嫌な女
「お嬢様、すこしウエスト失礼しますわね」
「こちら少し向いてもらえますか」
「ああ、腕はもう少し上で……ありがとうございます」
ディナサンが余裕の笑みを浮かべて、部屋から去っていくと、一瞬で女性たちは仕事モードに入った。スーツケースからドレスの採寸に必要はメジャー等の一式を取り出すと、5人がかりで採寸に取り掛かる。
サイズを図るなんて年1なので、忘れていたが、結構時間がかかる作業なんだな。これが。
「あら、お嬢様、去年より5センチ太りました?」
「あははは……」
そりゃあ、ダイエットする気ゼロで遠慮なしに糖分、脂質を補給すれば太るのは当たり前でしょう。ちょっと嫌味っぽく言われたような気がして愛想笑いを浮かべた。
ウエストを図ったお姉さんの2周りくらい大きいからな私。お姉さんのほうが、綺麗なブロンドヘアーで整えられたセミロング。男性を魅了するような目元のほくろと黒曜の瞳、グラマラスな体に比べれば、天と地の差だろう。
「駄目ですわよ~。デブな女性って男性に嫌われますもの。私なんて、最近食事制限をして2kgのダイエットに――」
客を駄目出しのうえに、自慢話って、大層な従業員だな。ディナサンって人を見る目があるかと思ったのに。これを私以外の客の前でしているのかと思うとマイナスポイントだ。
不愉快な視線に気づいたお姉さんが、にたりと笑うと、私の耳元で囁いた。
「お嬢様って、ディナサン会長と仲がよろしいようですが……私の方がもっと仲がいいんですの。お嬢様とは違って、体はもちろん、心まで求められる関係ですので。……だから、あまりディナサン会長の優しさを勘違いしないように気を付けてくださいね? ……勘違いするブスって見苦しいですわよ?」
お姉さんは挑発的な表情を浮かべ、勝ち誇ったように笑みを返した。
え?嫌味じゃん、これ。というか、別にディナサンともそういった関係ないし。なに勘違いしているのこの子。
お姉さん……後で違う従業員からエリーゼという名前と聞いた私は、この子に対して嫌なイメージしかつかなかった。勘違いとはいえ、店を利用している客に対して不躾な発言をし、暴走をしてしまう姿は目も当てられない。
……勘違いされるのは100歩譲っていいとして、小馬鹿にされる発言をされたのが心に残った。
★
「採寸終った? 次はドレスの布地選びやね。姫さんの為に仕入れた極上の布と小物みたってぇや。……どした?なんや元気なさそうやけど」
「会長、採寸が長引いただけなので、疲れただけだと思いますわ。少し休ませてあげませんか?」
はぁ、ちくちくと嫌味ばかり言われて気が滅入る。ドレスの採寸だけでなんでここまで疲れなきゃ駄目なのか。ディナサンにちくったところで、だし採寸は我慢したからもう体に触られることもないし。
ていうか、愛人の管理くらいきちんとしてなさいよ…...。いくらプライベートで仲がいいとはいえ、客に危害を加えるって常識以前の問題でしょ。
エリーゼは自分がしたことをばらされたくないのか、私に発言させないように言葉を遮る。視線でばらしたらタダじゃおかないって顔してる。
立場的なこともそうだけど、なんかはき違えっちゃってる感するんだよね。この子。
......どっかで見たことがあるキャラクター性というか。
沈黙を続けていると、一度休憩をするという話になったっぽく、私は自室で30分休憩。ディナサンたちはドレスの生地や道具を取りに馬車の方へ向かった。




