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▼闘技大会-レイズvs.-

『さあ、やって参りました!第38回目、リバイ国名物闘技大会!!並居る猛者達を打ち倒しその頂点を極めるのは誰か!?栄誉ある栄光を手にするのは一体誰なのか!?強者達のその勇姿をとくとその目に焼き付けろ!!』


 ドミネイトコロシアム・闘技大会。

 大歓声の中、今試合開始のゴングが鳴った。

 

 総勢149名の参加者達でごった返した円形状のステージの上。

 鋭い金属音が弾け、燃え上がる闘志が火花を散らす。

 そのステージの中央付近、やや右サイド寄りの場所で煌めく金髪がキラリと光る。

 そこに立つのは、金髪に碧眼のレイズ・ローゼル。

 熱戦が繰り広げられる舞台の上で、レイズは自身へと勇んで向かって来る参加者達を適当にあしらっていた。


 初戦の形式は参加者総勢149名全員参加のバトルロイヤル。

 自分以外が全員敵の生き残りを賭けたサバイバル形式である。

 つまり、結論から言ってしまえば、闘わずとも勝手に参加者の数は減っていく。それならば何も自ら勇んで闘う事はない。数が減るのを待てばいい。そんな考えのもとに、レイズは向かって来る参加者のみを適当に相手にしているばかりでほとんどその場から動かずにいた。

 必要最低限の動きで並居る参加者達を蹴散らしていくレイズ。その姿がとある男の目に止まる。


「ほう、あんた随分と強いな」


 背後から声が掛けられた。その声の方へと振り返ってみれば、そこにいたのは上等な鎧に身を包んだ濃いヒゲを蓄えたスキンヘッドの男。男の背後には似たような格好をした如何にもな悪人ヅラを下げた男達が複数人控えている。


「なんだ?お前ら?」

「俺はフランク・セカンドバレル。ここら一帯を仕切るファミリーのボスだ。こいつらは俺の可愛い部下共だよ」


 フランク・セカンドバレルとその男は名乗った。

 恐らく、この男達は開催される闘技大会に合わせて集まって来た所謂不穏な輩の類いのようで。どうやら彼らは狙ったターゲットを数の力を利用して、複数で囲んで打ち倒しているようだった。


「はっ、大勢でつるんでの参加とは、ファミリーのボスが聞いて呆れるぜ」

「ここは言わば、戦場だ。闘いに臨むのに仲間と協力して何が悪い?」


 嘲笑を含んだレイズの言葉に対し、セカンドバレルは何を恥じる事もなくそれを認めた。どうやらそれがこの男のやり方らしい。


「チッ……」


 感じた気配にレイズは盛大に舌打ちする。

 いつの間にかセカンドバレルの部下達が背後にも回り込んでいた。

 これまで向かって来る参加者達を適当にあしらっていたレイズだったが、ここに来て主催者側から貸し出された剣へと手を掛ける。


 レイズvs.ファミリーのボス、フランク・セカンドバレル、そしてその部下複数人。 


 剣を手取っての戦闘が始まるかと思われた。

 しかし、レイズの姿を見た手下の1人がふいに首を傾げた。

 

「おい、こいつ、見覚えがあるぞ」


 そう口にした男はしばし、考えるような素振りを見せたのち、その名前を口にする。


「お前、“レイズ・ローゼル”だろ?ディーレフト国王を殺して国宝を持ち去ったって大罪人の」

「……だったらどうだってんだ?」


 偽名を使ってエントリーしたにも関わらず、男はレイズの名前を言い当ててみせた。自身の名前を言い当てられレイズは警戒感を露わにする。


「“ローゼル”!?お前があの王国転覆を図った裏切り者のローゼルなのか!?」


 部下の言葉を聞いたセカンドバレルは驚愕の声を上げた。そして、レイズの姿を上から下までまじまじと見詰める。


「王国転覆なんてとんだ悪事を働いた野郎が一体どんな奴なのかと思えば、まさかこんな貧相で貧弱そうな野郎だったとは」

「そりゃ悪かったな」


 セカンドバレルはレイズの姿を見て嘲笑した。

 確かに目の前に立つセカンドバレルはファミリーのボスらしくどっしりと構え、ゴツゴツとした鎧のような肉体を誇示していた。そして、その手下達もまたそれぞれに逞しく鍛え上げられた肉体を持っている。

 それに対しレイズは細身。その体格差たるやはレイズが更に細く小さく見えてしまう程だった。そんな筋骨隆々のセカンドバレルがにやにやと下品な笑みをこちらへと向けてくる。


「なんでも、国王を殺して国外逃亡した末、海賊になり下がったんだって?」

「………」

「しかも、今はその海賊に顎で使われてるんだってな?ディーレフト国のお偉い軍人様が随分と情けねぇ話だな、えぇ?」


 セカンドバレルはそう言ってレイズを嘲笑った。

 しかし、当のレイズは至って平常心を保つ。そんな易い挑発に乗る気などさらさらありはしなかった。だが、続くセカンドバレルの言葉にレイズの平常心は大きく揺さぶられる。


「そういえば、こいつの父親はなんとかって呼ばれてたよな?なんだっけ?ほら、あのなんとかってよ?」


 セカンドバレルに手下の1人が『劫火の英雄』と口にする。


「そうだそうだ。『劫火の英雄』。随分とたいそうな呼び名じゃねぇか。なあ?」


 セカンドバレルの言葉に部下達から笑いが巻き起こった。ひとしきり部下達と笑ったのち、セカンドバレルは改めてレイズの方へと視線を向ける。


「劫火の英雄なんて、名前ばかりでどうせ大した事なかったんだろ?何たって最後は野盗に襲われて無様に殺されたって話じゃねぇか。そんな奴を英雄だなんて聞いて呆れるぜ」


 ブチッと何かが切れるような音がした。

 如何にも挑発めいたその言葉。軽く流すつもりでいたが、セカンドバレルが口にしたその一言がレイズの思考を吹っ飛ばす。


「……おい、今何つった?」

「あぁ?」


 顔を伏せたレイズは静かにそう聞き返す。


「今何つったって聞いてんだよ」

「だから、劫火の英雄なんて大した事ねぇって言ったんだよ。その息子のお前だって底が知れてる。可哀そーに。海賊に転落した貧相で哀れな負け犬くん。父親と同じように無様な死に様を晒したくなかったらとっとと尻尾を巻いて退散し……ッ」


 瞬間、セカンドバレルの身体が吹っ飛んだ。

 セカンドバレルが全てを言い終わる前にレイズが彼を殴り飛ばしたのだった。


「てめえっ」


 部下達に身体を支えられ、セカンドバレルはレイズを睨みつける。


 確かにこの男の口にした言葉の半分は事実である。

 だが、その残り半分。それは違う。今まで隠されて来た真相が例えどうであったとしても、今更何をした所で世に出た事実は変わらない。しかし。そのせいで自身の尊敬する人間までもを悪く言われるのはとても我慢ならなかった。


「この野郎、いい気になってんじゃねぇぞっ!」


 立ち上がったセカンドバレルを中心に男達はそれぞれに手にした武器を構え直す。


“売られた喧嘩はとことん買う”……なんて、そんな主義など持ち合わせてはいなかったが、どこぞの誰とも知らない、やたら筋肉を自慢してくる連中に貧相、貧弱、負け犬呼ばわりされた挙句、自身の尊敬する人間までもを馬鹿にされた。

 これではさすがにレイズでなくとも腹が立つ。


「上等だ。この筋肉ダルマ共が」


 レイズはパンッと拳を鳴らした。


「とことん相手になってやる」


 白熱するステージの上。

 レイズは売られた喧嘩を盛大に買ったのだった。


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