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―第31章― 死者の都の人々を守る為の死神の「対抗」 

 翌日の午後6時過ぎ、5人は死者の都に戻ってきた。

 大急ぎで、隼人と行方不明者の男性を医院に運ぶと、隼人も男性も睡眠期間により後遺症なく完治するという診断が得られた。

 男性はその医院に入院後、10日間の睡眠期間を経て、無事生き返り、また、隼人も下界にて1日の睡眠期間を経て、何の後遺症もなく、無事生還した。

 今月もミッション成功という事で、一ノ瀬千夏に1ヶ月の寿命を与えて、俺は死者の都に帰ってきていた。


 道端を歩くと、色画用紙を持って走り回る子供達に会った。

 その周りで大人達がマジックペンを持って、作業している。

 来月の夏祭りの準備だろう。

 いつになく、楽しげで活気なムードに満ち溢れたこの空気感は夏の訪れを思わせる。

 気温の変化の少ないこの世では数少ない季節を感じさせる風物詩であった。


 死神になってから楽しかったことに脳内を巡らせていると、すぐ近くから野太い声が聞こえた。

 反射的に肩を強張らせて身構える。

 後ろを振り向くと、隣の国・ネクロポリスの死神がこちらへ歩みを進めていた。

 ロべス・ウィリアム。

 現世でもアメリカの市議会議員をしていて、根っからの政治家。

 身なりも政治家らしく整えられていて、黒い彫刻が入ったボタンの高そうなジャケットで身を包んでいた。

 髪も整髪料でしっかりと纏められている。

 彼が口を開くと、空気が変わり、まるで火花が散るように言葉が激しく飛び交い、息を呑む。

「それ、論理的に破綻してますよね」

 それが彼の口癖で、異を唱える者はその言論力で力ずくに封じ込められる。

 いつも「正しい」を追い求め、輪廻転生制度をくじ引き制にするという案を初めて取り入れたのも彼だった。

 減少していた輪廻転生者数に歯止めをかけ、安定して循環するという検証結果を広め、今ではこの死者の都以外全ての国がくじ引き制に改正されている。

 何度かこちらにも改正を要求してきたが、それでも俺が拒んできたのは数字だけを追い求めて感情に向き合わないのは如何なものかと思ったからだ。

 でも、コイツにとって感情は理論に負ける物なのだろう。


 目の前のコイツは発言した。

「輪廻転生の件、死者の都もくじ引き制に改正するように」

 低く威圧的な声。

 だが、俺も負けじと威嚇する。

「それはお受け出来かねます。以前にも言った通り、この国では希望者制を採らせて頂きます」

 理由を述べたところで、理論で潰されるだけ。

 ならば、理由は述べずに変えない事の一点張り。

「変えなければ、強硬手段に出る可能性もある」

 埒が開かず、苛つき出したのか、脅し文句を使ってきた。

「構いません」

 だが、そんな物に屈する俺ではない。

 本当に攻められたらひとたまりもないが、負けじと睨み返す。


 諦めたような顔に変わり、また眼光激しく、ふっと一息吐いた。

「来月7月25日の夏祭りの来場者数。勝ったら、希望者制であることを認めてやろう。だが、負けたら強制的にくじ引き制に改正する」

 そう告げると、用を済ませたように付き添いを連れて足早に出て行った。



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