第十六話 〜魔王ゼノス〜
あれから300年経った。
世界は概ね平和だ。
魔王の恐怖に対抗するため、人同士の争いはほとんど無くなった。
強大な敵は、人々の結束を強くする。
私はこの必要悪を続けなくてはならない。
いったい……何時まで……
魔王レイン。
彼女の言葉。
「あなたも同じ選択をする」
その通りだった。
私は、魔王になった。
正義の勇者ゼノスは魔王ゼノスになった。
戦う意思のある者を屠る日々。
見せしめの如く、大々的に破壊する。
戦意を挫き、立ち向かう力を削ぐ。
そうすれば、徒らに生命を刈り取らなくて済む。
100年前、あのバルギアスが私の所に来た。
ただ破壊を楽しむ為に生きているアイツを斬り捨てようかと思ったが、国の破壊を任せる事にした。
条件は私に忠誠を誓うことと、許しがない限り暴れない事とした。
魔族や魔人、魔獣が私の魔力に呼応し従順の意を示す。
図らずして、魔王軍が出来上がっていった。
そして、更に百年。
私が魔王になって四百年がたった。
「ま〜た、戦力を集めてる国があるようだぜ、魔王様よ」
後から掛けられた声に視線だけ動かした。
100年経ってもやはり好きにはなれない。
かつて故郷を破壊したこのバルギアスを……
「潰してきていいよなぁ?」
「………あぁ……」
長く話していたくないと思い、軽く返事をしてしまった。
「へへっ、じゃぁ行ってくるぜ」
まさか、バルギアスが向かう場所がセイリンのいるアルフェンだとは思わなかった。
そして……アルフェンは滅びた。
何とかセイリンの魔力は感じていた。
まだ、生きている。
この世で一人では無い。
ーーーーーー
アルフェンが滅んでから20年。
ガタッ!!
立ち上がる勢いで椅子を倒してしまった。
「セイ…リン……?」
急にセイリンの魔力が跳ね上がったと思った瞬間に、今まで感じていた、セイリンの魔力波動が忽然と消えた。
それは彼女の人生が終わった事を意味する。
「…また……一つ……」
俯く頬に光る物がつたった。
「……僕の大切な人は…もう……いない」
「──私は魔王……魔王ゼノスである!──私は、世界の平和を守るものだ!」
己を鼓舞するための言葉は広い城に響くが誰も聞くものはいなかった。




