―第78章― 志望校で新しく踏み出す為の隼人の「談勇」
志望校の部活に混ざって、俺はラケットを振るう。
先輩のスイングは宙に綺麗な弧を描いた。
練習に参加し始めた当初は、渾身のスマッシュも拾われて、サービスで何点も奪われて、散々だった。
が、自分よりも強い人が山ほどいることへの身を持った実感から新しい学びを得る事もできている。
「ありがとうございます」
先輩にスポーツドリンクを渡された。
少し糖分が口に残る感覚。
連絡が来て、画面が光ったスマホを手に取る。
「死神さんの厚意で鏡を貰って、もし空いてたら死者の都に来ない?」
千夏から6人のグループチャットに連絡が入っていた。
死神が頼まれた訳でもなく、あの鏡を渡したことに僅かな驚きを覚える。
部活は午前だけだから、終わったら行くか。
スマホを閉じて、「再開!」という監督の声にコートに駆けた。
部活動が終了し、家に着く。
即、荷物を置いて鏡を開いた。
波に揉まれるような感覚が再来し、そのまま景色が定まる瞬間を待つ。
「死者の都、着いたよ」
スマホを開いてメッセージを打った。
「町田さんの貸本屋に5人で一緒にいるよ」
この受験期に6人全員が集まることに、暇なのかと心の内で突っ込みながら、早足でそこへ向かう。
着くと、理恵はミステリー小説、千夏は参考書、鈴が青春小説、飛鷹がスポーツ雑誌、想空は図鑑に夢中になっていて、見事なほどに単独行動だった。
小さく溜め息を吐いて、アスリートの取材記事に目を輝かせる飛鷹の肩に手を置く。
そうしながら、俺もまたテニスの特集雑誌に目が行って、手に取ってしまう。
すっかり立ち読みしきって、空は夕暮れ。
「もう店閉めるよ」
町田さんに声をかけられてやっと我に返った俺は、S極とN極のように図鑑に引き寄せられる想空をどうにか引き離し、5人を連れて店を出た。
「なあ、あれ面白そうじゃね」
飛鷹が指さす先は貸本屋の向かい側の店舗に貼られていたスポーツ大会のチラシ。
死者の都の中のトップを決めると謳われていて、5人チームでテニス、サッカー、卓球、バドミントン、リレーの5競技の総合得点で競う大会らしい。
「確かに面白そうだな」
「死者の都のナンバーワンが今、決まる!」というキャッチフレーズにそそられる。
「死者の都の住人じゃないのに出たらまずいんじゃ」
鈴の表情が僅かに曇り、心配そうな呟きを落とす。
「お、よお」
いいタイミングと言うべきか、絶妙なところで死神に遭遇。
「そのスポーツ大会に興味があるのか?」
飛鷹の視線を辿って、その熱い視線に応え、今この瞬間をそっと抱きしめるように笑う。
「生者でも参加できるよ。なんなら、その大会の優勝を1月のミッションにするか?」
「え、でも…」
「せっかく参加するならこれくらいのスリルがあった方が面白いだろ」
飛鷹のテンションと死神の言葉に押し切られるような形で1月のミッションは決定した。




