―第58章― 千夏が9月を生き永らえる為の想空の「微興」
隼人からメッセージが来た翌日、僕は死者の都にいた。
他のメンバーも集まって、ミッションの詳しい内容を聞く。
助手の西川さんに家の中に通されて、紙を手渡された。
奥にいる死神さんは、いつも通り忙しそうに書類を作っていた。
「資料の通りなんだけど、ここの右隣に発電所があるからそれを修理してもらって、」
死神さんの集中力を切らさないように、声を潜めて説明される。
説明の内容を簡単に言うと、3段階の手順で発電機を動かせばいいらしい。
第1段階は巨大なクランクを5人同時に10分間回して、発電機を再起動させること。
第2段階は再起動したエネルギーがメインシステムに送られる総電路を、5人全員で高速(100mを15秒ほど)で駆け抜け、ゴール地点の安全装置を解除すること。
第3段階はエネルギーを制御するための資料に書かれた5つの場所に設置されている強力な5つの巨大レバーを5人全員で連携して寸分違わぬタイミングで引くこと。
もし、1段階でも失敗すると感電してしまい、1日を眠りに費やしてしまうことになる。
つまり、今回のミッションは5人全員の体力勝負という事だ。
手渡された地図の通りに進むと、死神さんの家と繋がっている鋼鉄で組まれた巨大なドームが姿を現した。
その発電所は、まるで天空を模した天球のように星図を描き、中心には雷を封じたかのような巨大なコアが脈を打っている。
中に入ると、ひやりとした冷気が肌を撫でた。
鋼でできた箱の中に閉じ込められているように、静寂がこの空間を支配する。
「これが第1段階のクランクだよな」
隼人が指さした先に、塗装が剥がれかけた赤銅色のクランクがあった。
長い年月を黙して耐えてきた重み。
そっと手を触れると、ひんやりと冷たい鉄の感覚。
これを回すのは相当な疲労を伴うだろう。
それに加え、隠れ通路が開いたら瞬時にその中を駆け抜けなければならない。
「一回やってみようぜ」
飛鷹の掛け声でクランクを5人一斉に回し出す。
びくともしないクランク相手に全身の体重をかけて格闘する。
回った。
クランクが空中にゆるりと孤を描く。
どうにか10分経過。
額に汗が滲み、隠れ扉が開いた途端、全ての握力が失われたかのように力が抜ける。
「走るぞ」
力尽きた3人を前に飛鷹と隼人が声を掛けるが、走り出せる気力は微塵もなく、どうにか歩き出してまもなく15秒が経過し、感電。
火花が散り、身体は紙屑のように後ろへ弾き飛ばされた。




