の中でも生き残る力を与えてやりたかった。
そしてルナはそんな中でも一番の器量よしで、他の孤児たちをまとめていた。
5つ違いのルナはゼノスとの将来を語る事もあった。
そして、ゼノスもルナを迎え入れる準備をしていたのだった。
「副団長がスラムの娘と?」
「せっかくの地位を棒に振るおつもりか?」
そんなことを言う人たちもいたが、認めてもらえないなら、認めさせれば良いだけ。
これまでと何も変わらなかった。
「行ってしまうの?」
「あぁ、すまない。多くの人を救う道がそこにあるからね。家の事が少し心配だけと…」
「それなら大丈夫よ。みんな生きる力をつけてきたわ。仕事だってお得意さんが付くようになったんだよ!」
笑顔の中に一筋の涙が溢れる。
「……わたし、待ってるから!いつまでもまってるから!」
「………10…いや。8年だ」
「え?」
「8年以上待つことは許さないよ。僕は、ルナにも幸せになってほしい………けど……」
「けど…なに?」
「……僕が君を幸せにしたいと願ってる。きっと……必ず帰ってくるよ。そうしたら、結婚しよう」
二人は強く、強く抱きしめ合い、口づけを交わした。
「ゼノス、行ってらっしゃい」
「あぁ!行ってくる!」
そうして、街の人々が祝福する中を勇者は旅立った。
街の入り口にイシュトとエレンが旅支度をして待っていたのを見たとき、言葉にしがたい喜びに包まれたのだった。




