―第91章― 千夏が1月を生き永らえる為の理恵の「鬱屈」
予想以上に順調に勝ち上がり、現在、チーム優勝か準優勝か、命運のかかる準々決勝に挑んでいる。
しかし、もともとの体力不足が作戦通りの動きを阻み、雲行きは怪しい。
額には大粒の汗が滲み、息はとっくの昔に切れている。
鈴のボールを追いかける足も、私のバックドライブの速度も、落ちているのは明らかだった。
脳内では、今のこの球も返せて、さっきのドライブもコートに入っているはずなのに、現実は伴わず、相手との点差が縮まっていく。
歯がゆい。
焦りが増して、入らないことは明らかな低い球にすら、無意識にバックドライブを打ち込み、ネットに塞がれる。
プレーはどんどん雑になっていく。
最初に着いていた点差はどんどん追いつかれ、ついには越された。
もっと慎重に見極めてから打たないといけないのに、私にはそれを判断できる脳のストレージがもう無い。
疲労によって消費されて、感覚すら狂ってきている。
第1セットは軽々取れていたのに、第2セットは痛恨の敗北。
鈴の顔にあったさっきまでの余裕は、疲労感と無力感で跡形もなく消えていた。
タオルと水筒とラケットを持って、コートチェンジ。
ただ歩くだけで噴き出てくる汗を拭いながら、呼吸を整える。
このまま勢いに呑まれて、プレーしたら負ける。
何とかしないと。
だけど、脳は灰色の雲に覆い隠されたようにいい作戦が浮かばない。
まず、いい作戦なんて思いついたところで何になる。
体力すらないのに、実行できないんじゃないか。
頭だけ回っても、身体が動いていないんじゃ意味がない。
所詮、策だけじゃ勝てない。
「第3セット ラブオール」
審判の声が響き、俯いたまま頭を軽く下げた。
「お願いします」




