―第32章― 部活動の引退試合の為の理恵の「徒労」
まるで誰かの溜め息をそのまま広げたようなどんよりとした灰色の空。
重く垂れこめた雲は澄み渡る青空を完全に覆い隠していた。
6時間の長い授業を終えて、私は重い足取りで部室へ向かう。
時間を無駄に消費するやるせない気持ちがまた再来するのかと思うと億劫になる。
私は鈴と同じく、女子卓球部に所属している。
3年生が私を含めて5人、2年生が7人、そして数ヶ月前に入部した1年生が3人という人数構成。
部長は佐々木美奈、副部長はその佐々木さんと仲の良い伊藤さん。
顧問の先生はいるものの、練習にはほとんど顔を出さず、大会やら練習試合の時だけ姿を見せる程度。
部長の佐々木さんはいつもテンションが高いだけで、真剣に練習に取り組まず、技術も特段に優れている訳ではない。
彼女が部長になったのも消去法と圧に負けたようなもので、権威も何もない。
夏の地区大会が3週間後に迫っているというのに、部員達は誰1人として危機感を持たず、ただお喋りに興じていた。
練習時間は無駄に過ぎていき、勝利への意志は全くもって見当たらない。
私とダブルスを組むはずの鈴も、佐々木さんの隣で愛想笑いを浮かべているだけ。
このままでいいのだろうか。
そんな疑念が胸に湧きあがるも、だからと言って自分が手を挙げる勇気は持ち合わせていない。
あの6人の中で私が発言できたのは批判されないという確信があったから。
だが、今回の場合は佐々木さんから確実に批判されるだろうと予測がついてしまう。
それに、どうせ今から本気で練習を始めたところで、今まで真剣に取り組んでこなかったし、元々強い訳でも無いのに、勝てる見込みはない。
頑張ったところで、結果は変わらない。
誰一人として勝利を望んでいないのなら、これで楽しいのなら、このままでもいいんじゃないか。
ぶつかっていくことの怖い私は言い訳ばかり考えて1人、壁際で部活の時間を過ごす。
周囲の笑い声や談笑が遠くに響く中、私はいつも孤独と無力感に苛まれる。
引退試合の日は刻々と差し迫っていく。




