―第56章― 6人の努力の結晶の為の死神の「淡志」
1ヶ月半ほどの6人の夏休みが終わりに近づいている。
空はまだ青いが、どこか柔らかい日差しの角度が少しだけ変わってきたのが分かる。
ゆっくりと夏の名残が消えていく。
千夏は病室で、真剣に本と向き合っていた。
ページを捲るたびに手を僅かに震わせながら、それでも決して諦めず、知識を吸収しようとしている。
理恵は塾から出された大量の課題を前に机に向かっていた。
難しい問題にも手を休めず、何度も挑戦を重ね、解説と思考を照らし合わせながら、最後には解答を導き出していく。
鈴は志望校選択に悩みながら、学校の特色や雰囲気、先生のアドバイスなどを踏まえて、多くの高校を回り、情報を仕入れていた。
想空は自分の好奇心に真摯に向き合い、何十時間もよく飽きずに空を見つめて、未知を追い続けている。
飛鷹は公園で延々とサッカーボールを追いかける。
汗をかきながら、何度もボールを蹴り返し、ゴールを目指して全力で走る。
隼人はテニスに懸けていて、今まで時間を割けなかった分を取り返そうと黙々と勉強を続けていた。
夏休みの終わりが近づくにつれ、6人それぞれの頑張りが一層輝きを増していく。
俺は今日以降、死神としての規約を破るのだろう。
そして、もし、それが他の国の死神や街の人々、本物の神に漏れたら、おそらく死神職の返上では済まない。
それでも、一ノ瀬千夏を生かし続けたいのか。
自分の意思が分からない。
ただ、その僅かな希望に身を任せてしまいたい。




