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喜劇的な茶惨劇

 配役は決まった。

 各員所定の位置に着き、それぞれが期待と不安とを胸に自身の出番の時を待つ。


「さあ、準備はいいか?」


 ここ、プリフロップ国・リンプインにて喜劇的な茶惨劇の幕が今上がる。



***



 深く、深呼吸を一つして。

 即席の立ち回りを叩き込み、今、その舞台に臨む。


「だ……っ誰かーっ!」


 暗い夜の街。いまいち迫力に欠ける悲鳴が響いた。

 場所は海軍庁舎前。そこには見張りであろう兵士が二名立っていた。

 彼らは夜の町に突如響いた悲鳴を聞いてそちらの方へと視線を向ける。そんな彼らに対し、踏み出した足に思い切り力を込め、体当たりせんばかりの勢いで突撃を決めた。


「どうされたんですか!?」


 尻込みする気持ちを振り払い、凄まじい勢いで突っ込んだ身体を大きな手がしっかりと受け止める。

 褐色の肌によく似合う白髪の髪。軍服を纏った金色の瞳の彼は驚いた声でそう尋ねた。そんな彼に対し、私は若干噛みそうになりながらもこう訴える。


「た、たたたっ助けてくださいっ!!」


 緊張のあまり若干噛みそうになりながらも必死になって訴えた私。


「一体どうされたんですか!?」


 そんな私に対し、この国固有のデザインである白の詰襟に、赤と青のラインの入った軍服を纏った兵士が驚いた顔で尋ねて来る。


「変な2人組に襲われて……一人は金髪の目付きの悪いチンピラで、もう一人は黒い長髪にコートを羽織った仏頂面の男で……っ」


 早口にそうまくし立てた私の口。

 怯えるような演技をしながら私はちらりと背後を振り返る。


「あ、あの人達ですっ!」


 振り返った先。不自然に仁王立ちを決めた彼らを指し私は叫ぶ。

 私が指で差し示した先。そこには眉間にシワを寄せたレイズと相変わらずの無表情を決め込んだフォクセルの2人の姿があった。


「あの人達の仲間に友達が拐われて……川辺の側の寂れた建物に連れて行かれてしまったんです!」

「なんだって!?」


 その台詞を聞いた金色の瞳の彼は私とレイズ達とを交互に見る。

 重要な台詞を言い終えたのを確かに確認し、レイズとフォクセルはまるで何事もなかったかのようにくるりと踵を返した。


「待て!奴らを追え!逃すな!!」


 金色の瞳の彼は大声で号令を放った。その声を聞きつけ、庁舎内から彼と同じ軍服を纏った数人の兵士達が駆け付けて来る。私に「ここにいるように」と言い残し、彼は数人の兵を引き連れレイズとフォクセルの後を追って駆け出した。


 一人、ぽつんと取り残された私。

 颯爽と逃げるレイズとフォクセルの後を軍服に身を包んだ海軍兵がわらわらと追い掛けていく。そんな勇ましくも何も知らない彼らの姿を私はなんとも言えない気持ちで見送ったのだった。


 ほんと、嘘吐いてごめんなさい。


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