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―第69章― 千夏が12月を生き永らえる為の鈴の「戦慄」

 戦争は他人事じゃないとはよく言うが、こんな形で自分事になるとは思いもよらなかった。

 自分だけが恐れて、身が震えて、何も動けない。


 爆せる音、砕ける音、焼け焦げた空気の匂い。

 目の前の戦場は混沌としていて、血の匂いと煙が鼻を突く。

 繰り広げられている光景はまるで現実ではないみたいだった。

 剣と拳がぶつかり合うたびに空気が震え、体がよろめく。


 隼人と飛鷹は最前線で応戦して、理恵と想空は一緒に戦ってくれる人や2人に指示を出したり、作戦を練ったり、勝つための行動をしている。

 なのに、私は怖がってばかりで動けない。

 千夏を、この城を救いたいはずなのに身体は震えて、言うことを聞かない。

 身体が自分のものじゃないみたいで、息を吸っても肺が上手く膨らまない。

 指先が勝手にカタカタと震え、剣の刃がかすかに鳴る。

 その揺れを止めようとすると、さらに肩から腕にかけて、小刻みに揺れてしまう。

「どけ」

 一緒に戦ってくれている町の人に肩を強く押され、バランスを崩した。


 涙が頬を伝い、胸の奥に渦巻く恐怖と葛藤が言葉にならずに溢れ出す。

 私は戦いを傍観者として後ろで見ているだけで、何もできない。

 私はずっと自分の責任になるのが怖く、自分の行動のせいで何かが変わってしまうことにずっと恐怖心を抱いている。

 何の影響も見出さない、ただの固体として生きていくことを望んでしまっている。

 でも、このままじゃ、そんな自分のままじゃ、一人の怖さを共感してくれた千夏も、優しく接してくれた街の人達も救えない。

 踏み出さなければ、私はきっと自分の勇気のなさと未熟さに後悔する。

 でも、私に一人で一歩を踏み出せるほどの強さはなかった。


 味方が次々と倒され、理恵までも戦闘不能となったため、一時撤退を余儀なくされた。

「理恵の戦闘不能状態が復活するまでは協力者集めや武具集めをしよう」

 隼人から来た連絡を見つめて、私は覚悟を決める。

「ごめん。今日は予定があるから」

 返事を待たずに、私は家を出た。

 向かう先は千夏のいる病室。

 覚悟を決める時すら人に頼るのは情けない。

 けど、自分一人のままだと私は何も踏み出せない。

 病気と闘いながら、最近は勉強にも励んでいる千夏に心配をかけることは心苦しい。

 だけど、一人だと自分は怖くて踏み出せない臆病な人間で、それを共感してくれた唯一の存在が千夏で、千夏は唯一弱い私を許してくれるから。

 病室にいた千夏は、布団に潜りながら小4の理科の教科書を読んでいた。


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