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紫煙

「水15本で1セット、それが2つと各種缶詰20個入りが3箱。あ、コレ中身はテキトーですんで。あと消毒用アルコールと蛍光灯、ランプ、ろうそく。出口前に酒が5本あるんでそれも持って行ってください。それじゃこちらが提示した物品の確認をさせて頂きますね。すまない、確認を」


「はい」


 10月某日、深夜1時。都心から数キロ離れた工業地区内の第二倉庫にて。

 東京を活動域に運び屋、もとい行商人として大量の物資を蓄え、ときに取引を行い生活している青年、渋澤カズキは、関東・関西地方を主軸に全国を暴力と脅しで牛耳る極道組織『豪王会』の組員との商談を行っていた。

 渋澤は新しく見習いとして仲間に加わった青年に取引の内容物の確認を指示し、1メートル程後方で取引の監視を行っている仲間へ銃の薬室へ弾薬を装填するよう合図した。渋澤も懐から自身が所持するM38を取り出しシリンダーに弾薬が装填されているかを目視確認する。眼前の男が何か怪しい動きをしようものなら即座に先手を打つために、M38の引き金に指はかけずとも離さなかった。


「確認終わりました。38口径弾56発、自動拳銃2丁、9ミリ弾45発、日本刀2振り、短刀1振りです」


「・・・ありがとう。弾薬は口径ごとに仕分けして数の確認を。武器は保管庫に。お見送りを」


「車まで荷物をお持ちします。台車の用意を」


「はい」


 渋澤の仲間である男たちがそれぞれ自分の仕事を率先して担い、商談は事なきを得た。今でこそ強面のヤクザと対等に話せるが、以前の渋澤では到底不可能だろう。渋澤はふぅと一息つくと右手のM38のシリンダーから弾薬を排夾し、そのままズボンのポケットへ押し込む。趣向品として現在では価値が高くなったタバコに手を伸ばし、残り半分を切った中の一本を抜き出し口に咥える。渋澤はまだ未成年者だが、法規制がとうに機能しなくなった現在では誰も彼を罰するものはいない。防衛手段で実銃を持ち歩き、時には非人道的行為を経験していれば、青少年保護育成条例なんてものを気にしなくなるだろう。渋澤はガスライターより長持ちする愛用のジッポライターを取り出し、カチンと金属質の心地いい音色を響かせ火をつけた。

 タバコの先端に炎を付け、軽く吸い込むと楽に着火できる。すぅと煙を咥内に吸出し、ひと呼吸いれてから乾いた空気に吐き出す。タバコの先端からは細く紫煙がたなびいている。机に置かれたM38の短い銃身に指を這わせ、もう一度タバコをふかした。


 パンデミックが全世界で発生し、国の関税は機能しなくなった。おかげで大陸から武器や麻薬などが流入し、以前から大陸の裏社会にツテがあった豪王会は武器を大量に仕入れ武装している。まともにやっては勝ち目がない、そう感じた渋澤はかき集めた食料品や必需品を材料に豪王会と取引することを選びんだ。ハイリスクな賭けだったが、最優先で食料を継続的に提供することを条件に何とか契約をもぎ取り、現在は豪王会から購入した銃や武器を仕入れ、食料と引き換えに武器をShangri-laに流している。穏健派のShangri-laに武力を与え、いつ暴力的な行為に出るかわからない豪王会に対抗するための自警団のような存在にしようと渋澤は企んでいたからだ。


 渋澤は仲間にShangri-laへの提供用に武器を梱包するよう指示し、商談の緊張を吐き出すように一服した。

 独特の苦みとエグみが広がる。

 渋澤は大して好きでもないのにタバコを吸い続けている。カッコつけて背伸びしていたいという虚栄心は自分でも自覚している。渋澤は、真面目だった自分が道を逸れていっている事実をひそかに悲しんだ。





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