スマートタグ
仁保 … 仁保 吉継 三中2年1組 コンピュータ好き
京 … 京 東洋 三中2年4組
夢美 … 常宮 夢美 三中2年2組 バスケ部
(14)スマートタグ
2月になった。あいかわらず毎日寒い日が続いている。
三中殺人事件は、すでに解決した形となり、すっかりほとぼりが冷めていた。
2年2組の担任やバスケ部の顧問も、それなりの先生方が受け持ち、それぞれ落ち着き、何事もない毎日が過ぎていた。
だがオレは、どうしても納得がいかなった。おそらくすべては京の仕業だ。しかしどうしてもその尻尾をつかまえることができないのだ。
オレは、決めた。
(よし、こうなったら、とことん京を追跡だっ! ビッタリ張り付いてやる…。)
京の自転車のリヤバンパーの裏面に、スマートタグを貼り付けた。
スマートタグ。それは、カギや財布などの位置情報や所在を無線通信で把握し、スマホと連携して紛失防止に利用する大きさ数cm程度の小型デバイスだ。
これを京の自転車の泥よけの裏面に、あいつに分からないように貼り付けた。これでオレのスマホで、京の行動をすべて把握できる。
(何日かかろうと、京の行動からヤツの悪巧みを暴いてやる。)
放課後。
京が自転車で帰途についた。オレはスマホの地図アプリに京の位置情報を示しながら、数百m離れて追跡する。
(よ~し、タグは順調だ。ヤツの動きに合わせて、位置情報が地図上を動いている。)
しばらく走ると、京が動かなくなった。この位置は京の家だった。
(今日のところは、家に帰ったということか…。)
それ以降、動きはなく一日が終わった。
翌日は土曜日だった。
昼前、京の自転車の位置情報が動き出した。
(来たっ! 動いた! 逃すか!)
オレも自転車で飛び出した。京は敦賀市内を移動している。商店街の方向へ向かっているようだった。そして大きな交差点を渡った所で止まった。
(ここは…。)
気比神宮だ。
日本三大木造鳥居で有名な神社、「北陸道総鎮守」気比神宮。毎年秋9月には盛大な祭りが行われる。江戸時代に松尾芭蕉が『奥の細道』の旅路で立ち寄り、「月清し 遊行のもてる 砂の上」「国々の 八景さらに 気比の月」などと詠んだ、敦賀市の一大観光地である。
冬の気比神宮は、観光客は多くない。
(何の用だ…。)
オレも気比神宮近くに自転車を停め、神宮内の京を探した。
(いた! ヤツだ!)
京は歩いていた。大鳥居を入ってすぐ左にある手水舎の屋根の下に入っていった。誰かがいる。女の子だ。あれは…?
常宮だっ! 手水舎にいたのは2年2組の常宮 夢美だった。
(えっ? あの二人、付き合ってたのか?! デート?)
しかし、常宮の表情は遠目で見ていても明るくはない…。デートとは思えない様子だ。京が何かを差し出した。スマホだ。
何かを見せているようだった。常宮は見たくないような素振りに見える。京は強気で何かを話しかけているようだが、こちらにはまったく聞こえない。
(京が脅している…? そんな感じだな…。何がスマホに…。)
二人はそれきり話をすることなく、別れた。京が鳥居に向かって出てきた。こっちに来る。やばい! オレは大灯篭の後ろに身を潜めた。京は気付かず素通りし、自転車に乗って去っていった。
しばらく位置情報を確認していたが、京は家に戻ったようだった。
(常宮に聞いてみるか…? いや、はぐらかされるだけだろう…。やはり京のスマホだな…。しかし、どうする…?)
京の持ち物のスマホを手に入れるのは、とうてい無理だった。
(ここまでか…。どうしようもないのか…。)
さすがの仁保も、ここまでだった。




