第28話 M13:三郎哀話 La favola triste di Saburo
インスタンス終了と同時に、開始と同じように真っ暗になる。
明るくなった時には元の場所。太陽の角度からしてあまり時間が経っていない。
インスタンスってそんなものなのか。
「どうやら終わったようだな」
「初めてだけど、インスタンスってこんな感じなの?」
「自分は何回か経験したけど、開始と終了は、こんなもんだね。略綬を貰えるのも多いって聞いた」
「確かに、略綬が増えてるぞ!」
胸に新しい略綬が付加されている。
青の諧調の縞模様、中央に可愛いスライムマーク
思わぬ所で略綬を貰えた。
なるほどこうやって戦績が積み上がって行くのか、ある意味幸運だったかもしれない。
「レア・ドロップがないか見てみよう」
ディアの声にみんな腕輪で確認する。
「自分は、マスター・スライムのコアだ」
「拙も、マスター・スライムのコアじゃな」
「わたしは……水の指輪? なんだろうこれ?」
「装備品とは珍しい。ちょっと見せて」
リアに、展開されている画面を見せる。
「ふむ、見たことのない装備品だな。指輪というのだから装飾品の一種だと思う。青いマークが出てるから水属性で防御を向上させるのかもしれない」
「ほう、かなりレア物かの」
「呪いのアイテムじゃないよね。一度装備したら外せないとか」
「そこまで心配することもあるまい。拙は装備を勧めるぞ」
「装飾品は自由に着脱できるから問題ないと思う」
「まぁ装備してみるね」
画面から装備を設定すると、左の中指に装備された。
一瞬青い結界が全身を包んで消えて行く。
「なかなか良さそうな装備品じゃな。それでサブには何が出たんじゃ?」
「ワイには水色のパンツが」
なんと装備品が!
「早速装備やな!」
「「「脱ぐな!」」」
三人の声が重なった。
「全く……女性の前でいきなり脱ぐなよ!」
「いや、パンツ代えるんなら脱がんと……」
「装備品なら、こうやれば代えられるだろ!」
ディアは、仮想画面を開いて装備のやり方を示す。
そんなに親切に教えんでもいいのに
「こんなやり方があったんか! 知らんかった」
「これまでは、どうしてたんだ?」
「いや、いつも脱いで代えてたが……」
しかし水色のパンツか、性能だけはよさそうだ。
とりあえず、野宿地を探すために進むことにする。
サブは……行掛かり上置いて行くわけにもいかないか。
「しようがないのう。次の町まで一緒に行くとするか」
「自分もそう思う。放置しておくと暴走して通行の障害になる」
「ご一緒できる。ぐへへへへ……」
「セクハラしたら世界から退場させるからね!」
視線が怪しいので前を歩かせることにする。
「あの……ワイは魔法職なんやけど……何で先頭に?」
「後ろにしたら何をするか分からんだろう」
「心配するな。敵が出たらサブが喰われている間に逃げる作戦じゃ」
「厄除けにはなりそうね」
それから先はサブが喰われることもなく、日没までになんとか予定の野宿地に着く。
周囲は石壁で、広さも十分。土も確り固めてある。安心感があるなぁ
「ディア、なかなか良い所ね。野宿には十分じゃない」
「あぁ、ゲーム序盤は無かったと聞いている」
「へぇ」
「冒険者たちが整備をしたらしい」
「後からやって来る者にはありがたいね」
「よし、野宿の準備だ。手分けしてかかろう!」
テント・パックを展開して、今夜の寝床を確保する。
ゲームは便利だね。
「おーぃ、竃の準備も整ったぞ!」
はるっちの土魔法で確りと竃が出来上がってる。いつの間にこんなスキルを?
サブは叱られながら夕食の準備をしている。意外にやれるのかもね。
夕食後のお茶の時間、サブへの詰問時間となる。
「んで、何で自分たちをつけて来たん?」
ディア、目が笑ってない。
「ワイはな。衝撃的なことに出会って、落ち込んでおったんや」
「笑劇的?」
「いや、それは字が違う。それでや、お姉さん方に慰めて欲しかったんや!」
「何でまた?」
「ワイは、ワイは……」
サブの絶叫が響き渡る!
「腕輪はんに嫌われてしもた!」
「「「は?」」」
再び三人の声が重なった。
「ワイの腕輪はんは、優しゅうて優しゅうて、可愛ゆうて可愛ゆうて、あの鈴を転がすような声でワイと話してくれていたのに……急に話してくれんようになったんや」
涙声で続ける。
「ワイは、ワイは……もう一度あの声が聞きとうて、毎日毎日話し掛けとるんやけど、一向に返事してくれんのや~~」
「えーっと、こいつ何言ってるんだ?」
「あれって仕様だよね」
「ちゃんと説明があったじゃろうに。何を聞いていたんじゃ」
ガックリと膝を追って絶望しているサブ、急に立ち上がって叫ぶ。
「ワイは、ワイは……諦めん! 腕輪はんがワイを認めてもう一度話してくれる日まで、諦めるわけにはいかんのや~!」
宵闇の中、サブの絶叫が再び響き渡って行く。
「何を言うとる!」
必殺の和本攻撃、クリティカル・ヒット!
「はるっちさま、角は止めてや~」




