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―第90章― 千夏が1月を生き永らえる為の鈴の「歓喜」
理恵の表情がマジだった。
地区大会の時はどうせ勝てないと言ったような諦めの気持ちが露見していたが、今の表情は絶対に勝ってやるという敵意を丸出しにした強い眼差しだった。
「勝とう」
ケースからラケットを取り出して、深呼吸をする理恵に向かって告げる。
理恵は緊張した面持ちで頷いた。
初戦の相手は練習の様子を見た感じ、フォアドライブが強い。
理恵はバッグドライブのスピードが強みで、私はラリーが得意。
となると、なるべく球をバックに返すこと、理恵が速い球を打って回り込む隙を無くすことが重要。
試合開始のホイッスルが鳴り響き、心拍の音が際立つ。
深呼吸をして、コートの上に置かれたラケットと球を手に取った。
球を頭上まで掲げて、フォア打ちの下回転サーブを相手コートのセンターラインギリギリに放つ。
入ってくれ。
センターラインのやや左側をバウンドして、緩い球がコートに返ってくる。
理恵が得意のバックドライブで叩いた。
相手コートをバウンドして、床に着く。
得点板に表示されていたスコアが移り変わり、心の中で「よし!」と声を上げた。
その調子で順調に得点を重ねていき、初戦を制した。
勝利の味は焦燥感からの解放ではなく、歓喜だった。




