第86話 M39:森の恩恵(その5)I benefizi dalla foresta:quinto
第二段階は、地味に消耗する戦闘状態だったが何とか中ボスを倒した。
お化けワラビさんは、難敵だった。ジョルジュの竪琴が無かったらかなり難しかったと思う。
苔生す岩壁が続く広場の中、次の段階へ進む前に回復や装備を確認をする。
岩壁の中央に一際目立つ苔の塊の部分がある。
これが次の入口なのは間違いなさそうだ。
「エド、お願い!」
「分かったわ! 連 断!」
斧の連続攻撃で苔が剥げ落ち、入口が現われる。
「さぁ、次行くよ! ジョルジュ、念のため防御上げて」
「承知! 防御の歌!」
「行くわよ!」
エドを先頭に入口を通過する。
「どうやら第三段階開始かのぅ」
「面倒や、はよ終わって欲しいわ」
「悲観するものではありませんぞ。順調に進んでいるではありませんか!」ポロロン♪
「そうよ~、これからが本番よ!」
気温が少し下がって、爽やかな風が吹いて来る。足元も確りしており安心できる。
周囲は広く続く草原で、見通しも良い。
彼方此方に棘のついた二枚の丸葉が見える。
「げっ! 食虫植物や!」
「ハエトリグサじゃな」
「お約束とはいえ、強そうですな」ポロロン♪
「しゃーなぃ、ひとつずつ潰すよ」
「時間かかりそうだわ~」
「ワイから行くで~、炎の槍!」
サブの火魔法はハエトリグサに吸い込まれるように消える。
「げっ! こいつ火属性や」
「サブ、降雨おすすめ」
「ことねはん、性格悪いわ」
「いま、気付いたんかぃ?」
振り返りながらジョルジュへ指示する。
「素早さで!」
「承知! 俊敏の歌!」
「行くで~、降雨!」
近くのハエトリグサ雨粒が掛かり、嫌がるように葉を震わせる。
それでも棘の付いた二枚の葉で挟もうと次々に襲って来る。
「これくらい平気よ。挑発!」
エドに向かうハエトリグサに水魔法を叩き付け、少しずつ前進する。
毒がないだけ楽だとは思う。
しばらく進むと、状況が変わって来る。
二種類の食虫植物が居るようだ。
ひとつは、壺状の捕虫袋が見える。
もうひとつは、葉の先に細長い棘があり粘液が水玉状に付いている
「壺みたいな袋があるのは、ウツボカズラや。中に消化液が入っていて触ると危険やな」
「棘の先に水玉があるのはモウセンゴケじゃな。粘液じゃから、くっつくと動けなくなるぞ」
二人とも詳しい。みんな物知りだなぁ
属性は地と水、とてもやり難い。
ウツボカズラには、火魔法で消化液の入った捕虫袋を焼き切る。
現実と違って、消化液を掛けて来る。
躱せば問題ないけど、前衛は大変だ。エド、牽制だけで近付かないでね。
モウセンゴケは粘液の付いた葉を振り回して来る。避ける場所を間違えると粘液溜に嵌りそうになる。しかも粘液が付くとピリピリする。
ジョルジュの憩いの歌で何とか耐え切るけど、状態異常は厄介だ。対策は急務だと思う。
結局、風の束縛で動きを止め、ひとつずつ片付ける。
低い草に覆われる広場に出る。
正面には、草の意匠をした立派な扉が見える。
しかし、その前に立ちはだかるオレンジ色の塊がひとつ。
中央に丸い穴が開いており、周囲を幾つかの平たい花弁が取巻く。全体に小さな突起が付く。
「ここのボスはラフレシアかぃ」
元々、花しかない寄生植物らしい。
「いよいよボス戦よ。楽しみだわ!」
「戦いの歌!」
「先制行くで~、炎の槍!」
サブの火魔法の直撃を受けたラフレシアの花弁が燃え上がる。
「ワイの思うたとおり、地属性や!」
「エド、牽制しながら動き抑えて! 無理は禁物」
「分かったわ~、挑発!」
エドは、ラフレシアを牽制しながら正面に立つ。相手は花弁を震わせ、威嚇するように近付く。
「ジョルジュ!」
「承知! 俊敏の歌!」
ジョルジュの声に合わせるようにエドがスキルを放つ。
「連 断!」
オレンジ色の花が、スキルを躱すようにエドに飛び掛かる。
エドは無難に躱すが、敵の動きは予想以上に速い。お前、ホントに植物か?
「炎の壁!」
敵の攻撃方向を、何とか限定する。
「炎の輪!」
はるっちは炎の中に閉じ込めようとする。
しかし、なかなか捕まらない。
「麻痺剤!」
奥の手のポーション瓶が飛ぶ。敵の上で黄色の液体が弾ける。
動きは遅くなったが、停止はしない。
しぶといなぁ!
火魔法を集中するが、敵の動きは衰えない。
手強いわ!
「回復の歌!」
ジョルジュの支援は本当に心強い。攻撃に集中できる。
火魔法を重ねて、ダメージを蓄積させると、ラフレシアの行動が変わって来る。
花弁を飛ばして、激しく切り付けて来る。
初見だから判断が難しいけれども、弱って来ているのは間違いない。
「たぶん、もう少し、頑張れ~~」
「承知、戦いの歌!」
「了解じゃ、炎の絨毯!」
「いくで~~ 炎の蛇!」
ラフレシアが大きく仰け反る。
「止め~! 地獄の業火!」
敵は炎に包まれ、崩れ落ちて行く。
生命の腕輪の効果音が響き渡る。
“第三段階クリア:緑の反撃„
「終わったわ~」
「やっとかぁ」
なんとか倒したけど、ラフレシアって体力どれだけあるん? でもまぁ、結果オーライだな。
「お疲れです。回復の歌!」
ジョルジュの竪琴を聞きながら、ゆっくり息を吐く。
どれくらいの時間がかかったんだろ?
とりあえずは、休憩だね。
焦って進んでも良い結果にはならない。十分に回復してから扉へと進む。
「準備いいよね。行くよ!」
みんな笑って頷く。うん、良い顔だ。
扉に触れると、淡い緑光に包まれ、ゆっくり開く。
次へと足を踏み入れる。
いよいよ最終段階かな?




