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蒼炎の太陽は影月に嗤う  作者: kobito
第一章:【少年期編】〜過酷な運命と太陽の旅立ち〜

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第十四話 母の遺産と師の背中

次回は10月17日(土)PM13:00に第15話を更新予定です!




 シャルが強くなりたいと願うと、アルフォードは木の棒を差し出してきた。


「まずは素振りだな」


「え?これは?」


「強くなりたいんだろう?私に教えられるのは剣術だけだ。だから毎日これを使って素振りをするんだ」



 アルフォードはシャルが眠っている間に森へ入り、ちょうど良い大きさの棒を見つけ木剣を作っていた。


「ちょっと形はいびつだがな。素振りをするくらいは問題ないだろ」


「あ、えっと、……ありがとう。……でもどうして?」


「シャルなら強くなりたいって言うんじゃないかと思ったんだよ」



シャルはアルフォードの作ってくれた木剣を見つめながら質問した。


「アルフォードさん……僕、ワガママを言ってもいいかな?」


「なんだ?」


「僕、ロングボルト領に行くのやめるよ」


「……そうか」


アルフォードはただ肯定してくれた。



「だから暫く僕に修行をつけてほしい。僕が一人でも大丈夫に」

「わかった」


シャルの言葉を遮るようにアルフォードは答えた。



「シャルが一人でも大丈夫になるまで、抗う力がつくまで、私が面倒を見てやる」


そう言って、シャルの頭を優しく撫でた。





◾️◾️◾️◾️◾️





 修行が始まって1ヶ月が経つが、ひたすら木剣を振る毎日だ。


木剣を上段に構え、振り下ろす。

ただこれだけ。


シンプルな動きなのだが、ただ振るだけではなく、神経を剣の切先に集中させてこの動作を行う。


簡単に出来る動きを反復するだけだからこそ、案外違うことを考えてしまったり邪念が浮かんでしまうのだが、集中力が切れたり、型がズレると、都度アルフォードから叱責を受けた。


「ほら!また型が崩れてるぞ!ちゃんと剣に集中しろ!」



(確かに修行とは言ったけど、本当にこれだけでいいのか?)


半信半疑になりながらも、素振りだけの日々はさらに数ヶ月続いた。





◾️◾️◾️◾️◾️





 修行を開始して一年が経つ頃には、素振りに加えて持久走と筋トレも追加された。


とにかく基礎体力を付けることが目的なんだそうだが、負荷に慣れてくると重りを追加されるのだ。


木剣は太く長くなり、背中には石を入れたリュックが当たり前になった。


そのおかげで体力が向上していることは多少実感できるのだが、毎日体力の限界まで追い込むのはなかなかにしんどい。



 そんなある日、今日の修行を開始しようと思っていたところにアルフォードが声をかけてきた。


「シャル、今日から別の修行に入るぞ」


「ん?師匠、じゃあ今日は何をするんですか?」



シャルは修行が始まってからアルフォードのことを師匠と呼び始めていた。

それと同時に言葉遣いを正したのは、教えを乞うには礼儀からだと思ったからだ。



「今日は身体強化魔法を教える。ついて来い。」


「……魔法?」


魔法と言えば、火や水の魔法、もしくは魔印を刻むような闇魔法しか知らない。


(身体強化って、体の機能が向上するってことだよな?もしかして、めちゃくちゃ強くなれるんじゃ……?)


シャルの心はようやく強くなれる予感と好奇心で満たされていた。




――――




 シャルが修行を毎日続けたせいで、地肌が露出してしまった少し広めのスペースにやってきた。



「まずは私の剣を受けてみろ。構え!」


「はい!」


シャルは木剣を構え集中する。



アルフォードは軽く膝を落とすと、地面を力強く蹴り込み、物凄いスピードで袈裟懸けを仕掛けてきた。





―――ヒュッ!!





シャルは防御しようと剣を目一杯引き上げるが間に合わず、アルフォードの剣先が首元でピタッと止まった。




「し、師匠の剣はやはり速いですね。受け止めようと思った時にはすでに寸止めされてました」


「私の剣筋を目で追えているだけで大したものだ。しかし、これは何もしていない時の私だ。これから身体強化魔法をかけるから、その速さの違いを体感するといい」


「わかりました」



「―――ブースト!」


シャルはごくりと唾を飲み込んだ。

明らかにアルフォードの雰囲気が変わり、魔力が練り上がっていくのが分かる。



「いくぞ」



シャルが身構えた瞬間―――






―――気付いた時には背中を取られ、木剣は再度首元に突きつけられていた。




シャルは驚愕で目を見開き、何が起きたのかを理解することが出来ない。


(……見えなかった……剣筋どころの話じゃない。体の動きさえも目で追えなかった……)



「これが身体強化魔法『ブースト』だ。これを使いこなせれば、シャルは強くなれるよ」


アルフォードは笑顔で簡単そうに言うが、圧倒的な実力にシャルは思わずへたり込んでしまった。



「身体強化魔法はその言葉通り魔法だ。だからまずは魔力を練り上げる必要がある。シャルは魔力を練り上げるのは得意だな?」


「は、はい。五才から毎日魔力を練る練習をしていたので」


「シャルの魔力操作と制御はかなりの域に達している。誰に教わった?」


「アイリー……お母さんです」


「……そうか。なら母さんに感謝しないとな」


シャルはアイリーを思い出し少し悲しくなったが、おかげで魔法が使えるようになったと自分に言い聞かせ顔を上げる。



「ブーストは緻密な魔力制御が出来て初めてモノになる。だから騎士団の中でも完璧に使える奴はそう多くない。……が、シャルはそこをクリアしているから早速身体強化を教えていくぞ」


「はい」


「まずは魔力を練り上げてみろ」



シャルは集中し魔力を練り上げ始めると、膨大な魔力に草木がザワザワと揺れ始めた。



(これは驚いたな。想像以上にとんでもない魔力量だ)


「シャル、ストップだ」



シャルはどうして止められたのか理解できず首を傾げた。


(もしかして魔力の練り方が間違っていたのか?)



「シャルは魔力量が多いと思っていたが私の想像以上だった。これ以上は危険だから先にちゃんと説明をしておこうか」


「師匠、危険とはどういうことでしょうか?」


「じゃあまず質問をしよう。シャルが魔法を放つ時は練り上げた魔力をどうする?」


「えっと、全身に巡らせた魔力が手の平の上で変換されて、魔法が放出されるようにイメージします」


「そうだな。簡単に説明すると、それと逆のことを体内で起こすんだ」


シャルはまたしても首を傾げる。



「ブーストは、魔法で筋肉を強化するものだ。練り上げられた魔力を外に放出するのではなく内側に留まらせる。そして筋肉を魔力で包み込むようなイメージを持つんだ」


「なるほど。理屈はわかりましたが、どうして危険なんでしょうか?」


「この魔法は、確かに体を強化してくれるが、魔力が多過ぎると筋肉に掛かる負荷が大きすぎて筋断裂を起こしたり、体内を破壊してしまうんだ。魔法で無理やり体を強化するわけだからな。だから魔力制御が出来ない奴はブーストを使うことが出来ない」


「……それは怖いですね」


「それにシャルのような子供の体では、仮に魔力制御が出来たとしてもその負荷に耐えられない。だから基礎体力をつけてもらったんだ。しかし、シャルの魔力量は桁違い過ぎて、練り込んだ魔力でブーストを使えばさらに危険だ」


「そ、それじゃ、僕はブーストを使えないってことですか!?」


「ああ、いや、そういうわけじゃない。練り上げた魔力を極限まで抑えろ。そうすれば筋肉への負荷が軽減する」


「なるほど」


「そして筋肉を魔力で包み込むイメージを持つ。このイメージが一番難しいからな」




――――




シャルは理屈を理解し、集中し始めた。

練り込んだ魔力がシャルの体を包み込んでいく。


ファイアを使う時も、ある程度威力を落とすために魔力制御を行うのだが、身体強化の魔力制御はその数段上の難易度のように感じた。



「シャル!もっと魔力を抑えろ!もっとだ!」


体内の魔力が落ち着き、全身の筋肉を包み込むようなイメージをする。


「ブースト!」



魔法を発動させた瞬間、一気に体が軽くなったような気がした。


試しに少しジャンプしてみると、今まで経験したことのない視線の高さに驚き、アルフォードに顔を向けた。



「さすがシャルだ。上出来だ」



シャルは嬉しくなり駆け回った。


(凄い!……凄い!凄い!これだけでめちゃくちゃ強くなれた気がする!)



まだまだアルフォードには遠く及ばないが、確実に早く動けるようになった事実に気持ちが高揚した。



 しかし、浮かれているのも束の間、急に力が抜け息が上がる。


「ハァ……ハァ……ハァ……」


(魔力切れ!?あんなに魔力を抑えたのにどうして!?)



「ハハハ!調子に乗ったな!」


「どうしてこんなに……直ぐに魔力切れ……みたいな状態に…………なるんでしょうか?」


「それは魔力の出力を上げた状態で動き続けているからだ」


「じゃあ師匠は……どうやって維持して……いるんですか?」


シャルは深呼吸をし息を整えていると、落ち着いたのを見計らってアルフォードは答えた。



「私もブーストの出力をそのままにしていればそんなに長くは持たない。つまり、ブーストはいかに魔力を節約しながら発動させるかが重要なんだ」


「それは足だけとか、腕だけとか、そういうことですか?」


「そういうことだ。ブーストは基本低出力を維持する。その上で、早く走りたければ足だけ出力を上げる。剣を早く振りたければ腕だけ出力を上げる。そうやって、魔力の消費量を抑えるんだ。シャルが魔力切れのような感覚になったのも、魔力制御に力を使い、さらに全身の出力を上げた状態で動いてたからだよ」



(おいおいマジかよ。魔力制御だけでもあんなに疲れるのに、さらに必要箇所だけ魔法の出力を上げるってか?)



「ただ、戦いの最中にいちいちそんなことを意識していたら相手に討ち取られてしまう。だから瞬時に必要量、必要部位の出力を上げ下げする緻密な魔力制御と、無意識下でも自然に使えるよう訓練が必要なんだ」


「師匠!それを先に言って下さいよ!無駄に疲れちゃったじゃないですか!」


「悪い悪い!ちょっとからかってみたかったんだ。それに、体感して分かったと思うが、シャルは体を動かしながらの魔力制御が全然出来ていない。要はせっかく抑えている魔力が色んなところから外に漏れ出しているんだ。加えて、魔力変換の効率が悪すぎる。これは恐らく今まで使っていた外に放つ魔法と、内側に溜める魔法の違いに慣れていないからだろう。だから余計に魔力を消費する。まあ、初めてでここまで出来るやつはそうそういないんだけどな」



シャルは不貞腐れたような表情をしながらも、自分が強くなれる実感が湧いたことが嬉しかった。


(もしブーストが使えるようになれば、俺は飛躍的に強くなれる!)


アルフォードの実力を体感し、目標が明確に見えたシャルはここから飛躍的な成長を遂げていく。



「あれ……しかも……身体が痛い?言う事を聞かない……」


ーーーはずである。



ついにシャルの修行が始まりました!果たしてシャルはどこまで強くなることができるでしょうか?


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