―第48章― 死神職と6人の板挟みの為の死神の「躊躇」
そっちに問題があるようだから延命は止めるよ。
なんて、延命可能な期限について伏せたまま断ることもできるんだよな。
千夏の延命が認められている6カ月まで、もう日がない。
これをきっかけに断るのが、正解なんだろうな。
5人の後ろにそっとついて行きながら、俺はそんなことばかり考える。
正しい死神はまず千夏に延命をしないだろうし、万が一、する選択したところで、これを丁度いいタイミングだとすぐに止める。
「問題があるようだし、延命はもう止めるよ」
なんて、無慈悲に冷酷に言ってしまえばこの苦悩は過ぎ去るのだろう。
それでも、俺はその行為を拒んでしまう。
僅かな可能性でも一ノ瀬千夏を生かしていたい。
この6人に俺の成せなかったことを懸けたいなんて願ってしまっている。
病室に入ると、5人は千夏に寄り添うように軽くしゃがみ込んだ。
千夏の目の下には、泣きはらしたような赤く微かな涙の筋が残っていた。
一番、怒鳴りかかりそうな飛鷹が珍しく様子窺いに徹している。
それに気まずくなったのか、鈴が「何があったの?言いたくなかったら言わなくてもいいけど」と弱腰にも言葉を切る。
千夏は小さく蹲って、それから涙を零した。
病院の掛布団と入院着の袖先をゆっくりと湿らせていく。
「私、みんなに迷惑ばかりかけちゃってるよね。ごめんね」
第一声がそれ。
やはり、よくある罪悪感という奴。
まあ、唐突に何人もの親しい人間が自分の命の為に戦うなんて言ったら、相当無神経な人間でない限り、罪悪感は抱えるわな。
鈴から差し出されたハンカチを使って、涙を拭うと一呼吸吸ってから話し出した。
「私は5人が思うような良い人間じゃない。5人の前では強がるだけで、簡単に死んじゃいたいとか弱音を吐くし、苦しい状況から救ってくれたって言ったって、私は私なんかでも友達になってくれるだろうなんて浅ましい理由で話しかけたんだよ」
化けの皮が剥がれていくように、汚らしい言葉が次々と口から吐き出される。
まあ、所詮人間はこんなもん。
俺は慣れているからどうとも思わないが、こいつらはそれについてどう感じるんだろうな。
そんな理由で私達と接してたなんて酷いって泣き喚くのが、常道なのだろうか。
5人は口を噤んだまま、真っ直ぐに千夏の瞳の先を見ていた。
「私に5人の大切な時間を奪うほどの価値はない。でも、そう言っても多分5人は罪悪感で続ける。死ねばさすがに諦めると思ったけど、そっか。死神に延命されている時点で死ねないんだったね」
狂ったように乾いた笑いを浮かべる。
コイツは5人に嫌われるように、離れたいと思うようにわざとやっている。
それが分かっても、5人がコイツに幻滅しようとも俺は5人に任せるし何か口を出すつもりはない。
どうしようが、この6人の結論。
死神の俺は関与しない。
そのまま空白の時間が過ぎていき、5人は病室を後にした。
これからどんな結論を出すのか、それはまだ俺には見えていない。




