証拠をつかんだ
彩葉 … 気比 彩葉 三中2年1組 おやじ好き バスケ部
仁保 … 仁保 吉継 三中2年1組 コンピュータ好き
千里 … 松原 千里 三中2年1組 アニメ好き
和歌 … 野坂 和歌子 三中2年1組 外国人のイケメン好き
常先生 … 常 永大 三中2年2組担任 体育教師 イケメン バスケ部顧問
アーサー(あーさー) … マイク・アーサー 三中ALT アメリカ出身
(11)ホイッスル
「ねぇ、仁保君、どう? 進展は?」
彩葉が興味深そうに聞く。
「いや…、近づいてはいるんだけど…。」
仁保は、昨日の車追跡のことを話して聞かせた。車のナンバーで追跡すると、三中の常先生の家にたどり着いたことを。
「えっ、それじゃぁ、常先生が怪しいって言うの?」
「まぁ、オレの追跡ではそうなるってこと。」
「え~、常っちって、イケメンだし、そんなことしないって。」
「常っちって言うな!」
「い~の、い~の。バスケ部、みんな言ってるし。」
「ていうか、イケメンだと、そんなことしないのか?」
「そ。もうちょっとオヤジだと、さらにい~んだけどなぁ。」
千里が横から入り込む。
「も~、彩葉ったら、オヤジ好きなんだから。」
和歌も来た。
「やっぱ、イケメンでも、外国人の方がい~わ。あの鼻筋がい~のよ。」
「ALTのアーサー先生みたいな?」
「あ~、い~わ~、アーサーティーチャー!」
「おい、お前ら、話が横へ…。は~ぁ。」
(しかし、これからどうする? 常先生を疑ってはいるが、どうやって常先生が真犯人だという証拠をつかめばいいのか…。)
「お~い、次の体育は外だってヨ!」
「え~、この寒いのに?」
「外でサッカーだって。」
「ひえ~!」
「マジ~。」
「やった~!」
「やだ~!」
ピ~!
体育教師のホイッスルが高く響く。
寒空の下、苦手な体育で、しかも大の苦手なボール競技の、しかも足でボールを扱うサッカーなどこの世から消えてしまえばいいと思っている仁保が、グランドで同級生たちを、一応、走って追いかけていた。
「ゴ~ル!」
「よっしゃ~!」
ピ~!
ホイッスルが響く。
(ホイッスルか…。そうか! ホイッスルだ! あの時のホイッスルを探すんだ!)
「よ~しっ!」
「おっ、仁保もついにやる気になったか?」
「えっ? ちがっ。いや~、ボールはちょっと…。」
「なんだヨ~。ちがうのかヨ~。」
(球技はムリだって~。ごめんネ~。)
(あのホイッスルを、どうやって見つけるのか…。)
あの日、火事現場で発見したホイッスルを、オレを殴った真犯人と思われる人物が持ち去っている。それさえ発見できれば、動かぬ証拠になるのではないか。
おそらくあのホイッスルを奪ったのは、常先生だと想定される。防犯カメラの映像と、ナンバーから追跡した結果がそれを示している。あのホイッスルは今現在、常先生が持っているはずだ。しかし、もしかすると既に証拠を隠滅してしまったかもしれない。
どうすれば、あのホイッスルを見つけることができるのだろうか…。
(仕方がない…。あれしかないか…。)
仁保は考えていた。誰にも知られず、三中体育教官室に侵入し、例のホイッスルを見つけ出す方法を…。
体育教官室は柔道場に最も近い1階の端にある。3人いる体育教師達に特別に与えられた部屋だ。昭和の時代に、生徒を指導する際、ここに連れて来られたらしい。どんな指導をしていたのか…、令和の現代では考えられないが、なつかしい昭和の逸話を父親から何度か聞かされた。
(体育教師のみなさん、カギはしっかりかけましょうネ…。)
体育の授業を、体調不良(仮病)を理由に保健室で休ませてもらい、トイレに行くと言って出て行き、体育の授業中で先生が誰もいない部屋に入り込んだ。
(さて、常先生の机は…、これか…。)
バスケットボール関係の雑誌が机の上に積んである。他の机には、柔道関係の雑誌と、陸上関係の雑誌が積んである。分かりやすい持ち物だ。
常先生の机の上には、ホイッスルは見当たらない。
(今、使っているのか…? いや、あんなに黒こげのものは使えないだろう…。どこかにあるはず…。)
引き出しを開けてみた。
あった!
(これだ! あの時のホイッスルだ!)
案外すぐに見つかった。黒焦げのホイッスルが、無造作に引き出しに入れてあった。仁保はハンカチでそれを包み、ポケットに入れた。
(よしっ! これで証拠をつかんだ…。見てろよ…。)




