第六話 偽りの積荷と孤独な轍
次回は10月13日(火)PM13:00に第7話〜シャルの作戦〜を更新予定です!
シャルは急いでアイラック達の元へ向かった。
「まずい。追っ手がすぐそこまで来ています」
「本当かい!?もう少し余裕があると思ったんだが……」
アイラックの計算では、追っ手がかかるまでもう少し時を要すると思っていた。
それでも安心出来ないため、休憩を減らし、強行軍過ぎる日程で進んできたはずだった。
「どうやらこちらの見積もりが甘かったようだ。もう少し領内を探すのに時間がかかるかと思ったが、副団長あたりがすぐに領外に追っ手を放ったのかもしれない」
こちらは馬車が1台でしかも子供とはいえ四人もいる。
逆に追っ手の騎士達は当然馬一頭に対し一人が騎乗しているだろう。
どう考えても速度も機動力も及ばない。
シャルは目を瞑り思考を巡らせ、覚悟を決めた目で言った。
「僕に策があります」
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「おい。ここに子供が四人来なかったか?」
「い、いえ、見かけていませんよ」
「隠し立てするなよ。そいつらは犯罪を犯し脱走した逃亡者だ。もし嘘を言っているならこの場で斬るぞ」
「そんな!嘘は言っていませんよ。……そ、そういえば、ちょっと怪しげな男が急ぎ足で買い物を済ませているところは見ました」
オリバー配下の騎士達は街道を通る行商や各街で聞き込みをしながら進み、この宿場町に立ち寄っている可能性が高いと踏んでいた。
「怪しげな男?」
「え、ええ。普段この街に立ち寄る客とはちょっと雰囲気が違いましてね、印象に残っているんです」
「なるほど」
騎士の男はすぐに各地に散らばり捜索している騎士達に向けて伝令を走らせた。
「とりあえずこの街を捜索する。小さな痕跡も見落とすな!」
騎士達はウォルトレンの指示で、別邸のある領地からアルフォードと親交のある貴族領地の方角に捜索範囲を絞っていた。
そしてその方向を扇状に広がりながら捜索していたのである。
その間、常に伝令を行き来させながら情報を集め、この宿場町に目星をつけたのだが、どうやら当たりだったらしい。
しばらく宿場町を捜索していると、指揮を取っていた男に部下から報告が入った。
「隊長!荷台に布を被せた怪しい馬車がおよそ一刻程前に東に向かったそうです!」
「ふむ。東でアルフォード団長と縁のある貴族だと誰の領地がある?」
「ここから東ですとサンロータス子爵領になります。おおよそ二日程の距離です」
「よし。ここで隊を半分に分ける。まずはその東に向かった馬車を追え。残りの半数はこの街を引き続き捜索しろ。そして援軍が到着次第ここからまた扇状に捜索を開始する」
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その頃、宿場町から数百メートルほど離れた場所の林に、アイラック達は身を隠していた。
「き、騎士達があんなに集まってきてる……」
ウィルは双眼鏡を覗きながら呟いた。
「ほ、本当に私たち大丈夫なの?」
ロッティは震えながら不安を口にし、アナは目を強く瞑りながら両膝を抱えていた。
「正直分からない。でも騎士達に動きがあるまでジッと我慢するしかない。こちらの林に気を向けないでいてくれるといいんだけど……」
アイラックもただジッとしているしかない現状に緊張感が高まっていた。
そんな時双眼鏡で宿場町の様子を伺っていたウィルが小声で言った。
「おい!騎士達が東に向かって駆け出したぞ!シャルの作戦通りになった!」
「ちょっと双眼鏡をかしてくれ」
アイラックは宿場町の様子を確認し、もう少しここに身を隠すよう判断する。
「恐らくまだ宿場町には騎士が残っているはずだ。だから夜になるまではここに留まるよ」
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日が傾き始めた宿場町には、他の街を捜索していた騎士達が集結していた。
「よし、これで全体が揃ったな。このまま俺の第一小隊は東に進む。第二小隊と第三小隊は北東へ、第四小隊と第五小隊は南東を進め。そして第六小隊はあそこの林を一晩かけて捜索しろ。日が登ったら第一小隊と合流だ」
「「「はっ!!」」」
隊長の指示により全隊が散会する。
林の中ではウィル達が交代で見張りを行い、アイラックは今後の行程を練っていた。
そして見張り中だったロッティが焦った表情で告げる。
「騎士達がこっちに向かってくる!」
少しずつ馬蹄の響く音が大きくなり、林に近づいて来る。
もはやここまでかと思われた時、遠くから声が響いてきた。
「伝令!伝令!第六小隊は急ぎ東に馬を走らせよ!標的発見!標的発見!全騎士は東に向かえ!」
林の捜索が始まる寸でのところで騎士達は踵を返し東へと向かっていった。
馬蹄の音が遠ざかると、息を潜めていたウィル達は大きく息を吐き出した。
「ぷはーーー。どうなることかと思ったぜ」
「ほんと心臓に悪いわね」
「でもとりあえずこれで退路は確保できましたね」
本当にギリギリだった。
もう少し伝令が来るのが遅れていたら見つかっていたかもしれない。
「よし、それじゃあこちらも移動を開始しよう」
アイラックは荷物がパンパンに詰め込まれたリュックを背負い、子供たちを先導し始めた。
騎士達が東に向かったと言ってもまだまだ安心は出来ない。
アイラック達は林を抜け、南に向けて歩みを進め始める。
林を抜けると小さな街道が闇に吸い込まれるように伸びていて、まるでこれからの人生を示唆しているようだった。
しばらく進んで気持ちが落ち着いてきたアナは満点の星空を見つめ誰にも聞こえない声で呟いた。
「シャル……必ず無事でいてね」
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――――三刻ほど時間は遡る。
「僕に策があります」
シャルの覚悟を決めた目を見たアイラックはため息をついた。
「シャル君。私はその策に反対だ」
「アイラックさん、僕はまだ何も言っていませんが……」
アイラックはやれやれと言った表情でこちらを見つめて来る。
「どういうこと?何をするの?」
ロッティが不安そうに聞いて来る。
「シャル君は自分を囮にしようとしているんだ」
アイラックには全て見透かされていた。
「それしか方法はありません」
子供達三人は目を見開き固まっている。
「アイラックさんは皆を案内しなければいけない。だから僕たち四人の中で誰かが囮になる必要がある。その中で一番その役を遂行出来る可能性が高いのは僕だ」
「どうしてそう言い切れるんだい?」
「僕は自分で言うのもなんだけど、皆んなよりも機転が効くと思います。それに今は無理だけど魔法も使える。つまり一人で囮になったとしても、頭の回転が早く、自衛も出来る僕が適任ってわけです」
シャルは自分以外に囮役は務まらないと、敢えて見下した言い方をした。
「それに僕は忌み子だしね。どこに居ても僕は邪魔な存在だ」
誰も反論出来ず押し黙ってしまう。
「分かった。お前が囮になることに文句はねぇ」
「ちょっとウィル!どうしてそんなこと言うの!他に方法があるかもしれないじゃない!」
「そ、そうよ!いくら忌み子だからって、そこまで毛嫌いすることないじゃない!一緒にここまで耐え抜いてきたのよ!?」
ロッティとアナはウィルの意見に反論したが、ウィルは引かなかった。
「うるせぇ!そいつが自分から言い出したんだ!それに時間がない今の状況じゃシャルの言う通り誰かが囮になる以外に方法はあるのかよ!?」
アイラックはシャルとウィルのやり取りを見て覚悟を決めた。
「わかった。囮役はシャル君に任せるよ」
「アイラックさん!そんな!」
アナは納得いかないと訴えたが、その声をシャルが遮りアイラックに問いかける。
「それで、他にも逃げる候補地があるんですよね?」
「シャル君……どうしてそれを?」
「なんとなくそう思っただけです。アルフォードさんがどんな人かはまだ知りませんが、僕たちを逃したとバレれば首が飛ぶどころの話じゃありません。だからこそ入念に計画し、各貴族に根回しを行い今回に備えたのでしょう?であれば、追っ手に追いつかれた場合や、サンロータス領に行けなかった時の保険は掛けてあると思ったんです」
「……君は凄いな」
アイラックはふっと笑みを浮かべて観念したように次の行動計画を語り始めた。
「僕たちが向かうのは南にあるロングボルト辺境伯領だ」
「ちなみにどうして今まで黙っていたんですか?」
「ひとつは、ロングボルト辺境伯領は遠い。追手を巻きながら辺境伯領まで行くのはリスクが高過ぎるんだ。もうひとつは、もし追っ手に追いつかれて君たちの誰かが尋問されてしまった時、情報を知らない方がリスクを低減出来ると思ったからだ。つまり最後の手段だったわけだよ」
理由を聞いて納得したシャルは続けて作戦を伝える。
「なるほど。わかりました。では、アイラックさん達はそっちに向かって下さい。その代わり一旦徒歩で向かってもらいます。その後どこかで馬車を調達して下さい」
「待てよ!じゃあシャルが馬車をひとりで使うってことかよ!?」
ウィルは怒鳴り声をあげてシャルの胸ぐらを掴んだ。
「そうだ。僕は荷台にウィル達を乗せているように見せかけて東に全力で馬車を走らせ、騎士達が僕を追って来るように誘導するつもりだ。もし指揮官がバカじゃないなら確証を持たない限り、捜索範囲を狭めないはずだし、どこにでも展開出来るように騎士の半数はこの街に残していくと思う。僕は時間を稼ぎつつ、敢えて見つかるように動く。だから馬車が必要なんだ」
シャルの真剣な目にウィルは思わず目を逸らした。
そして優しく笑いながらシャルは続けた。
「さすがに僕たちが目の前に居ると分かればそこに全兵力を向けると思う。その隙に機を見て逃げるんだよ」
アイラックはシャルの計画に内心驚いていた。
アイラックが最後の手段として考えていた策と全く同じことを口にしたからだ。
囮役がアイラック自身だったこと以外は。
「では僕は早速東に向かいます。アイラックさんたちは僕が出た後に街を出て、林に身を隠して下さい」
「分かった。シャル君も必ず来るんだ。辺境伯領で待っているよ」
「お気をつけて」
シャルは手綱を握り、次なる一手を考える深い思考の中に落ちていった。
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まだまだ拙い文章ですが、これからもっと上手い文章を書けるように努力していくので、応援宜しくお願いします。




