謝罪
「――本当にリーゼロッテには不便で不快な思いをさせてしまっていたのだな」
離れから帰ってきて、そのまま自分の部屋に戻ったヴァーレンスは、執事に命じて、離れの予算に関する調査を徹底的におこなうように命令を下した。
執事は驚きつつも、恭しくお辞儀をしてその場を去る。結果はすぐにわかった。
予算管理のハイリーは離れに割り当てられた予算を横領し、着服しており、さらには予算管理をしている立場を利用し、家内を維持するのに必要な金まで手を着けていた。彼が予算管理の立場についておよそ3年、確認できたので、2年分の横領金額が発覚した。
ヴァーレンスは証拠をかき集めて、ハイリーを問い詰め、自供させた後に司法の法へ引き渡した。これからその件について、長い裁判の末、有罪判決が下されるだろう。
貴族の金を横領した罪は、横領罪に加えて、貴族を侮辱したとして侮辱罪も適用される。少なくとも国外追放と、財産を没収されることは免れない。
ひとまず厄介ごとをひとつ片付けたヴァーレンスに次に襲ったのは罪悪感だった。
自分は事実確認もせず、噂を鵜呑みにし、彼女という人物像を勝手に決めつけて、話も聞かずに相手が悪いと決めつけてしまった。
忙しい日々を送って、事実確認をするという基礎的なことを怠った。
お互いが利害関係で婚約関係を結び、わざわざ屋敷の敷地内まで招き入れたというのに。相手を信用しきれなかった自分が招いた厄介ごとだ。
その愚かな行動が彼女をどれだけ傷つけたのだろう。そう思うと胸が苦しくなった。
ヴァーレンス自体、幼い頃はこのアルビノな容姿で好奇な視線にさらされたり、家族から迫害を受けていたのに。それをそっくりそのままリーゼロッテにもしたという事実がさらにヴァーレンスを苦しめた。
(最悪だ。これでは彼女が俺にたいして抱く不快感は納得だし、辛辣な物言いも頷ける。ただでさえ、今では帰しきれない恩を受けたというのに。これでは彼女が不憫だ)
今までの行動が彼女を苦しめていたと思うと、罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。
彼女はこんなことを今までずっと耐えていたのだろうか。世間では彼女の醜聞ばかりが知れているが、実際に会えば、すくなくとも噂通りの人間ではないことは明白だ。
勘違いと確認不足の末にこんな事態になっていたヴァーレンスは気持ちを抑えきれなく、気づいたら、次の日には彼女が住む離れの屋敷に向かっていた。




