―第50章― いざという時に勇気が出せない自分の為の飛鷹の「自責」
俺が、千夏に怒鳴りかかれば良かった。
「千夏にはちゃんと価値がある」って叫べればよかった。
本質とか関係なく一緒に居たいから救いたい。
それだけだろって、叫べればよかった。
だけど、俺にはその声が出なかった。
どうでもいいところばかりで大声を出して怒り、本当に肝心な時に俺は何もできない。
言い訳に過ぎないが、死神が言った罪悪感という言葉に恐怖を感じてしまった。
俺が無理をしてでもサッカーを続けていた時の感情と同じだと思ったから、あの過去に戻りたくなくて俺は目を背けて、口を噤んだ。
いつも感情のままに動いてばかりだから、感情の意味とか自分の行動の理由を頭で考える行為は俺に向いていないようで疲労が強い。
「サッカー好きなんでしょ。サッカーの魅力、私に教えてよ」
前の席から振り返って、孤独だった俺に千夏が話しかけてくれた時、俺の世界は揺れた。
基本的な用語に?マークを浮かべて、本当はサッカーの事を全然分かってないし、興味ないんだろうなと思う瞬間は時々あった。
それでも、時折見せる、弾けるような笑顔が追い詰められていた俺を解放していった。
「天才だ」「エースになれる」
ボールを蹴るたびにそんな誉め言葉を浴びせられるうちに、俺の中でサッカーが承認欲求の為のものへといつの間にか変わっていたのだと思う。
だけど、千夏のその笑顔に誘われて、俺はサッカーが好きな本当の理由に気付かされた。
誰にも、俺のサッカーが認められなくたっていい。
ただ、自分が楽しいからその為だけに俺はサッカーをやる。
そう決めて、だけどチームに戻ることは怖がって、今でも一人で、たまに隼人と一緒にサッカーを続けている。
もう、吹っ切れていると思っていた。
だけど、俺の本質は同じだった。
その事に気付いてしまうと、俺は落胆のような失望に襲われ、灰色の雲に覆われていった。




