第七話 見抜かれた覚悟と託された背中
次回は10月14日(水)AM1:00に第8話【マフィアとの交渉】を更新予定です!
「やっぱり納得いかない!」
アナは急に立ち止まり、怒りを滲ませながら三人を問い詰めた。
「本当にシャルを囮にしてよかったの!?もしシャルが捕まっちゃったらどうするの!?」
「アナちょっと落ち着け」
「ウィルはどうしてあんな風に突き放すような言い方が出来るのよ!?シャルは私たちのために囮になってくれたんだよ!」
「じゃあどうしろって言うんだよ!今から戻ってシャルを助けに行くのか!?」
アイラックは苦笑いをしながらアナに語りかけた。
「アナちゃん。君は大きな勘違いをしているよ」
「それは……どういうことですか?」
アナは涙の滲んだ目でアイラックを睨みつけた。
「シャル君は皆を助けようと覚悟をした。その覚悟をウィル君は無碍にしたくなかったんだよ。……そんな二人の覚悟を見てしまったからね、私もそれに応えなきゃいけないと思ったんだ。そうだよね?ウィル君」
ウィルは俯いて歯を食いしばった。
「シャルは敢えて俺たちを見下すような言い方をしたんだ。自分が頭良いとか、魔法が出来るからお前達よりも上だみたいな言い方して」
「でもそれは事実じゃない!シャルがいなかったら私たちはここまで来れてない!それに忌み子だからってシャル君を犠牲にすることないでしょ!?」
ロッティも納得がいっていなかったらしく、心のモヤモヤを吐き出すようにウィルに噛み付いてきた。
「お前らはシャルをわかってねえ。あいつは……俺たちにこういう話をさせたくなくてああいう態度を取ったんだ」
「……それってどういうことよ…?」
「あの状況では一刻も早く行動を起こさなきゃいけなかった。だから俺たちに考える暇を与えないようにしたんだ。自分が悪者になることで反論の余地を無くさせたんだよ。忌み子って言葉まで使いやがって。こっちはもう気にもしてねえってのに」
アナとロッティは言葉が出てこなかった。
シャルもウィルもそこまで考えて動いていたことに気付けなかったのだ。
「だから俺もシャルの言葉に乗っかったんだ。ったく、あいつは演技下手なんだよ!意図がバレバレだぜ!そんなシャルの覚悟を一番年上の俺が踏み躙ることなんて出来ねえだろうが!」
「……アイラックさんも分かってたんだ……」
アイラックは静かに頷く。
アナとロッティは思わず泣き出してしまった。
そこまでの二人の覚悟を読み取れなかったこと、そして目の前のことしか考えることが出来ていなかったことを恥じた。
「アナちゃん、ロッティちゃん、君たちはまだ10才を過ぎたあたりだろう?子供なら気付けなくて当然さ。大人でも気付けないんじゃないかな?単純にシャルとウィルが凄いんだよ」
ウィルは三人に顔が見えないように後ろを向いて静かな口調で語りかけた。
「シャルなら大丈夫だ。あいつが一人馬車に乗った時、笑ったように見えたんだ。なんていうか…今の状況を楽しんでいるような、自分の力を信じているような、そんな目をしてた。だから大丈夫だ」
ウィルは肩を振るわせながら拳を力強く握っている。
「俺はシャルを信じる。あいつの覚悟を無駄にしないためにも、俺たちはなんとしてもロングボルト領に行くんだ」
決意を新たにしたウィル達四人は改めて進み始めた。
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シャルは順調に馬車を走らせていた。
東に馬車を進めながらも、目的の街に到着するまでに追いつかれてはいけないし、見つからずに逃げ切ってもいけない。
だからこそいくつかの仕掛けをしていた。
宿場町を出る時は、フードを目深に被り、いかにも訳ありといった雰囲気で、門衛に敢えてサンロータス領までの道を尋ねた。
そうすれば、騎士が聞き込みに来た際におおよその方向を誘導出来る。
そして目立つように街道を走り、すれ違う行商人がいれば、目の前で街道から逸れていくように走った。
これで行商人達はあっちに行ったこっちに行ったと間違った情報を流してくれる。
さらに葡萄酒を垂らした服を破り街道に捨てた。
シャル達が着ている服は特徴的だし、血が付着した服が捨てられていれば嫌でも目につく。
そこから勝手に勘違いの推測をし、時間をかけながらシャルが向かう方向に誘導出来ると考えた。
その結果、シャルの作戦がものの見事にハマり、騎士達をタイミングよく誘導することに成功したのである。
シャルは作戦の第一関門を無事突破した。
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シャルは半日かかってようやく目的の街に着いた。
もうすでに日が落ちて星々が輝いている。
敢えて目立つように馬車を止め、まずは露店で串焼きと果実水を買い、喉を潤し空腹を満たした。
これで落ち着いて次の計画に移れる。
物陰に隠れながら街の入り口を観察していると、徐々に馬蹄の音が近づいて来る。
それもかなりの数が近づいていることが分かった。
シャルは上手く追っ手を引きつけられたことに安堵し、路地裏へと進む。
角をいくつか曲がると、いかにも怪しい雰囲気が漂い出した。
シャルはゴクリと唾を飲み込むと、恐怖心を押し殺しながらさらに奥へと進んでいく。
すると後ろから声をかけられた。
「ようようおちびちゃん!こんなところで何をしているのかな?」
いかにも悪そうな雰囲気をしている男達が六人でシャルを取り囲んでいた。
(よし!釣れた!)
「あんた達はピトロスキー一家の人たちかい?」
「ああ?俺たちを知ってるってか?おいガキ、お前何者だ?」
この街にやって来る前、シャルはアイラックにこの国のマフィアについて確認をしていた。
それは接触を図るためであり、シャルの作戦には必要な要素だったのだ。
それがこの街に来た理由である。
「おれはあんたたちのボスと交渉しに来たんだ。ボスのところまで連れていってくれないか?」
「おいガキ、調子に乗るんじゃねえぞ!」
シャルは舐められないように『僕』から『おれ』へと自分の呼び方を変える。
あくまでも対等な立場で交渉を進めるためである。
一番ガタイのいい男に凄まれている時、下っ端と思われる男がこちらに走って来た。
「兄貴!町中近衛騎士だらけだぜ!何か大捕物でもあるかもしれねえ!俺たちも身を隠した方がいいんじゃないか?」
「おいガキ、あいつらが探しているのはお前か?」
「さあな。でももしそうだとしたらどうする?」
シャルは男達に囲まれ既に逃げ場はなく、内心心臓が飛び出る程の恐怖と焦りに押しつぶされそうになっていた。
「近衛騎士が動いてるってことは、こいつは王族絡みのガキだ。王族に目を付けられるのも御免だし素直に差し出すか?褒賞が貰えるかもしれねえぜ?それとも消しちまうか?」
男達は笑いながら鋭い目つきでこちらを睨んでくる。
流石にマフィアを舐め過ぎていた。
いくらなんでも、こんなに簡単に殺しを仄めかされるとは考えていなかったシャルは、極度の緊張で手足が震えそうになる中、前世の交渉術でハッタリをかます。
「あんたらは裏稼業の人間だろ?あんたらは騎士におれを突き出せないはずだ。顔を晒したくないはずだからな。それにおれをただ殺しても死体処理の手間がかかるだけで旨味が何もないだろ?だがもしおれを仲間に入れればあんたらの組織を儲けさせてやる。悪い話じゃないはずだ」
シャルは目を逸らさずじっと男の目を睨んだ。
男はまるでシャルを値踏みしているようにゆっくりと観察する。
静寂に包まれる中、シャルは心臓の鼓動が大きく早くなっていくのを感じていた。
極度の緊張感で一体どれくらいその状態が続いたのかは分からない。
十分にも一時間にも感じる時間が過ぎた時、男は口を開いた。
「面白え。その胆力と度胸は認めてやる。ボスの所へ連れていってはやるが、その後はボス次第だ。せいぜい上手くやるんだな。付いて来い」
シャルはその返答を聞くと、周りに聞こえないようにゆっくり息を吐き、男達の後ろをついていく。
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男達に囲まれながら路地裏をさらに進みアジトへ到着すると、シャルは扉を潜る前に一度大きく息を吸い込み、気合いを入れ直す。
(さあ、どこまでハッタリが通用するか)
第二関門はクリアしたが、ここからが本当の勝負である。
シャルは敢えて目つきを鋭くし、最後の関門に挑むべく一歩を踏み出した。
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まだまだ拙い文章ですが、これからもっと上手い文章を書けるように努力していくので、応援宜しくお願いします。




