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―第77章― 突然のプレゼントの為の千夏の「暗兆」

 陽光を透かす力もなく、ただ鈍く濁った白が灰色の空に不気味に浮かび上がる。

 その灰色の雲の上に、さらに厚く重たい雲が重なり、その狭間から死神が現れた。 

「久しぶりだな」

 私が点滴針を抜いたあの夏以来。

 死神は妙に馴れ馴れしく、手を振って、窓から病室へ入ってきた。

「早めのクリスマス、なんてな」

 死神はゆっくりと鏡を手の上に置いた。

 太陽を直視した時に目の奥に残る残像の色。

 触った途端、その生ぬるい感覚が指に伝わった。

「これって、死者の都に行ける鏡ですか?」

 前に、興奮気味の想空に見せてもらったことがあったのを思い出す。

「ああ。そうだよ」

 夏祭りの時には前日に死神が病室に来て、死者の都に連れていってもらったっけ。

「本当に貰っていいんですか?」

 恐る恐る聞き返すと、死神は乾いた笑みを浮かべる。

「いいよ。ヤケクソみたいなもんだから」

 どことなく影が疲労感を帯びていて、何故か胸騒ぎがした。


 死神が去った後、慎重に鏡を開けると、白銀の滴が視界を埋め尽くす。

 肺を満たしていく静寂と共に私の輪郭は母なる蒼に溶けていった。



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