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仁保君の得意技

仁保(にほ)… 仁保(にほ) 吉継(よしつぐ) 三中2年1組 コンピュータ好き 特技はネット上のパスワードを破ること

(9)自動車


仁保は、今度は自動車検査登録情報協会(略称 自検協)のホームページにアクセスしていた。自検協とは、国土交通省のもと全国の自動車の登録情報などを管理している一般財団法人である。

 全国の自動車の登録情報という膨大な個人情報が管理されている機関ではあるが、やはり仁保に言わせると「この程度のセキュリティ」となってしまう。


 仁保が次々とパスワードを解読していく。全国の自動車登録台数は約8200万台。福井県内の台数は約67万台。福井県内で登録されている自動車のナンバープレートとその所有者情報を探し出すのに、それほどの時間はかからない。

「え~っと、まずは2801の登録データは…っと。」

福井県内で2801のナンバーは452台となっている。例えば「福井5△△あ2801」の車は、大野市の設備工事会社の事業用の自動車となっている。所有者は大野市の○○氏である。

仁保はこの膨大なデータから、敦賀市周辺で所有されている登録車にしぼっていった。「2801」では敦賀市で5台、若狭町で1台、おおい町で1台となっている。「2604」では敦賀市で6台、若狭町で2台、おおい町・高浜町でそれぞれ2台である。さらに他の組み合わせ「2601」「2804」でも検索した。すべての合計は39台であった。


「計39台か…。この39人で、怪しい人物は…っと。自家用だけにしぼってみるか…。」

 登録情報の中で「あ」などひらがなの文字で、自家用か事業用かの区別が分かる。「あ・い・う・え・か・き・く・け・こ・を」は事業用の登録である。「れ・わ」はレンタカー用である。アルファベットや「よ」は駐留軍人用である。

39台のうち自家用は38台であった。ほぼ自家用としての登録である。敦賀市の22台、若狭町で4台、おおい町・高浜町でそれぞれ6台である。

「どいつだ。オレを殴ったヤツは…。」

 登録情報から敦賀市松◇町2ノ△ノ△ 山本○○という人物が明らかになったとしても、結局、その登録情報から怪しそうな人物を見つけることはできなかった。


「登録情報からでは、どいつも普通のヤツに見えてしまう…。どうする…。」


 住所と名前からネットで検索をしてみたところで、ネットにあふれている情報から、殺人事件に関わるような怪しい人物かどうかは分からない。

「一人一人、地道に、調べるしかないのか…。」

仁保は38台分のデータをプリントアウトした。若狭町から高浜町にまでまたがる、38台の住所と名前を探ろうと心に決めていた。


 翌日から、仁保の探偵活動が始まった。

放課後になると、普段からすぐに下校していた仁保が、さらに素早く学校を後にした。自転車を走らせ敦賀市内を駆け巡った。登録情報の住所へと、スマホのナビを活用して近づく。

「…う~ん。普通の家だ…。そして、普通の人だ…。」

 第三中学校からほど近い、敦賀市本町14ノ△ 伊藤○○。白銀商店街から一本入った町屋造りの家だ。老婦が夕食の準備にいそしむ様子がうかがえる。登録データの名前はおそらく旦那さんの名前だろう。本人が家にいるかどうかは分からない。が、殺人事件に関わり、仁保を殴るような人物ではなさそうに思えた。

 敦賀地区には22台の登録データ。5軒の家を自転車で回ったが、仁保にはどこも普通のご家庭に見えてくる。

 時刻は夜6時を回ろうとしている。1月の寒さが身にしみる。

「明日は、中郷地区に行ってみるか…。」


 仁保君の探偵は続く…。


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