第十五話 〜セイリンの独り言〜
アタシはセイリン。
エルフの魔道士で、ピチピチの40歳。
5年前、勇者ゼノスといっしょにアタシたちは魔王レインを倒した。
アタシはゼノスの優しい目が大好きだった。
ゼノスが不老不死になるって聞いたとき、一緒に居られるのは自分しかいないと思った。
エレンとイシュトの結婚式ではプロポーズまでしたのに……
はぐらかされてしまった。
「あ〜あ、ゼノスに会いたい……」
アルフェン研究所の机に突っ伏してノートに落書きの魔法陣を書く。
ゼノスは長寿のアタシですらいずれいなくなる存在として一緒にいる事を拒んだ。
でも、好きだと言ってくれた。
同じ時間を過ごせれば一緒に居られるのに……
「…待って?時間干渉して、肉体の老化を防げばいけるんじゃない?……あぁ、でも魔力が持続しないか」
一度立ち上がるが、もう一度突っ伏す。
「……待って!?共通還元に増幅システムを併用したらいいんじゃない!?……あぁ、でも時間干渉したらケイ素生物並に動きが遅くなっちゃう……」
またも起き上がって、突っ伏す。
「………待って!?知覚、伝達に加速をかけて、思考加速も100倍まで持っていけばいけるかも…………早速実験ね!!」
ーーーーーー
5年後
「大成功!!これなら五千年は余裕そうね!」
研究所の椅子に座り、コーヒーを飲みながら一息つく。
「……待って!?この時間干渉、街全体に加速でかけたら、魔道学の進歩が早くなるんじゃない?………流石に街全体は無理ね……」
座り直してコーヒーを飲む。
「……待って!?地脈の魔力を使えば良いんじゃない!?………大地が枯れ果てるわ……」
またも座り直してコーヒーを飲む。
「………待って!?円環システムならどう?地脈からの供給分を3倍に増幅。供給分を返還。使用魔力、システム運用魔力の3系統に分ける!一度動かせば永久機関が出来上がるわ!!早速実験よ!!」
ーーーーーー
10年後
「地下に研究施設まで作っちゃったわ」
椅子に座り、紅茶を飲む。
「アタシはやっぱりコーヒー派かな?……あぁ、ゼノス会いに来てくれないかな?」
もう一口飲む。
「押しかけ女房とか迷惑かな?……迷惑だよね」
さらにもう一口。
「エレンとイシュト幸せそうだったんだよね〜、娘チャンも14歳になって、教会学校に入ったんだっけ?……いいなぁ、ゼノス、結婚してくれないかな?」
もう一口飲もうとして、カップは空になっていた。
ーーーーーー
3年後
「エレンが亡くなるなんて……」
ゼノスとイシュトがアルフェンを訪ねて来てくれた。
3年前の宗教戦争でエレンが亡くなったことを聞かされて立ち尽くした。
二人はもう、アルフェンを後にしている。
「アタシも連れて行って!」
去り際にゼノスにしがみついて叫んだ。
でも、ゼノスは首を縦に振ってはくれなかった。
「君まで失いたくない」
小さくそう言ったのが聞こえた。
ゼノスの魔力は以前より重く、闇を抱えているように見えた。
「……癒やしてあげたい……」
手を握りしめ、顔をあげた。
「……魔力相殺実験をするわ!」
ーーーーーー
あれから770年
「それでは1058回目の実験です。魔力想定3200です。大規模破壊魔法クラスになります。皆さん十分な安全確保を」
実験室の中は魔力の奔流と神聖力が混ざり合い各々の力が消滅した。
「おぉ!! 成功ですね!!」
「この魔力クラスでも神聖魔法は対抗できますよ!!」
「・・・!!?は、博士!!あれを見てください!!
研究員の一人が実験室の中を指さした。
そこには今までになかった実験室に窪みができていた。
実験の失敗かと思われたが、セイリンは違和感を覚えた。
直接現場を確認に行くとそこは半径1mほどの円形の窪みに抉られていた。
圧力で押された状態ではなく、文字通り「抉られていた」にもかかわらず、破片や残骸が一切ない。まるで元々なかったかのように、または「消滅」してしまったかのように。
「ま、まさかこれって……」
「博士……」
「えぇ、魔力と神聖力の対消滅が空間にも影響を与えているんだわ」
「神聖魔法による相殺は危険なのでは??」
「これまでの実験で空間に影響を及ぼしたのは初めてだわ。強大になるにつれて空間にも影響を及ぼすのね。これが理論化できれば凄まじい魔法が作れるわ!!」
「やりましょう!!博士!!神聖魔法を軽視する連中をギャフンと言わせましょう!!」
----------
「…………15,000です」
「可視化して消滅魔法として組む時の魔力値が15,000か……人間技じゃないわね………」
「魔力増幅機を総動員してもこの数値は無理ですよ………」
「……待って!?……圧縮魔法にしたらどうかしら?」
「確かに圧縮すれば総魔力の上限は引き下げられますね。でも圧縮の魔術式を追加しないと使えませんよ」
「やっぱり現実的には無理か…でも、記録はしっかり残していきましょう」
アタシはまだ研究を続けている。
魔王になったゼノスを救えるのはアタシだけだから。




