―第46章― みんなに負担をかけない為の千夏の「胸塞」
真っ暗な病室の中、一人取り残されて眠る。
誰もいない静かで無の空間。
考えるべきじゃないって思うのに、眠れない日にはつい考えてしまう。
自分に5人が助けてくれるほどの価値があるのかとか、私は生きていてもいいのだろうかとか。
考えたところで、胸がきゅっと苦しくなるだけでいいことなんか一つもないのに、ふと無意識に。
健康に暮らす中3の受験期の5人の大切な時間を奪うのは、罪深いことなんじゃないか、と。
私は5人に何も授けられず、病気だからと助けてもらうばっかりで迷惑をかけているんじゃないか。
そう、自問自答して苦しくなる。
私は小学生からずっと手術をしてきて、死神の力でどうにか生き延びて。
でも、それももう十分じゃないか。
人に負担をかけられるほど、自分に価値があるとは思えない。
死は怖いけど、このまま負担ばかりかけていって、1年後、5年後、10年後、私は一体何を得るんだろう。
踏ん切りがつかなくなって、5人が自分の生活を更に犠牲にしてしまったら、私はもっと苦しくなる。
延命をしたところで、希望的な未来はずっと来ないかもしれない。
それなら、その未来を知らないうちに自分の命を諦めた方が苦しくないのではないか。
どうせ、人間はいつか死ぬ。
私は長く生きたところでずっと病気と闘うだけで5人に何も残せない。
価値のない時間を吸い取ってしまう。
それならば、もう死んでしまえば。
私は、静脈ラインを残りカスの力で力一杯に引っ張った。
床面に血の波紋が広がっていく。
点滴から取り入れている薬を体内に入れなければ、私は数分後に息絶える。
「ふーはーふーはー」
落ち着こうと深く深呼吸をしても、ゼェゼェと咳き込んでしまう。
吐く息が熱く、視界が歪んでいく。
意識が朦朧として、病室の真っ白い殺風景の部屋が遠のく。
真っ黒な空間が私を覆い込んでいく。




