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最終話 〜勇者レオン〜

ゼノスが魔王に台頭してからおよそ五百年


魔王レインが倒されてから実に千二百年が経っていた。


多くの者が勇者伝説の本質を忘れ、魔王討伐に一抹の願いを託すだけの物と変わっていた。


そんな中、いち早く聖剣エヴァンの胎動を感じたのは……魔王ゼノスであった。


「1200年ぶりか……500年早ければな……今更何をすると言うんだ……エヴァンよ」


ーーーーー


勇者が旅立ったようだ。


エヴァンの反応が動き始めた事が感じられた。


「今は平和な世界なのだ……平和が続いているのだ……邪魔をさせる訳にはいかん!」


かつてアルフェンがあった遺跡に暫く滞在しているようだった。


「……行ってみるとしよう」


そう言ってマントを翻し、魔王城を後にした。


ーーーーーー


アルフェンの上空に着くと勇者一行がいた。


「勇者一行か、懐かしいな」


その中に自分の知る顔があった。


「エレン?セイリン?……フッ……まさかな…」


勇者一行が気付いて戦闘態勢を取る。


魔術師のファイヤーボールを放ってくる。


同じくファイヤーボールで応戦した。


「やはり違うか………期待はずれだな、弱すぎる」


そう、セイリンの魔法はもっと力強かった。


「さらばだ」


ブラックファング・インフェルノを放とうとした時、聖剣エヴァンが光、勇者一行を異空間へ連れて行った。


「エヴァンめ、余計なことを」


ーーーーーー


「バルギアス」


「はっ」


魔王城に戻り、バルギアスを呼び出した。


「勇者が誕生した」


「ほほう、1200年ぶりですなぁ」


皮肉交じりにバルギアスが言う。


「ふっ、お前は前魔王から仕える最古柱だからな…奴らが大きくなる前に潰せ」


バルギアスの言葉を軽く流し、指示を出す。


「はっ!」


そして、バルギアスは姿を消した。


「これで奴らの力も推し量れるだろう」


ーーーーーー


「バルギアスが破れたか……おしいな、アイツは私の手で引導を渡したかったがな……まぁいい」


そうして一度窓に目を向け、ライオスを呼んだ。


ライオスは100年ほど前に挑んで来たところを返り討ちにし、配下にした獣人だった。


そのライオスも勇者一行の前に倒れたのだった。


「ゼノス」


「イシュトか…」


暗闇から現れるイシュト。

その瞳に光は無い。


「私が勇者を討ってこよう」


ゼノスは答えなかった。


「この平和を崩すことはできない。そうだろう?」


「……あぁ………任せる」


イシュトの因果を断ち切れるのはゼノスが死ぬか、聖剣に斬られること。


もしかしたら、イシュトの呪縛を解いてくれるかもしれないと心の片隅でゼノスは考えるのだった。


そして……それは現実となる。

イシュトはエリシアを斬った時、その姿にエレンを重ねた。狂乱したイシュトは聖剣エヴァンによってその生涯に幕を降ろしたのだった。


「……イシュト……逝ったか……どうか、安らかに眠れ、我が生涯最高の友よ…」


ーーーーーー


「…よく、ここまで来れたものだな……勇者諸君……」


城までやってきた勇者一行を前にゼノスは言った。


「へへっ…いつかのカリを返しに来たぜ!!」


聖剣を抜き、ゼノスへ尖先を向ける勇者レオン。


「……四天王と近衛騎士を倒され……腸煮えくり返っているのはこちらの方だ!!」


ゼノスも剣を抜き放ち、尖先をレオンに向ける。

あの後、深淵の支配者ルイン、近衛騎士団長ベイルか勇者一行に撃破された。


「……私達の決戦に誂え向きのステージを準備した……上がってくるがいい……」


「……ここでやっても良いんだぜ……」


『フン、気負うな。罠など有りはしない……天空コロシアムで待つ』


マントを翻し、天空コロシアムに転移する。

勇者達が上がってくるまでが物凄く長く感じた。


──そして……激闘の末


「グラン・ブレイク・レイ!!」


白銀の光が闇を断ち、ゼノスの絶叫が掻き消される。


「…はぁ…はぁ…はぁ」


血反吐を吐き、袈裟懸けに切られた傷が修復しない。


「……また、世界は……地獄に落ちる…」


「——ならねぇよ」


消え入る言葉は勇者レオンに否定された。


「アンタはデカイ物を持ちすぎた。一人の肩に世界なんて重すぎる」


「………」


「俺は……勇者でも何でもないただの商人の息子だ!……見える範囲しか幸せにできねぇ……けど、それでいい。


……みんなが両手の幸せを守れば、世界は――救われる!!」


「………あまいな……だが……それが希望か」


人を信じきれなかった自分が弱かったのかもしれない。


「”正義の勇者ゼノス”、ゆっくり休め……後は…俺が引き継ぐ……魔王でも勇者でもない俺がな」


聖剣が静かに振り抜かれた。


その刃は、迷いなくゼノスの心臓を貫いた。


『…ゼノス……』


いつもそばにあった淡い光がゼノスを包み込む。


ゼノスの瞳にはかつて愛した女性ルナの姿があった。忘却の花園にも魂が見つからなかったルナがここにいたのだ。


『ルナ……?』


『ずっと見てたよ……大変なときに助けてあげられなくて……ゴメンね……よく、頑張ったね』


『僕こそ、君を助けられなかった…』


『ううん…私、幸せだったよ。ゼノスと過ごせて、愛してくれて、とても幸せだった……これからずっと、一緒だよ』


ドサッ


心臓を貫かれたゼノスはその場に倒れた。


「レオン……ありがとう」


多くの苦悩の中、その正義を貫こうとした、正義の勇者ゼノスはその生涯に幕を降ろしたのだった。


最愛の人と一緒に。

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