第85話 M38:森の恩恵(その4)I benefizi dalla foresta:quarto
生暖かく、湿気の強い空気が取り囲む。
周囲はどこまでも湿地が続く。
第二段階を実行中だ。
中央の細い道を警戒しながら進む。
道とは言っても、苔が所々生え、土と石が混じり合い、歩き難い。
両側の湿地帯は濁った緑色の水が覆う毒沼だ。
繁茂する苔は、緑や茶、黄色が混じる。
打って変わってモンスターは少ない。
しかし、ある種の苔は動き出して脚に絡みつこうとする。
「地叩!」
エドの斧スキルで苔を払い落としながら進む。
色んな種類の苔が混じっているため、どんな攻撃なのか判断するのが難しい。
「憩いの歌!」
地味に消耗しかねないが、ジョルジュの支援バフが効果的に防いでいる。
「嫌味じゃのぅ。やり難い敵じゃ」
「ワイは、こういうのは全然だめや。もっと派手なんがいい」
「戦いは色んな種類があるんだよ」
「目の前の敵に集中すべきなのよ!」
道を進むに従って苔が段々多くなって来る。
「風の球!」
はるっちの魔法で前方の苔を吹き飛ばす。
「やれやれ、面倒じゃのぅ」
「数と毒のコンボ攻撃とか、たまらんわ!」
「油断すると、毒で知らないうちに倒れているかも」
周囲を警戒しつつ、慎重に前へ進む。
「気を付けて、何か来たわよ」
エドの声に注意すると、変な植物が近付いて来る。
細長く立った茎と先がくるっと巻いた形
ゼンマイなんだけど、高さが三メートルくらいある。それも五体!
「やり辛そうな相手じゃのぅ! 炎の矢!」
はるっちの先制攻撃でお化けゼンマイが燃え上がる。
「地属性のようじゃ」
「任せぃ! 炎の槍!」
サブの魔法攻撃で、一体が黒く焦げ落ちる。
ジョルジュは毒対策のため、歌は変えられない。
前衛エドの抑えと炎の壁で動きを妨害しつつ、火魔法で倒して行く。
次に現われたのは、沼に浮かぶハス。地下茎はレンコンなんだけど、ここのは食べる気がしない。
丸い葉が水面に並ぶ中、あちこちに白地にピンク色の花弁を持つ花が、ずっと並んでいる。
近付くと一斉に毒霧を吐く。仏教じゃ聖花じゃなかったのか?
密集隊形を取って、ひとつずつ火魔法で根気よく片付けて行く。
「神経使うわ~」
確かに、ジョルジュの歌がなかったら本当に危なかったかもしれない。
しばらくすると、道の幅は広がったが、両側は白い岸壁が続く。
よく見ると小さな花が雪のように貼り付いて居る。
「ワイは、あれ見たことあるわ! ユキヤナギみたいやな」
「嫌ねぇ~、これまでの展開から何かありそうだわ」
「ジョルジュ、防御上げて!」
「承知! 防御の歌!」
「攻めてこないようじゃな。茂っているだけか?」
「ちょち、叩いてみるわ!」
あ、サブ、止めぃ! と言う寸前
「炎の槍!」
サブの火魔法が、ユキヤナギに当たった途端、白い花だけが空中に飛び出し、襲って来る。
「お主は~~! またやりおって!」
「はるっちさん、角は止めてや~」
和本で叩かれてるけど、まぁいつものことだ。
「石の連弾!」
飛んで来る花を地魔法で叩き落とす。
「風属性! 地で対処!」
「了解じゃ! 地の加護!」
「ワイの魔法も喰らえ~ 砂塵!」
サブ、その判断は正しいよ。さっきのがなければ良かったけどなぁ
「地纏い!」
「助かるわ~」
エドにはこれが効果的
「挑発!」
花々は一斉にエドへと向かう。
「多連断!」
エドはスキルを駆使して、叩き落して行く。
魔力に余裕がないように見えるので、魔力回復剤を投げる。
エドの頭上で瓶が割れ、青い液体が散る。
「回復の花々!」
はるっちの回復魔法で、一面に花々が咲く。
体力・魔力を回復しながら進む。消耗戦になって来る。
「サブやん、あれ!」
サブの幻影が叫ぶ。
ふわふわと浮かぶ白い綿毛の集団、蒲公英かぃ?
「了解や、腕輪はん! 火山弾!」
周囲の地面から、炎を纏った石弾が次々に噴き上がる。
綿毛は石に叩かれ、燃え上がりながら落ちて行く。
やっぱり、サブの幻影はおかしい。周囲の警戒や戦闘指示するはずがないのに……。
「頑張れ~、もう少しだ!」
わたしの指示に、全員が攻勢に移る。
ジョルジュも戦いの歌に変わる。
面倒な地域を何とか突破して、苔生す岩壁が続く広場に出た。
さーて、いよいよ最後かな。中ボス居るだろうな。
予想通り、岩壁の前に集まっていたシダの葉を持つ植物が動き出す。
高さは五メートルはあるだろうか?
「ワラビ?」
「ワラビみたいじゃな」
「ワラビにしか見えないわ」
「ワイは、ワラビと確信する」
「お化けワラビですな」ポロロン♪
「よし、行くよ~! 属性確認する。石の連弾!」
「拙も確認じゃ。炎の矢!」
石は当たって弾けるが、火は小さな炎が湧き出しただけだ。
「あ、こいつ水属性だ。サブ、降雨禁止!」
「ことねはん、古傷をいつまでも……」
まぁ、めげないのは分かってるさ。
「おっしゃ、ワラビ餅にしてやる! 地の槍!」
サブの魔法攻撃で地面から土の槍が突き上がる。
あまり大きなダメではないが効いているいるみたいだ。
その時、シダのような葉を震わせて、音波をこちらに発して来る。
耳が遠くなって頭痛が……こんなのは初めてだ。状態異常攻撃?
「なんの! 憩いの歌!」
ジョルジュの支援歌で何とか持ち直すが、影響は消えない。
ちっ! やり辛い。
「面倒な相手じゃのぅ。地の加護!」
「エド行け~ 地纏い!」
「支援ありがとね。地叩!」
いや、大変だった。
シダ状の葉を振り回すわ、音波攻撃は連続するわ、果ては若芽を伸ばして巻き取ろうとする。
しかし葉を切り刻み、芽を切り落とし、胴を削り落として何とか倒した。
薄緑の光を放ちながら消えて行くワラビさん。ワラビ餅には、し損なったけどね。
生命の腕輪の効果音が響く。
“第二段階クリア:繁茂„




