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―第60章― 千夏が10月を生き永らえる為の理恵達の「捜査」

先月のミッションが終わって早々、死神に呼び出された。

商店街の宝石店で強盗事件が起きたらしく、10月のミッションはその事件の犯人特定と逮捕という事になった。

私達は学校が終わって急ぎ、死者の都に向かった。

着くと、その現場は近寄るのをためらうほどに荒らされていて、辺りに飛び散った強化ガラスの破片が街灯の光を鈍く反射した。

「死神さん。詳しい説明お願いできますか?」

隼人が現場検証をしている死神の下に駆け寄り、声をかける。

「ああ。今日の午前10時47分頃に、黒いパーカーにマスク姿の男が数点の宝石を奪って逃走したんだとよ」

その言葉の通り、現場の宝石は物惜しそうにぽつんと数点、置いてあるだけで寂れていた。

「他に何か情報はないんですか?」

続ける隼人の問いにも、死神は渋い顔を崩さない。

「何人か目撃者はいたが、それほど有力な情報はなかったな。死者の都は下界ほど犯罪が多くないからって、防犯装備が充実してないことが裏目に出たな」

確かに、死者の都はお年寄りの割合が圧倒的に高いし、死に至るには2回殺さなきゃならないから凶悪事件が下界より少なくなるのは頷ける。

もう少し現場を詳しく見ようと一歩踏み出した先、足元に違和感を覚えた。

何か踏んだか。

しゃがみ込んで、それを拾うと、いかにもお偉いさんのジャケットに付いていそうな細かい彫り込みがしてある小さな黒いボタンがあった。


「この足跡、なんかの証拠になったりしない?」

咄嗟にそのボタンをポケットに入れて、飛鷹が指差した先を見る。

そこには快晴の日にはそぐわない作業靴のような特徴的な泥色の足跡。

「この足跡の形、珍しいんじゃないかな」

想空も同じことを思ったようで、じっとその後を見つめて口に出す。

私達は近所の靴屋さんに話を聞いてみることにした。


靴屋に入ると、木の香りと皮の匂いが混じり合った独特の空気が漂っていた。

店主は杖を突いて歩く男性で、私達の足跡の話を聞くと、すぐに奥の棚からいくつかの靴を取り出して見せた。

見た目は運動靴だが、靴底が作業靴のようになっているもの、ブーツのような林業用の作業靴、ダイヤルで足を固定させる靴など、多くの商品が目の前に並べられる。

「これがその靴の写真なんですけど」

鈴がスマートフォンを開き、足跡の写真を画面に映した。

隼人がその写真と靴底を何度も見比べていくが、対象の商品は見つからない。

「難しいかね」

杖を椅子の横に置いて、店主のお爺さんが写真を覗く。

「ん?これは作業靴とはちょっと違うね。この辺じゃないかな」

よっこらしょと再び立ち上がり、店の奥へ入っていく。

「これはハイキングシューズといってな。山登りとかする時に履くやつだよ」

確かに、作業靴よりも靴底の形が似ている。

この中にあるかもしれない。

「隼人。これじゃないかな?」

想空が指さした靴底と写真の靴底がぴったり一致した。

記憶力には自信があるという店主のお爺さんによると、この商品は新作で、購入した人は近所で貸本屋を開いている常連の町田さんと建築系の仕事をしている山本さん、初登山挑戦の為に買ったという小森さんの3人だそう。


容疑者の3人中2人が仕事中で聞き取りが難しいことと、日が暮れてきたことを踏まえ、聞き取り調査をするのは後日になった。


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