↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼炎の太陽は影月に嗤う  作者: kobito
第二章:「旅立ち編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/23

第十七話 嘲笑のギルドと怒りの導火線

月・水・金・日の19:00に更新です




 シャルがキーデン山を下りてから二日。

すでに日が傾き始めていた。


(そろそろパッフルの街が見えてくるはずなんだけど……)



 サンロータス領までは徒歩で約一週間かかる。


焦る旅ではないし、これからのことを考え、まずは路銀を確保しようと考えていた。


多少のお金はアルフォードから貰ったのだが、あとは自分で活路を見出せとのことだった。





――――





「サンロータス領に向かう前に、ある程度の金は確保しておけよ」


「確かにお金があった方が何かといいですよね」


「ここに住んでいるから野宿は問題ないと思うが、それでも山を下りれば頻繁に狩りも出来ないし、食事代やら何やら金はかかる。それにシャルは身なりが少しボロボロだからな。服も買った方がいい」


「確かに……でもどうやってお金を稼いだらいいんですか?師匠みたいに傭兵とか?」


「傭兵も悪くないが、紛争や大規模な戦闘が主な依頼だから、最低でも二週間は縛られてしまう。それに比べて冒険者は一日で終わる仕事も多いし、戦いも魔物が主だから今のシャルには合っていると思うぞ」


「確かに人と殺し合うのはしたくないです。最初は狩りをするのも抵抗ありましたから」


「じゃあやっぱりシャルは冒険者だな」


「冒険者になるにはギルドとかに登録する必要があるんですよね?」


「そうだ。サンロータス領までの道程で、ここから一番近いギルドはパッフルの街だ。まずはそこに行け」




――――




(さて、ようやく到着した。まずは冒険者登録をして明日依頼を受けるか)


シャルはパッフルの街に到着すると、早速冒険者ギルドへと向かった。



しかし、初めての街に加えて地図もない。


目立つ場所にあるだろうと思い、大通りをゆっくり歩いてみたのだが見当たらなかった。



 仕方がないので通りを歩いている人に道を尋ねてみると、耳に気付くなり無視をされるか、汚い言葉で罵られた。


(初めて差別らしい差別を受けたけど、こんなに露骨に態度に出すのか……なんかムカつくな)



それを覚悟で耳を出していたわけだが、早くも心がささくれ立ってしまう。



 すると、一人の少女が目の前に現れた。


小柄な体格で可愛らしい雰囲気を持つ子だ。



「あのう……冒険者ギルドをお探しですか?」


「あ、ああ、そうです」


シャルは急に話しかけられたため少し驚いたが、相手に悪意はなさそうだったので少し話をしてみることにする。



「冒険者ギルドはこの通りを進んで、あそこの突き当たりを右に曲がってください。そこから見える一番大きな建物が冒険者ギルドです」


「ありがとうございます。それにしてもどうして教えてくれたんですか?俺はハーフエルフですよ?」


シャルは善意なのか、他に思惑があるのか測りかねた。


シャルを何か罠に嵌める気なのかもしれないし、道を教えた報酬として金銭を求められるかもしれない。



そんな疑いの心を少女は読み取ったのか、しどろもどろに答える。


「あ、いえ、その、困っているようだったので。……私も亜人なので、気持ちが分かるから……」



急に話しかけられて気付かなかったが、確かに尻尾が生えている。


前世で尻尾が生えている人間なんてコスプレでしか見たことがなかったから現実味が湧かないが、それ以外は普通の人間と変わらないようだ。



「そうでしたか。それはご丁寧にありがとうございます」


「よかったらギルドまで案内しますよ?ちょうど私も行くところだったので」


「……それは助かります。宜しくお願いします」



シャルはその少女が善意で道を教えてくれていると感じたため、素直に少女についていくことにする。


そしてギルドに到着するまでの間、簡単に冒険者のことについて教えてもらった。



 冒険者はFランクから始まり、E、D、C、B、A、S、SSと、依頼の達成回数、達成率、その他の条件を満たすことによって上がっていく。


Cランクに上がるとようやく一人前と認められ、食事処の割引や宿屋の割引といった福利厚生が受けられるようになるのだそうだ。


しかし、多くの者がこのCランクから上には上がれない。


Bランクになると、依頼の難易度がぐっと上がり、それなりの実力が求められるからだ。


CランクとBランクの間には見えない大きな壁が立ちはだかっているらしく、名を上げたい冒険者はまずはBランクを目指すらしい。



「そういえばお名前はなんて言うんですか?私はセシリアって言います」


「俺はシャ……ラヴィ」


「宜しくです!ラヴィさん!」


「ラヴィでいいですよ」


「じゃあラヴィって呼びますね。私のこともセシリアと呼んでください」



そんな会話をしていると冒険者ギルドに到着した。


セシリアは緊張した面持ちで扉の前で立ち止まったが、シャルは遠慮なく扉を開ける。



 中に入るとカウンターが設置されており、数名の受付嬢が冒険者の対応をしていた。


ギルドの中には酒場兼食堂が併設されているようで、夕方の時間帯ということもあり、依頼を終えた冒険者達が一仕事終えて食事を取っていた。



カウンターへ移動すると、ちょうど前の冒険者の対応が終わったところだったようだ。


「ようこそ!冒険者ギルド、パッフル支部へ!本日はどのような御用向きでしょうか?って、ハーフエルフじゃない。ここになんの用かしら?」


案外接客はちゃんとしているんだなと思った矢先、ハーフエルフと分かった途端に受付嬢の態度が変わる。


シャルは少しカチンときたが、まずは冒険者登録を済ませることにした。


「冒険者登録をしたいのですが」


「じゃあこの紙に必要事項を書いて」



シャルは溜め息を吐きながらセシリアに質問する。


「セシリア、冒険者ギルドの受付ってこんなに態度が悪いのか?」


「あ、いや、それはどうでしょうか?……私もこんな感じの対応だったので……」


セシリアは居心地が悪そうに俯きながらボソボソと話す。



「あの、聞こえてるからね?なんか文句あるわけ?」


「ああ、聞こえるように言ったんだよ。文句があるからな」



シャルはこの街に入ってからかなりイライラを抑えていた。


理不尽な目に遭っても抗ってやると息巻いて、耳を出す覚悟をしたのだが、想像していた以上に気持ちがザワつく。


前世と違い、修行で強くなったことも影響しているのかもしれない。


何かあっても何とか出来ると思っていた。


まるで今までの出来事に対する当て付けかのように、つい強気に反論してしまったのだ。



(ああ……ついカチンときて言ってしまった。あんなにかっこ良く師匠と別れたってのに、すでに師匠に合わせる顔がない……)


師匠との修行で、てっきり心も相当強くなっていたと思い込んでいたが、そうではなかったらしい。


師匠の顔を思い浮かべながら、シャルは肩を落とした。



「は!?何よその態度!ハーフエルフの分際で!私が冒険者登録をさせないって言えばあんたは冒険者になれないのよ!分を弁えなさい!」


(……マジかよ。……差別する理屈が前世のパワハラ上司みたいだな)


多少冷静になれたシャルだったが、受付嬢が大声を出したせいで、酒場にいる冒険者達がゾロゾロと集まってきた。



「おいおい、どんなトラブルかと思えばセシリアじゃねえか。仕事も碌に出来ねえくせに迷惑だけはきっちり持ってくるんだな」


シャルはこの言葉でセシリアがこの街でどのような扱いを受けているか理解した。



「それに一緒にいるのは忌み子じゃねえか。初めて見たぜ!お前は存在自体が罪なんだってな?だったら俺が裁きを下しても問題ねえよな?」


「ガンビーやめておけって。あいつヒョロヒョロじゃねえか。装備も碌にしてねえし、冒険者登録の最中みたいだぞ?あんな素人相手にしたらイジメになっちまうぜ?」


男達はケラケラと笑いながら、シャルを取り囲んだ。



「ラ、ラヴィ!今日はもう帰りましょう!この人たちに構う必要ないですよ?特にあのガンビーって人はこのギルドでも有名なCランクなんです!もうすぐBランク昇進って噂もある強い人なんです!」




セシリアの声が遠く聞こえるーーー。



シャルは緊張して体が震え、調子に乗っていたことを自覚した。


心の中では怒りが湧き上がり、ぶちのめしてやりたい気持ちはあるのだが、実は喧嘩らしい喧嘩をしたことがないため恐怖心が出てきてしまったのだ。



殺されかけて死線を超えたことはあっても、それはアイリーの死や自分が殺されるかもしれないという極限の状態にあったからで、無我夢中だった。


毎日師匠と修行をしていた時も、アルフォードが手加減をしてくれていたため、必要以上に傷つけられる心配はなかった。



しかし今回は違う。


明らかな挑発。


殺意は感じず、あるのは純粋な悪意。



命が懸かっていないからこそ、リミッターが外れてくれない。



それに相手の人数が人数である。


アルフォードとの修行でかなり強くなったとはいえ、目の前にいるのはランクの高い冒険者だ。


もしかすると自分よりも強いかもしれない。


そう考えると、前世でいじめられていた時のように、袋叩きにされてしまうのではないか?と少しずつ恐怖に支配され始めていたのだ。



「おいおい待てよセシリア。これからが楽しいんじゃねえか。あいつと遊んでいるところを見物させてやるからこっちに来い」



セシリアはガンビーに腕を引っ張られたが、その時、シャルは反射的にガンビーの腕を掴んでしまった。


「なんだあ?その手は?」



(やばい、腕掴んじまった!どうすればいい!?どうすればいい!?)


シャルの心臓がどんどん高鳴ってくる。


しかし過去の辛い記憶が湧き上がってきたせいで、シャルはすぐに男の腕を離してしまう。



同時にセシリアはガンビーの腕を振り払おうとした。


「やめてください!離して!」


「うるせえ!てめえは黙ってろ!亜人が調子に乗るんじゃねえ!」





―――パシンッッッ!





男はセシリアの頬を平手打ちした。


頬は赤くなり、口元から少し血が出ている。


セシリアは静かになったが、俯いて歯を食いしばり、耐えていることが分かった。





――――それを見た瞬間シャルの怒りが一気に臨界点に達し、恐怖を凌駕した。


(ああ……高校の時もこんな風に取り囲まれて、嫌だと言っても離してもらえなかったんだよな……)


前世の自分とセシリアの姿が重なる。





ガンビーが寒気を感じて後ろを振り返ると、いつの間にか目の前にシャルが立っており、腕を捻り上げられた。


「痛っ!いてててて!おい!何すんだてめえ!」



「セシリア、ごめん。少し避けてて」


シャルはボソッと呟くと、男の腕を捻り上げたまま冒険者達を睨みつけた。


「おい……俺とセシリアがお前達に何をした?……一体どんな迷惑をかけた?」


(俺はこういう理不尽に抗うために強くなったんだろう?)



シャルは低くドスの効いた声で問いかける。


同時にシャルからは殺気が溢れ出ており、その殺気に当てられた冒険者の一部は身動きひとつ取れず、声を発することも出来ない。


目を見開き問いかけるシャルの姿に、ギルド内の空気は緊張感を増していった。


「お前ら、無事で帰れると思うなよ?」





本日から第二章がスタート!

続く第18話は10月28日(水)19:00更新です!


少しでも続きが気になりましたら、下にある【ブックマークに追加】ボタンや【評価(★★★★★)】で応援して頂けると執筆の励みになります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。