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第29話 M14:大蛇 Il grande serpente

 取り合えず……明日に備えて休むことにする。

 見張りは、第一・二夜刻がわたし、第三・四夜刻がディア、第五・六夜刻がはるっち

 まさかサブに任せる訳にはいかない。

 テントも距離を離して建てたしね。


 翌朝、なんだか不満気のサブだけど、気にしない。

「朝ご飯ができたのじゃ」

 はるっちが手際よく準備してくれる。

 簡単なお粥で、なかなか美味しい。

 よく米を持てたな~と思ったけど、アイテム類はみんな生命(いのち)の腕輪に入るのか

「うむ、こーゆー朝メシは久しぶりや! 大和(やまと)民族はやはり米やな」

「サブや、おぬしが一番食べてるのぅ」

「はるっちさま、(かど)は止めてや」


 野宿(campeggio)の後片付けをして、出発する。

 相変わらず、砂と岩の砂漠が続くが、出現するモンスターが少しずつ変わる。

 次の町に近付きつつあるというのが良く分かる。


(lancia)(di)(fiamma)!」

 サブの火魔法が炸裂する。

 褐灰色に黒斑点模様の蛇が弾けるように消えて行く。

「おっしゃ! こんなもんよ」

「サブ、良く分からん敵は属性に注意じゃぞ!」

「仰られる通りでございます」

 サブは随分大人しくなったけど、卑屈っぽい。性格なのか?

「初めての村近くには居ないモンスターだね」

「あぁ、こいつはクサリヘビだ。毒持ちだから注意が必要だ」

(pozione )(disintossi)( cante)は十分用意してあるから、大丈夫だと思うけど」

「このゲームは状態異常が厄介だから、対応する薬剤(pozione)は必須。先のことを考えないとな」

 

(muro)(di)(fiamma)!」

 甲羅を背負った蛙が突っ込んで来る。変わったヤツだなぁ

 はるっちの防御魔法で抑えた処に、サブが反撃

(lancia)(di)(fiamma)!」

 蛙が四散する。

 サブの魔法はかなりの威力だ。思ったより実力ありそうだ。


「ところでサブとやら」

「なんでございましょうか、はるっちさま」

「モンスター属性を考えずに魔法を発動してるみたいじゃが、間違えたりせんのか?」

「結構火魔法撃ってるよね。この辺は火属性モンスターもいるんだけど」

「もちろん、知識として把握しておくのが一番なんやが、本当に分からない時は、範囲魔法を先に撃ってモンスターの反応を見る」

「そんなんで分かるの?」

「同属性なら元気になるのですぐ分かる。優勢属性なら殆どノックバックしない。劣勢属性なら大き目のノックバックがあるので判別できる」

「なるほどねぇ」

「それでも余裕あるときやなぁ……分からん時には逃げるんや」

「なかなか考えておるのぅ」

「意外に有能か?」

「ワイだって苦労してきたんや、このゲーム結構ムズイで」


 岩の間に薄茶色のモンスターが見える。

 体長は尻尾含めて二メートルくらい?

「アルマジロが居るな。あれで属性判定してみて」

「ちょっち見ときや。降雨(pioggia)!」

 水属性の範囲攻撃、雨粒が当たる度に仰け反るように動くを止める。

「あんな感じでノックバックするのが劣勢属性、つまりあいつは火属性やな」

「なるほどのぅ、考えて居るわ」

 モンスターをサクっと倒して進む。

 サブがパーティに入ってから殲滅力が上昇した。結構頑張ってるのかも


「あれは何?」

 大きな蛇がのたうち回って、何人かの冒険者と戦っている。

 体長は十メートルもあるだろうか、かなりの力とHPがありそうだ。

「また会ったか、あれがキラー・モンスターだ」

「ワイも見るのは初めてやな」

「初心者ではひとたまりもなさそうじゃ」

「あの人たちって、いつもキラー・モンスター退治してるのかな?」

「希望の町の依頼(ricerca)だな。初心者が巻き込まれないように時々実施されてる」

「ちょち横殴りして経験値を稼ぐのはどうや?」

「サブ、止めて置け! 依頼受けてる冒険者から怒られるぞ」

「ははっ、はるっちさま、御心のままに」

 何はともあれ、キラー・モンスターに襲われずに済んだ。


 そうして、こうして、珍道中の末、どうやら目的地が見えて来る。

「見えたぞ! あれが希望の町だ」

「立派な町だね」

 砂漠の中に日乾煉瓦(ひぼしれんが)の壁で囲まれた結構大きな町がある。初めての村とは全然違う規模だ。

「おぉ、あれがそうか! 何だか円形のようじゃのぅ」

「ああ、希望の町は円形になっていて、中央に神殿がある。周囲には冒険者ギルドや色んな所がある。人も多いし賑やかな町だね」

「ワイも初めてや~、希望が持てるわ!」

「所々に緑も見えるね。砂漠のオアシスという感じ」

 旅の疲れもなんのその! 一気に町へなだれ込んだ。

 建国2年祈月(いのり・つき)5日(5/Preghiera/Auc.2)第四昼刻、希望の町到着


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