デジャヴ感
エリーゼのデジャヴ感ってなんなんだろうって思ったら、毒恋の主人公のライバルキャラだと気づいたのは、休憩中に新刊を読み返している時だった。
主人公のライバルキャラ、リゼはヒーローの暗殺者のことが好きで、幼い頃からずっと一緒だった。お互いの慰め合いとして関係を持っていたが、暗殺者の心が主人公の方へ移り、ずっと思いつづけていたリゼは嫉妬し、主人公をあの手、この手で陥れていくという噛ませ犬役だった。
状況は違うけど、私にやっていることはまさにこれの勘違いバージョンだと感じた。自分のことディナサンの愛人っぽいこと言ってたし。
まぁ、ずっと思い続けていた相手に突如思い人ができてしまい、そちらに構いっきりになった時の嫉妬は共感できなくもない。思い続けていた思いが実らないとしった時の絶望感は耐え難い痛みなのだ。
そう思うと、エリーゼのやっていることは間違っていることだが、ある意味では間違った行為ではないのかもしれない。思いの強さは人それぞれだし。
エリーゼのこと全てを知ったつもりじゃないけど。思いが暴走して、人を傷つけてしまうことはよくあることだ。
どうせ今日だけの付き合いだし、ある程度は我慢してもいいのかも。
気持ちに区切りをつけて、ドレスの生地選びへと向かった私は、読み返しの小説にしおりを挟んだ。
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「どう?各地から買い集めたドレスの生地なんやけど......」
「流行とかはそっちの専門だけど、私なりの意見を言わせてもらうなら、ベロア系は保温性があるからこれからの時期に流行りそう。だけど、あまり光沢のある色だと照明の色と合わないし、色味もしつこいから、ドレスのデザインを決めてから仕入れた方がいいでしょう。――あと」
「なるほどな~機能的なものも見た方がいいかもな。こっちの生地はどう?」
ドレスの生地選びならず、生地の評論会と化した室内で、テーブルの上にさまざまな生地が広げられた。さすがやり手。他の商会では手に入らなさそうな生地がわんさかとある。
この反物も、あの反物もみたことがない。知識はあるけど、実際に触るのは初めてだ。
「これ本で見たことがある。東方の反物でしょ?民族衣装の生地をドレスにしても、流行るかもしれないわね。流行を作ってくれる人に受け入れればの話だけど――」
東方の国の民族衣装の生地である、ちりめんや紋意匠など実際に手に取るのが初めてのものに触れた。この凹凸とした独特な肌触り、もうひとつは地紋がはっきりと浮き出ている王国ではなかなかない生地。
後者は汎用性がありそうだし、ドレスや婦人用のコートとかにも合いそう。あとはデザイナーの腕次第だけど。
いつものように世辞抜きの意見を述べていると、エリーゼが言葉を遮った。
「異国の民族衣装に使われている生地は独特なものも多く、生地によってはドレスの相性と悪いものもありますわ。機能やデザインももちろんですが、デザインするドレスの型をきちんと決めてからじゃないと仕入れたところで......という話だと思います。とくにこのちりめんという生地なんかは従来のドレスの型と合わないような気がしますわね」
エリーゼは得意気に意見をした。たしかに、それも一理ある。たしか、ディナサン曰く、彼女はデザイナーなので、彼女の意見も取り入れた方が良さそうだ。
「たしかに、この凹凸のある生地はなかなかデザインが難しそうね。でもこの生地は面白いからドレスの生地に限定せず、例えばお財布とか、鞄とか......別の小物に使うのなんてどうかしら?紋意匠の生地はコートとかに合うと思うんだけど」
「こちらの方は幅広く使えそうです。例えばドレスの下地とか、生地の基礎に使えば生えそうですわ。シンプルなデザインにして――」
エリーゼは机の上においてある紙とペンでさらり、さらりとデザインをしていく。ふんわりとしたプリンセスラインのドレスは豪奢で可愛らしいデザイン。黒の生地とかと合いそうだ。
エリーゼのデザインを覗き込んでいると、はっとした反応をしたエリーゼはツンとそっぽを向いた。まだ私、敵視されてるの?
エリーゼがそんな態度を取っていると、ディナサンはぱんっと手を叩いて空気を一転させた。
「はいはい。今は生地の話をしてるさかい、ドレスのデザインは仮縫い前にでもしましょ。とりあえず、姫さんが欲しいドレスの生地を選ぼうや」
気を取り直して、自分に似合いそうなドレスの基礎地となるものを数点選び、次はその生地に合いそうなドレス選び、そしてデザインという流れでドレスを作ることになった。




