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―第49章― 自分の言葉が千夏を苦しめた為の理恵の「乖離」

 病院の帰り際、青かったはずの空は暗澹とした気分を表すが如く、黒色の雲で埋め尽くされていた。

 飛鷹の拳はわずかに震え、隼人は必死に前だけを向いて、鈴は泣きそうな顔で俯いていた。

 いつもは空気と無関係な空ですら口を噤んでいる。

 誰も一言も喋らず、漆黒に染まった夜空だけを眺めている。

 足音だけがこの静かな虚空間に響く。

 私のせい。

 千夏に期待を押し込んだのも、羨望の眼差しを勝手に向けたのも、そのせいで千夏は追い詰められた。

 私のせい。

 私のせいだから、私が何か言わないと。

 けど、喉が詰まって声が出ない。

 紡ぎ出そうとした言葉も、どれも陳腐で空間に吐き出した瞬間に溶け切ってしまいそうな呟きだけ。

 価値がない。

 千夏が言い放った言葉が頭の中で連鎖する。

 まるで、私みたいだ。

 その瞬間、煮え切らなかった心の絡まりが身体中を駆け巡る血液にスッと溶けた。

 千夏も、孤独なんだと。

 千夏も、自分自身に価値がないという思考に陥るのだと。

 千夏も、人に言えずに無様に苦痛を溜め込むのだと。

 千夏も、私と同じ弱くて脆い人間なんだと。

 千夏は私とずっと同じだった。

 ずっと、強がっていただけで、私が勝手に太陽と思い込んだだけで、誰にも言えない弱さを抱えていた。


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